Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

日本☓タイ 共同制作 『安らかな眠りを、あなたに YASUKUNI』 上演に寄せて

2020-03-18 | Weblog
死後に祀られるはずの靖国神社に戻らず、さまよう日本兵の霊たちを描いた、通称『YASUKUNI』と呼ばれるタイの劇作家の作品があると聞いたとき、思い出したのは、シンガポールのクォ・パオクン作『霊戯(The Spirits Play)』である。
『霊戯』は、シンガポールの日本兵墓地に漂い続ける霊たちのやりとりを描いたもので、パオクンさんと四半世紀前にシンガポールで出会い交流を続けていた私は、この戯曲の日本初演の演出を申しこんだ。パオクンさんは快諾、その後、私のスタジオである〈梅ヶ丘BOX〉を訪問してくださり、相談もした。しかし、諸般の事情で実現しなかった。その後、他の方々により『霊戯』の日本上演はされている。パオクンさんは、アジア環太平洋の演劇人による合作〈ランドマイン・プロジェクト〉で共同作業をしている途中で、亡くなられてしまった。私の中で未練の残る出来事であった。
『YASUKUNI』の存在を聞き、また、なかなかその日本での上演が実現しないことから、ああ、これは、私が上演に向けて動くべきなのではないかと思った。
『YASUKUNI』の作者ニコン・セタンとは、〈アジア共同プロジェクト〉でワークショップを重ね、タイ・フィリピンの演劇人との合作『リタイアメン』を共同演出した。
私は〈梅ヶ丘BOX〉、ニコンは〈8×8〉という、スタジオを運営し、そこでの上演を重ねてきた。二人とも、ブラックボックスでの演劇づくりのスタイルを持っている。この二人がタイと日本両国を跨いだ「究極のスタジオ演劇」を共同でつくることは、ある種の必然であるように思う。稽古場で、私たちは兄弟のようであり、ときに二人で一人のようでもある。
コロナ禍による国際的な危機状況の中で『安らかな眠りを、あなたに』という邦題を加え上演する、『YASUKUNI』。『霊戯』から四半世紀を経て、死者たちの
会話を中心に構成されるこの劇が、あらためてアジアの演劇人である私たちを、時を越えて繋いでいるように思えてならない。


以上、当日パンフレット掲載用の文章である。

撮影・姫田蘭。
写っているのは、VARATTHA TONGYOO(アン)。少女役の場面である。


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日本☓タイ 共同制作 『安らかな眠りを、あなたに YASUKUNI』

作|ニコン・セタン 翻訳|千徳美穂 演出|ニコン・セタン 坂手洋二
3月20日(金・祝)~29日(日) 劇場MOMO
日本語字幕付き。

http://rinkogun.com/Yasurakananemuriwo_Anatani.html

上演時の「感染症への対応についてのお知らせ」
https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/b77ce09b131eb8320d96958681d39496?fbclid=IwAR0biNA-HputIXAiXCdhcoz8AzWJn18y9-sKg2ytccr7V2KtFsVfq5mdGXI
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