迷宮映画館

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愛の神、エロス

2005年07月04日 | あ行 外国映画
御年91歳で、まだまだ意気軒昂な巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニの呼びかけによって集まった3人の監督による、愛についての三章。それぞれのテーマによって、監督の個性が遺憾なく発揮されている・・・と思うのだが、私には、とにかく一番最初のウォン・カーウァイに尽きた。

「The Hand」と名づけられた「エロスの純愛」。ウォンお得意の60年代の香港を舞台に、高級娼婦と仕立て屋の純愛が描かれる。娼婦ホアの気高さに震える若き仕立て屋チャン。愛の営みの声を聞いて素直に反応する若い彼に、そっと手を置く女。その時点から仕立て屋チャンはホアの信奉者となり、守護天使となり、彼女を思いつづける。思い続ける心は美しい服を仕立てて行く。

高級娼婦から転落する女と、彼女のおかげで着実な人生を歩んでいく男。許されない愛ではなかった。しかし、時がそうさせなかった・・・。抑えに抑えた男の愛は身を焦がすほどのもの。その愛に身を浸したいが、そこまで甘えてはいけない女の後悔。気持ちが痛すぎて、チャンの表情を思い出すたび、いまだに胸がちくりとする。素晴らしかった。

この一章があまりに素晴らしすぎて、他の二章が・・・はっきり言うと色あせて見える。ソダーバーグの「エロスの悪戯」は、半分寝てしまったので、大きな事はいえないが、ひねりすぎの感じがしないでもない。

巨匠アントニオーニの「エロスの誘惑」に関しては、はっきり言ってよくわからなかった。愛し合いながらも齟齬が生じてしまう夫婦。バカンスに来た夫婦は、そこでもかみ合わない。男は自由奔放な一人の女と逢瀬を楽しむが、この女の子が天真爛漫と言うか、健康的というか、元気いっぱいと言うか・・・。誘惑されるのもいいが、二人の営みをみてると、あまりに健康的で、いやらしさが全然ない。そこが狙いなのか、どうかはわからない。

この主人公の男性が、この間見た「荒野の七人」のブッフホルツの息子だそうな。へーーー。そんなところに感心してるんじゃない。

自由な表現で、惜しげもなく堂々と見せる裸体。ここまで見せられると、エロスの映画というよりは、オープンな映画に感じてしまう。ウォンの映画には、どこにも裸体などはない。コン・リーはあくまでチャイナ・ドレスに身を包み、襟を立てる。でも、どの映画の誰よりも官能的だった。この表現に胸が打ち震えた。そして若き仕立て屋のチャン・チェン。不肖、私、心を奪われてしまいました。切なさがしみた。

このチャン・チェン、どこかで見たと思ったが、よく思い出せない。なんと、「グリーン・デスティニー」のローだったのね。すでに、奪われたました。もう少々遡ると「クーリンチェ少年殺人事件」のあの子だったとは・・。うん、やられました。トニー・レオンがもう少し若かったら、文句なく彼の役だが、チャン・チェン、あなたです。

『愛の神、エロス』

原題「Eros」 
監督 ウォン・カーウァイ スティーブン・ソダーバーグ ミケランジェロ・アントニオーニ 
出演 コン・リー チャン・チェン ロバート・ダウニーJr.  クリストファー・ブッフホルツ 2004年 仏=伊=米=中=ルクセンブルグ作品


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