とはずがたり

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トキソプラズマはヒトを操るか?

2020-03-13 08:53:50 | その他
Toxoplasma gondii(トキソプラズマ)はネコを終宿主とする細胞内寄生性原虫です。ヒトからヒトへ感染することはないとされていますが、妊婦が感染すると血行性に胎盤→胎児の脳などの実質臓器に感染し、数%から20%に先天性トキソプラズマ症を発症することは有名です。一方成人は感染しても無症状であるとされていますが、「トキソプラズマ感染はヒトの精神疾患を生じる」という説がまことしやかに語られています。これはネズミに感染した場合にトキソプラズマが脳において嚢胞を形成し、ドーパミンのレベルを上げることにより、ネコに対する恐れを無くしてしまう(したがってネコの餌食になる)という知見からくるものだとされています。ネコはトキソプラズマを使ってネズミを操る(あるいはトキソプラズマが終宿主であるネコに帰るためにネズミを操っている)訳です。そしてこのようなことがヒトにも起こるのではないか、例えばトキソプラズマ感染が人格を変え、統合失調症やその他の精神疾患を発症する可能性を高めるのではないか、という説があり、これをサポートする研究結果もいくつか報告されています。このトキソプラズマ精神疾患原因説を完全に否定することはなかなか困難(RCTをするわけにもいかない)ですが、これまでの研究では大幅に疾患のリスクを上げるという結果は出ておらず、おそらくそれ程恐れることはないと思います。とはいえ「ネコを見ると癒されるーー♪」とか言いながらデレデレしている人を見ると、「トキソプラズマに操られているのではないか?」と勘繰ることはありますが。。
doi:10.1126/science.aax0169
Reality check: Can cat poop cause mental illness?



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