堺北民主商工会

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法律相談Q&A

2009年07月16日 13時04分27秒 | 法律相談
堺北民商が顧問になっていただいている堺総合法律事務所より、法律相談のQ&Aの原稿を頂戴しましたので紹介します。

Q 昨年以来、業績悪化を理由に会社は、役員の給与そっちのけで、従業員の給料を下げ、突然、何名かが呼び出されて、退職を強要されています。退職を断ったら「解雇するしかないが退職を選べば退職金に給与の6ヶ月分を上乗せする」としつこく言ってきます。
 毎日のように、呼出を受け、こんなことが続くなら、退職届けを書いてしまうほうが楽かなと考えてしまいます。解雇されれば元も子もなくなるので希望退職に応じたほうがいいでしょうか?

A、未曾有の経済危機、不況を口実にした解雇が増加しています。また退職勧奨行為が横行しています。しかし、本当に会社の経営が傾いている時ならば、会社は有無を言わさず解雇を実行します。ご質問のようなケースは、退職希望者を募るということは全くせず、いきなり対象者を会社が決定して退職を求めてきているケースですから、不況を口実にして会社側が、解雇を退職の形にしようとしているものと思われます。
 労働者も同意した退職と解雇は全く別物です。「解雇」とは使用者による一方的な労働契約の解消の意思表示です。民法上は、使用者からも労働者からもいずれも自由に解約の意思表示ができることになっていますが、判例法理で使用者側からの解雇は濫用してはならないと言う法理が確立し、いまでは労働契約法16条によって「社会的相当性を欠いた解雇は無効」という規定ができていますので、使用者がそう簡単に解雇することはできません。期限の定めを決めないで働いていた正社員はもちろん簡単に解雇できないし、「契約社員」や「パートタイマー」などの有期契約でも、何回も契約を更新して長年働いているような場合は、契約の更新をしないことが解雇と同じ様に制限されるという場合も多くあります。
 会社がしきりに自主退職を勧めるのは合意による退職となるとこうした解雇権濫用禁止の規定が適用されず、労働者が退職届などを書いてしまったら、本人も納得して退職する意思を表明したものとして退職が無効だと裁判で争うのが難しくなるからです。会社がしつこく退職を勧めるということは、解雇が簡単にできず裁判になると不利になると考えているからですから、解雇されることを心配する必要はないと思います。
 会社側の都合による整理解雇が有効となるためには、経営の必要性があること(何名かの解雇をしないと会社がやっていけないほどの経営状況にあるなど)、解雇を避けるための手段を講じたこと(役員給与のカットや賃金カット、希望退職者の募集など)解雇の人選に合理性があること(若手から行うとか、定年を越えた嘱託からするとか、成績不振からする等)、解雇までの手続きがきちんとなされたこと(経営資料を提示したり、説明会を開いたり、解雇指名者に言い分を聞く機会をもったか等)の4つの要件が必要とされています。そのような問題をクリアーしてはじめて解雇が有効となります。安心して退職を拒否されたらいいと思います。

弁護士村田浩治