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ぼくを葬る

2006年07月04日 | は行 外国映画
フランソワ・オゾンの『死についての3部作』の第2章。『まぼろし』で、愛する人の死を描き、今回は自身の死がテーマ。

31歳、これから、本当に人生これからというとき。死は必ず誰にでも訪れるものだが、最も死とかけ離れていると思い込んでいるときに、突然やってきた死の宣告。逃れられない。遅かれ早かれ、誰にでも平等に訪れるはずだった死が、突然目の前に突きつけられる。

どうやって自分の運命を受け入れればいいのか。人は一人で死ぬのだが、一人で生きてきたわけではない。どうやって自分の命の限りを伝えようか・・・。両親に、しっくり行っていない姉に、同性愛者の相棒に、仕事仲間に・・・。自暴自棄になる自分をどうにもできない。でも、その理由を言うこともできない。己に突きつけられた運命を容易に受け止める事が出来ない痛さがズシンと伝わってくる。

田舎に住む祖母に会いに行く。なぜか祖母には何でも言える。心の奥底にあるものまでも自然に祖母に吐露している自分は、ものすごく素直だ。もうすぐ人生の終わりが見えている同士、と言う事だけではすまない魂のふれあいが感じられる。

そこからの彼は表情から違ってくる。つき物が落ちたような、まるで覚者のような澄み切った表情になる。UPが多いオゾンのショットにピッタリのメルヴィル。彼の内面までもえぐろうとするカメラに、主人公は堂々と渡り合う。そこに気迫を感じた。

いつも感じるオゾンの映画の無機質な部分。どう表したらいいのか難しいが、怜悧な冷たい空気が、どこか見るものを突き放した雰囲気があって、そこが私は相容れなかったのだが、この映画にはその無機質なにおいがしなかった。死という哀しいテーマをあつかいながら、心地よいぬくもりが感じられた。禍々しい俗世から解き放たれたような瞬間の男の精神が私の中に沁みわたった。

オゾンの映画の中で一番好きな映画に躍り出てしまった。

『ぼくを葬る -Le Temps Qui Reste-』

監督 フランソワ・オゾン
出演 メルヴィル・プポー ジャンヌ・モロー ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

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6 コメント

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オゾンはみんな好きなのですが、 (かえる)
2006-07-10 21:10:14
こんばんは。

私も本作がオゾン作品のmyベストになりました。

せつなく沁みました。
あの短さ (sakurai)
2006-07-11 08:19:22
もよかったかも。

見事にすっぱり切り取った潔さもよかったでした。

オゾンの映画に出る、ということはフランスの俳優さんたちにとっても、大いなる挑戦みたいになるように思えてきました。
作品たちはどこへ・・・ (カオリ)
2006-11-05 00:09:29
コメント&TBどうもでした!
オゾン監督は、ゲイであると、カミングアウトしてるんですね~
しかも映画の数々、扱うテーマ、なかなかすごいですね。・・・まだ、若いんじゃなかったですか?

もっと作品見たいんですがどーも行きつけのレンタル屋にはなさそうです。私の地元天では、まともなレンタル屋はそこしかないんですよ。○文字屋にあった作品たちはどこにいってしまったんでしょうかねえ・・・つくづく惜しい。後は自分の職場の近くの創○館・・・に賭けてみようかしら。

デスノート、落ち着いた環境でとのことなら、当分の間はやめといた方が・・・ってとこです。内容は満足でしたよ~
本当に・・・ (sakurai)
2006-11-05 10:07:22
35くらいではなかったかと。
あっちでは、オゾンの映画に出るのは、一つのステイタスになっているような感じだと思います。
ラースの映画もそうですが。凄い人が居るもんです。
キム・ギドクも凄い人伝説に加えたいのですが、引退するとか言ってるし、本当かな・・。

創○館ならばっちしでしょう、・・・だと思いますが。うーーん、ビデオ屋もメジャーのばかりで、そう言う流れになっていくのでしょうかね。

ゆっくり見に行くことにしますデス。
オゾン監督 (miyu)
2008-06-04 23:00:00
はあたしも好きな監督の1人です。
全て観ているワケじゃないけど、どれも印象的。
その中でも確かにこれはすっと心に沁み、
いつまでもそれが広がり続けるかもしれませんね。
>miyuさま (sakurai)
2008-06-05 12:40:35
ほとんど見ちゃってますので、この人の色というか、作り方というか、空気がとっても伝わるのですが、なんかオゾン的?
どっか冷たい、無機質な感じがするんですよ。
で、その辺がいまいち『大好き!』と言えない感じだったのですが、この映画は今までの空気を覆して、空気が好きだった。
でも、最終章は子供の死・・・ということで、いまから辛いです。

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