角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

和の履物も左右対称。

2013年09月05日 | 実演日記
昨日は久しぶりに30℃を超え、今日はまた25℃ほどに下がりました。昨晩は一時強い雨と風に心配しましたが、まず大きな崩れもなく推移しています。この時期角館人が天気を気にするのは、言わずと知れたお祭りのためなんですね。雨が降ろうが槍が降ろうが、角館のお祭りはなにほど変わることなく遂行されます。と言いながらも、土砂降りを避けたいのもまた人情ですからね。

栃木県からお越しのおばさま。横手市増田町にご実家があるのか、増田町のおばさまと二人、お土産探しに角館をお訪ねでした。そのお土産のお相手というのが、大きな男性外国人お二人。樺細工のお盆を候補のひとつにご来店でしたが、角館草履のジャンボサイズを見つけたことで候補がひとつ増えたご様子。

ご自身の試し履きでとても感心してくださったのが、やはり「土踏まず付き」でした。しかもふくらみが左右対称についていることには、『私も布草履に挑戦したことがあるけど、こういう草履は見たことがないわねぇ』。熟慮の末、28cm草履を二つお買い上げくださいました。在庫があってホッとしましたよ。

角館草履ご愛用のみなさんがご存知なのは、右足用と左足用があること。これは試し履きをするまでもなく、鼻緒と呼ぶ「先ツボ」の位置を見るだけで一目瞭然です。こうした工夫の草履は、まず見かけることがないというのが通説でした。それがなんと…



西宮家米蔵に商品を納めているある問屋さんから、年に三回くらいセッタを購入しています。先月のこと、『新しい型のセッタが入りましたよ』と言って見せられたのが、この左右対称セッタなんですね。お祭りに履こうと今朝おろしました。なかなか上手い履き心地ですよ。

いよいよお祭りは、明後日7日午後四時開幕。7日に出ていた傘マークも消え、予報通りなら今年のお祭りに雨は見なくてよさそうです。セッタは水に弱く、雨にしばらく履いたら寿命が短くなります。おろしたての左右対称セッタは、今年のお祭りで存分に履くことが出来そうです。
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お祭りが近いです。

2013年09月03日 | 地域の話
暦が九月に入ると、角館の話題はほぼお祭り一色に染まります。あらためて日にちをご紹介しますと、九月七日・八日・九日の三日間。鎮守角館神明社と成就院薬師堂のお祭りですから、曜日と無関係に日にちが固定されています。
角館のお祭りに欠かすことのできない18台のヤマは、もうそろそろ仕上げに入る時期でしょうか。すでに人形が上げられたヤマも複数と聞きました。

大阪府八尾市からお越しのおばさまひとり旅。簡単なご挨拶のあと、しばし展示パネルの草履をご覧でした。すると、『22cmをひとつ注文して行きたいのですが…』。初めてのお客様で、なにほどの商品説明もなくお買い上げを決められる方が、ときにおられます。見ただけで何かしらの「ご縁」を感じてくださるのでしょう。

おばさまに、『もう少しでお祭りなんですよ』とお教えすると、昨晩投宿した駅前の旅館で、お祭りの打ち合わせと称する集まりがあったそうです。おばさまは、『でも聞こえてくるのは笑い声ばかりで、打ち合わせになっているのかしらねぇ』。
思わず吹き出しそうになりましたよ。「打ち合わせ」と言えばその通りでしょうが、中身はお祭りを待ちきれない仲間が集まる宴会ですからね。

さて、お祭り期間中の営業時間をお知らせします。草履コーナーは、連日夕方4時をめどに閉店の予定です。開店時刻の午前10時は変わりません。
米蔵の閉店時刻は、7日午後9時、8日・9日は午後10時です。8日と9日は午後6時をめどに、生ビールコーナーが開設されます。場所は米蔵の駐車スペースです。私はそこで飲んでいますから、ぜひお立ち寄りください。

生ビールコーナーでは毎年、プロの手作りおつまみを販売しています。今年の新作が「お祭りエビチリ春巻き揚げ」、中身のエビチリがこちらです。



値段は、まぁお店に来て驚いてください。完売は必至でしょう。


※わが家のお向かいさんで今日、81歳になるおばあさんが亡くなりました。9月6日は葬儀参列のため、草履コーナーを臨時休業とさせていただきます。
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ちいさん記念日。

2013年09月01日 | 実演日記





今日の草履は、彩シリーズ足半タイプ〔四阡円〕
足半タイプを発売して三年になりますが、一定の需要があるのは間違いなさそうです。毎年の売り上げ数で、21cm草履とほぼ同じなんですね。主力にはならなくとも、バリエーションの中に是非欲しいタイプとでも言いますか。角館草履の中で“名脇役”になっています。

今日9月1日は「ちいさん記念日」。ちい散歩角館ロケが行われたのは、三年前2010年9月1日のことでした。今日の天気とはずいぶん違って、30℃を超える厳しい残暑だったのを憶えています。そしてその日から一年九ヶ月後の2012年6月29日、ちいさんは還らぬ人となりました。

草履の展示パネルに、ロケの写真を一枚飾ってあります。その写真を見つけたお客様とよくちいさんの話になるのですが、そんなときも地井武男さんという人の人気が分かりますね。中にはほんとに大ファンだったという人もいて、草履よりちいさんの話で盛り上がることもしばしばですよ。

七月のことでした。ご夫婦と思うのですが、20代半ばと思しき女性のほうが、かつてちいさんとご近所さんだったといいます。『よく玄関先で会ってたんですけど、ほんとに気さくなフツーの人なんですよ。いつだったかロケ先からいただいたというお土産を、量がたくさんだからっておすそ分けしてもらったことがありました~』。

思い出話をしている女性のお顔を見ていると、その場面が目に浮かぶようでした。私が角館ロケの様子を話すと、やはり同じように目に浮かぶのでしょう。女性は何度も「うん、うん」とうなずいていましたね。そして角館草履のご愛用者となってくださいました。

お盆の少し前に出会ったのは、川崎市からお越しの女性ふたり旅。24歳で共に看護師さんといいます。わが家の次女が看護師学校の学生のため、どうしても話を聞きたくなるんですね。『看護実習はずいぶん泣いてるみたい』と言うと、お二人もその手の思い出はずいぶんありそうで、『今も泣いてますけどね』と苦笑いしていました。

うちのおひとりが、やはりちいさんのファンということです。『亡くなったと知ったときは泣きましたねぇ』という女性は、話をしていてもどこか“古風さ”のある人でした。
ちいさんの命日に発売された「ちい散歩写真集」は自宅へ置いてあったため、残念ながら彼女たちにお見せすることはできませんでした。すると女性は、『戻ったら本屋さんへ行ってみますぅ』。

それから数日経って、手書きの可愛らしい手紙が一通届きました。差出人のお名前に覚えはありません。でもその送り主が誰なのかは一瞬で分かりました。そこに書かれてあった文字は「想 創 奏」、ちい散歩メモリアルフォトブックのタイトルなんですね。数日前に出会った“古風な女性”、その人でありました。

手紙には無事に写真集を買い求めたことと、角館を訪ねた旅の思い出が綴られています。女性の初角館の思い出に、草履職人が少しは役立ったことを文面で知ると、ことのほか嬉しくなりました。
そして彼女も角館草履のご愛用者となっています。

地井武男さんという人は、常に主役を張るスターではなかったと思います。それでもこれだけの人気を得ていたということは、他の人にはない「何か」を持っていたからと思うんですね。
角館草履も角館の草履職人も、目指すところは“名脇役”じゃないかと感じています。
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