さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

英国版万里の長城

2011年02月04日 | 英国


 中国にある万里の長城、これは6,352kmに及ぶそうです。日本でいえば、稚内から鹿児島までが2000kmたらずなので、その3倍以上といえば、途方もないスケールの大きさを実感できるでしょうか。これは中国が明の時代(14~17世紀)に、北方のモンゴル民族を迎え撃つために作られたそうです。しかしいくら城壁を建てたって、これだけの長さなんですから、実際には侵入を防ぐことは困難だったようです。いったい何人を見張りに並べて軍隊を常駐させたんだw(゜゜)wムリダロガヨー

  そのミニチュア版のような城壁が、英国にも残っています。カーライルからニューカッスルまで約118km、イングランドとスコットランドの境界あたりにあります。「ハドリアヌスの長城」と呼ばれ、1世紀半ば頃、ローマ帝国がこの地を治めていたときに北方のケルト人を防ぐために作られたそうです。



 食うや食わずの人々が沢山いるなかで、人間っておっそろしく無駄(?)なことをしますねえ。「世界の三大バカ」というのがあります。「万里の長城、戦艦大和、ピラミッド」だそうです。バカ度を比べると評価は人それぞれでしょうが、気が遠くなるほどの労力を費やして、いったい何だったんだろう、という意味では共通するようですね。

 しかし一概にムダ!徒労!おバカさん!と片付けるわけにはいかないようで、こういった長い年月を費やす巨大事業は、「公共事業」という役割を果たしていたとか。公共事業って、1mで一億円だのなんだのという整備新幹線、ほとんど使っていないのにメインテナンスだけですごい金のかかる橋や高速道路、人口が減って水あまりだというのに作っちまうダムだとか、いくらでも思いつきますね。天文学的数字になりつつある国の借金も思い出されますけど。

 でもそれらの建設に関わる数多くの人々の雇用を増やし、そこからまた間接的な消費を生み出す効果がある。ダムをひとつ作れば、何万人という人々が雇われ、工事現場の近所の食堂は繁盛し、夜はスナックも繁盛し、そこではビールも消費され、ビールを配達する運送会社も儲かり、カラオケの著作権使用料が払われ、客の横に座ってデュエットをする派手な女性も羽振りがよくなり、高級化粧品も使うだろうし、スナック嬢らいおん丸3人組みでハワイに3泊4日の慰安旅行に行くかもしれません。またゼネコンが公共事業の許可を得るために政治家に「政治献金」をし、政治家はそのお金を使って選挙対策として、支援者に飲み食いをさせるというのも大きな「経済効果」です。つまり公共事業は、池にドボンと石をほうり込んだとき、水面に波が広がっていくように景気浮揚効果があるのです。

 というわけで、ピラミッドなどは仕事がなくなっちまう農閑期などに工事が進められたらしい。国がとりたてた税金を使って仕事を配るという、一種の社会保険事業というか、強制的助け合い制度になっていたわけだ。仕事がない人々も、ピラミッドを造っている限りは食いっぱぐれがないというわけです。どうせやるなら王様の墓やら途方もない城壁を延々と作るより、もっとましな(?)公益性の強い事業を選べばよかったような気もしますが、現代のように後世の人々にツケをまわす借金にしてないだけ罪はないかもしれません^^

 軍事産業というのはもっとげんなりさせられます。何せ敵を作れば、打ち出の小槌のように軍需が沸いてくる。ドンパチやれば、いくらでも消費は増えるときたもんだ。英国に住んでいた頃、イラク戦争が始まりました。毎日ニュースのトップはイラクでのドンパチ。でも英国は戦争当事者だというのに、街はまるで他人ごとのよう。英米の戦闘機があちらで爆弾を落としても、イラク人が英国に上陸して攻撃してくる可能性は皆無でしたし。私が住んでいた北東部の田舎では、トップの国際ニュースのあとにローカルニュースが流れていました。とても印象に残っていますが、ニュース・キャスターの顔が突然にこやかになり、「こちらの街にウン千億円の戦艦の受注がありました。これで数年間数千人の雇用が確保されました!」と嬉しそうに話したのです。そりゃあ戦争景気で地元民への現金収入が確保されたのでしょうが、イラク人が吹っ飛ばされている映像の続きで軍需雇用のニュースが流れ、そこで笑顔が出るっていうのも・・・。

 この戦争準備っていうのが支配者にとっては便利な道具なんです。なにせ危機管理、貢献、責任、正義、聖戦、防衛、解放、平和のため(!)といった種類の言葉を使えば、「まったなしの優先事項」となり、なんでもかんでも判断停止の正当化が通用してしまう。「バルタン星人が攻めてくる」ということになれば、国民は途方もない税金だって払うだろうし、戦いにそなえて駆り出されても文句は出ないわけだ。そんなときに年金記録の記載ミスや消費税の税率アップ、靖国に参拝するかどうかなどはすべて「ささいなこと」になります。だって政治家様たちには、もっとはるかに大事なことをお任せしなければならないんですから。「バルタン星人が来るわけない」ですか?それでは現在日本にある戦車は、どこの誰が攻めてくるという想定なんでしょう・・・?

 また特に男なんですけど、戦いの準備というものに対してゾクゾクする快感が伴うものでもあります。城壁を作って武器を並べる戦争ゴッコ。いつの時代にもこれが大好きでしょうがない人々が沢山いるものです。その欲望を満足させ、仕事を生み出し、政権の維持の道具ともなる。ハドリアヌスの時代から長い年月を経て、城壁は遺跡となりましたが、どうやら人間はあまり変わっていないようですね。


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