角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

あの世まで歩ける草履。

2011年11月22日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔4,000円〕
【2012年1月1日より4,400円】
昨日の「今日の草履」とちょうど逆の色使いですね。布の残り量によってこの使い方をするのですが、ずいぶん雰囲気が変わって面白いと思います。
とてもお洒落だった紺の和柄は、これにて終了です。

秋田市からお越しのご年配グループ。男性お二方に女性お三方は、みなさま「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれる年代です。西宮家にはレストランのコーヒーがお目当てのご様子で、ほぼ真っ直ぐに向かわれました。
コーヒーを飲み終えお戻りの際、ひとりのおばあちゃんが『ちょっと草履見ていかない?』とお立ち寄りです。

試し履きのうえすぐにご購入を決められたあと、ひとりのおじいちゃんへ試し履きをお勧めでした。そのおじいちゃんは足が若干不自由で、西宮家の中も杖をご利用です。試し履きの際も周囲が介添えをしているのですが、私もちょっと心配でその様子を見ていました。

靴を脱ぎようやく草履に両足を入れ、おじいちゃんはおもむろに歩き出します。すると、『おっ、これはいいな。あの世まで歩けそうだっ』。そのときのおじいちゃんの嬉しそうな笑顔。おばあちゃんのおひとりは、『あららっ、杖ナシで歩ぐどごでねがっ!?』。

おばあちゃんたちのお勧めで、赤い緒の草履をお買い上げくださったおじいちゃん。「あの世へ歩く」とは縁起でもないですが、旅立つその日まで草履を履いてくださるとしたら、作り手としてこれに勝る喜びはありませんね。
コメント
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