Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「話せばわかる」

2015-10-05 | Weblog
別役実最新作文学座アトリエの会『あの子はだあれ、だれでしょね』は事前に完売と聞いたので観に行けず。
映画監督の深作健太氏がオペラ初演出という二期会のリヒャルト・シュトラウス作曲『ダナエの愛』金曜初日には行く。『白墨の輪』で自分も今年オペラ初演出を果たした身としては、規模の違いに驚きながら、3時間半を最後まで一気に観る。深作監督はもともとオペラの大ファン、作っている側の喜びが伝わってくる。松井るみ美術も前半の天井の穴が有効なのと、後半の廃墟の造形が、なるほどである。ヒロインの棲家はウィーンの地下墓所をモデルとしているという。私も行ったことがある。深作演出はどうやら「反米」意識が底辺にあり、「全能」の老いたる神の傲慢がアメリカに例えられており、また、前半の「金」をバブルの象徴と見立てたと終演後に聞かされ、なるほどと唸る。そこの批評精神は『仁義なき戦い』の父・深作欣二監督譲りなのである!
『ダナエの愛』をやった東京文化会館大ホールは1961年オープン。
土曜日五時過ぎに家を出て午前から岡山でテレビの仕事。午後二時、1964年オープンの岡山市民会館建て替えにまつわり文化政策についての講座。
いずれも敗戦後十年で堂々たる建物をつくったものなのだな、と思う。
地元に根付いたアートファームの企画。講師は伊藤裕夫さん。会場は元・内山下小学校。廃校利用を浸透させようというシリーズ「ハイコーチャレンジ」の一環。なぜか会場の教室の黒板の上の壁に岡山出身の政治家・犬養毅の書が飾られている。一瞬不思議だが、もともと内山下小学校に贈られたものだ(写真)。「五・一五事件」で暗殺されたさいに「話せばわかる」と言ったことで有名な人だが、少なくとも、「俺の話をわからない奴が悪い」という態度にしか思えない現在の総理大臣とはぜんぜん違うわけだ。
伊藤さんが私が演劇関係の講座で必ず言うのと同じ、あるフレーズを言っていて、驚くと共に、意を強くする。
岡山なので瀬戸内市の議員で元同級生のFさんにいろいろお世話になる。
牛窓で、美術と絡んだ古民家エリアでの町おこし事業を見学、いろいろな人に会う。ついでに想田和弘監督の新作ドキュメンタリー映画『牡蠣工場』の舞台と思われるところを覗いてみたりもする。取材がそのまま作品になる、ドキュメンタリーの不思議さ。早く観てみたい。地元の人たちはまだこの映画のことを知らないだろう。
これから自分もこの近くで重要な取材がある。
他にもいろいろである。
映画といえば、前週、隙を見てなんとか映画『ナイトクローラー』を観た。この映画の「ナイトクローラー」は、この名前は夜をうごめく者の直喩であろうが、実在するミミズの一種の名でもある。
私が文学座の創立六十周年記念公演に書き下ろした『みみず』は、実は英訳題名を『ナイトクローラー』と決めていた。十年近く前、ルイジアナ州立大のスウェインパレス劇場でのリーディングがアメリカでのお披露目だったから『ナイトクローラー』英語圏デビューという意味では、こちらが先だ。
もちろんミミズは出てこない映画『ナイトクローラー』は、アメリカの現在、報道する者たちの姿を描いてはいるが、フィクションの映画だ。一見の価値はあるといえるし面白いところもあるがすっきりしない後味が残る。台本を勉強している人は観るべきだ。そしてどこがそう感じさせるのかを考えてみるといい。
コメント
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