堺北民主商工会

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「人」として

2006年12月01日 10時47分00秒 | 世間の話
 石川県、能登に人口33,000人の輪島市がある。この街は御陣乗太鼓と輪島塗で有名な所。この地にスザン・ロスさん(44歳)というイギリス人が住んでいる。彼女は当地、イギリスで22年前に輪島塗に出合って、そのトリコになった。単身、日本にやって来て、輪島塗の師匠に弟子入りし、修行が始まった。来日した当初、彼女は輪島塗は「ペンキ塗り」と一緒みたいなものだから、3ヶ月もあれば一人前の職人になれると思っていたそうである。ところが修行を積み重ねるに連れ、輪島塗の底の深さを知った。そして、現在に至るまで22年間。この間、3歳年下の旦那さん(イギリス人)とも結婚し、2人の女の子も誕生した。今は彼女は輪島塗の作品個展を開催するまでになった。彼女の作品は輪島塗の伝統的作法を基礎にしながら、現代的感覚も取り入れた実に、素晴らしい出来栄えだ。その作品を見る全ての人が色使いとデザインに驚嘆する。さすがに値段もお高い(輪島塗なら当然かも。作品完成までに何と124もの工程が必要なのだから)。
 しかし、その彼女が言う。「まだまだ、私は修行の身です。これからも修行を重ね、全身全霊でより良い作品作りに打ち込みたい」と。
 「論語」に儒教の創始者である孔子の作品がある。
 「子曰わく、学びて時に之れを習う、亦た説ばしからずや。朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや。人知れずして怒らず、人から君子ならずや。」(孔子は言う。繰り返し学び、友と学問について話し合い、人から評価されずとも怒らないのが学ぶ者の姿だ。)
 孔子の一言一言を弟子達は自分達を一生、教え鍛えてくれる恩師として肝に銘じた筈だ。弟子の一つ一つの質問に簡潔明瞭な言葉で答え、孔子のその言葉が2千5百年も経った今も、ズシリと胸に響くのは不思議なことだ。
 人間は考える動物である。自分自身を常に、鍛えていく事が「人間」として成長する条件でもある。その際、人は決して忘れてはいけない事がある。それは常に、人は驕ることなく、「謙虚」であり続ける事が大切だと言うことだ。言い換えれば「謙虚さ」を失っている「人」は何時も、「その場しのぎ」であり、それ故、「人」としての進歩や成長は有り得ないという事だ。
 日本人以上に日本を愛している「スザン・ロスさん」のように!