堺北民主商工会

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寅さん

2007年01月26日 10時49分39秒 | 世間の話
 1969年の第1作を皮切りに山田洋次(脚本・監督)の映画「男はつらいよ」シリーズは48作が作られた。主演は勿論、渥美 清(1996年死去)が演じる「生まれも育ちも葛飾柴又、帝釈天で産湯を使い、姓は「車」、名は「寅次郎」、人呼んで「フーテンの寅」と発します」のご存知…車 寅次郎である。
 ストーリーはいつも決まっている。
 行きずりの町(田舎)で寅さんがトラブルに巻き込まれ、そこに必ず、美しいマドンナが現れる。寅さんは一瞬にして一目惚れ。しかし、恋の結末はいつもマドンナに振られ、放浪(縁日での商い)の旅に出る。(作品の中には少し展開の違うものもあるが)。
 又、柴又の車屋と言うダンゴ屋で寅さんの勝手な思い込みから家族や隣の印刷会社の社長さん等とてんやわんやの大騒動を引き起こす。そして、寅さんは騒動の原因が自分だと悟り、決まり悪そうにダンゴ屋を飛び出して行く。失恋の時も大騒動の時もしんみりと妹・さくらに「すまなかったなぁ~」「心配かけたなぁ~」と一言、自分の本心を伝え、去って行く。…ワンパターンのシナリオなのに何故か、このシリーズには魅力がある。
 それは「男はつらいよ」シリーズ作品は寅さんの恋物語であるが、何か観客にアピールする「テーマ」が隠されているように思う。
 食卓を囲んでの家族団欒の語らい、山や清流、真っ白い雲と晴れ渡った空など豊かな自然の田舎風景、1年に1度その地に住む人々が楽しみにしている祭りの催し、吉岡秀隆演じる日々、成長していく甥・ミツオに寅さんが掛ける励ましの言葉と叱咤する場面、困っている人が居れば見て見ぬ振りが出来ない寅さんの性格…等など・
 今、失われようとしている「大事なもの」が必ず、この作品には描かれている。
 家庭での虐待と殺人、学校でのイジメや自殺、身勝手な個人主義と政治不振、国民を無視した横暴な企業モラル、財政破綻を招いている大型公共開発と環境破壊、福祉の切捨てと庶民増税、愛国心の強要と憲法9条の改憲…etc。
 日本社会での殺伐とした出来事が映像やニュースとして私達の目・耳に飛び込んでくる毎日。(しかし、実は「平和を守る催し」「弱者支援や地域復興のために損得なしに働くボランティア活動」「庶民が主人公の政治を目指す取組み」など素晴らしい出来事が全国で数多く、開催されているのに商業マスコミ(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など)はこれらを一切、報道しない)。
 これらの出来事と対比した時、今、大切にしなければならない「もの」、伝えていかなければならない「事」が作品「男はつらいよ」の中から鮮やかに浮かび上がってくる。
 「美しい国・日本」を目指す「お偉いさん方(政治家・役人)」はこの作品を観てどう感じるのだろうか!
 寅さんはきっと、口上を申し立てるでしょう。
 「今どき、お偉いさん方は何をお考えなんですかねぇ~。あっしにはサッパリ、わかんねぇなぁ~」と。