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空想から科学へその⑧

2008年04月14日 16時49分40秒 | 世間の話
エンゲルスの「空想から科学へ」について書いています。未見の方はこの回だけ読んでも意味不明なので何週かに渡って書いてますのでそちらをお先にどうぞ。

さて本題です。
突然ですが、皆さんがもし家で自分でイスを作ったとしたらそのイスは誰の物でしょう?
もちろん皆さん自身の物になりますね?

では、家具工場に勤めている仕事の中でイスを作ったとしたらそのイスは誰の物でしょう?
当然、その家具工場のオーナー(資本家)の物になります。
同じイスを作るという労働を行っていながら、生産手段(工場)を持っているが故に後者の場合はイスは資本家の物となり商品として流通し利潤を生みます。

この取得を「資本主義的取得」と言います。
エンゲルスは「空想から科学へ」の中で資本主義的取得についてこう告発します。
「現代のすべての衝突がすでに萌芽として含まれているのである」
と。

多くの読み手はこう思う事でしょう。
「資本家は労働者に賃金を払ってるんだから、イスは資本家の物になっても当たり前なんじゃないの?」
確かに筋が通っているようですが、実はそうではありません。

実はこの賃金を払うという行為の中にこそ、資本主義のヒミツの暴露の深遠が潜んでいるのです。
闇は事の他暗い・・じっくりと踏み込んでみましょう。

賃金を払うという取引は
労働者が労働を売り、資本家がそれを買うという交換だと言い換える事が出来ます。

労働者の売る「労働」これに対して実際に払われる賃金の金額はどうやって決定されているのでしょうか?
労働者は労働し自分を消耗します。当然、疲労を回復し健康維持につとめ、エネルギーを取得し再生を行わなければ次なる自分の労働を売ることは不可能です。
すなわちこの再生に必要な金額が「労働力の価値」です。
そのうち人間は死ぬので、この「労働力の価値」には次の世代の労働者を育成する費用(子育ての費用)なども含まれます。
当然、特殊なスキルを要求される労働に関わる人間を育成するにはそれだけの価値の累積が要求されるので、そういった高いスキルを持つ人間の労働力の価値は高くなります。

ですが、資本家の利潤を生み出す為には、この「労働力の価値」プラスアルファを労働させなければ利潤は出てきません。
つまり
「労働力の価値」≠「(実際の)労働した分の価値」
だという事です。

マルクスの労働価値説による剰余価値の搾取の論理の中心がココにあります。

この結論に達するまでにマルクスは資本論の中で膨大な分量を費やし、単純な商品の交換から分析を行いこの結論を導き出しています。
決して、思いつきでは無く、勝手な断定では無い、科学的な結論なのです。

僕はいつも思うのですが、マルクスやエンゲルスを中傷する人々は一度でも資本論やその他の文献を検討された事があるのでしょうか?
もし、読みもせずに共産主義への中傷を行っているとすれば悪いですが大変な不見識だと思うのです。
・・・余談でした。

まとめると自分を維持する労働力の価値以上に労働者は働き剰余価値を生み出しながら、労働者に支払われるのは自分を維持する労働力の価値のみであるという、搾取のシステム。
式で書くと・・・
(実際働いた)労働の価値=労働力の価値+剰余価値(←ここを搾取されている)

この搾取行為は賃労働というオブラートに隠されて、生産手段を持つが故に強固な力を持つ資本家階級の利益の源泉となっています。
至極簡単に書けば今の資本主義社会はこういった社会なのです。

目を僕達の日本に向ければ、労働力の価値ギリギリの生活すらも出来ない人々や、何とか生活できても長大な時間の労働を強制されるケースもあり、様々な形での搾取の強化が成されている事が実感から分かってもらえると思います。

では苦しむ労働者階級はどうすれば良いのか?
いよいよ「空想から科学へ」も最後の段階に入ってきたのでした。

つづく