じゃがブログ ~さいとう小児科~

じゃが院長のつれづれ日誌をメインに、趣味(合唱・囲碁・絵)や道楽(温泉・ラーメン・酒)にまつわるエッセーを掲載。

「擬陽性」と「偽陽性」

2007年12月18日 | ◎じゃが日誌
医学的な検査の中で、「擬陽性」と「疑陽性」が混在して使われているのですが、字面(じづら)からみても、本来は意味の違いがあるような気がしていました。

話は、今年の世相を表す漢字として選ばれた「偽」に発します。これを使った「偽陽性」というのもあるのです。

まずは、分かりやすいところで、「擬(疑)陽性」と「偽陽性」の違いから。

辞書によれば、

「擬(疑)陽性」は、「陽性ではないが、陽性に近い反応のもの」とあり、例として、ツベルクリン反応で発赤の長径が5~9mmのものを挙げています。辞書では「直径が」となっていましたが、発赤は円とは限らないので、医学的には一番大きな「長径」を計測することになっています。

「偽陽性」のほうは、「ある疾患で陽性を示す検査が、その疾患にかかっていない人でも陽性を示すこと」とあります。例として、梅毒血清反応が梅毒でない人でも陽性となることを挙げています。

ま、「擬(疑)」と「偽」の違いから、これは書かれている漢字の通りの理解で良いでしょう。

問題なのは、「擬」と「疑」の「陽性」の違い、です。私の中では、「疑」のほうは「偽」とほぼ同義に捉えていたのですが、どうもそうではないらしい。

「擬態」という言葉があります。辞書には、「動物が周囲にある物や、他の動植物に似た形や色彩または姿勢をもつこと。隠蔽的擬態と標識的擬態がある」と書いてあります。

また新しい言葉が出てきてしまいました。「隠蔽」と「標識」です。。。

「隠蔽的擬態」:無生物体や、捕食者の関心をひかないような他の動植物に似る場合。ミメシス。
「標識的擬態」:捕食者に対しての警告色を含む他の動物など、注意をひくものに似る場合。ミミクリー。

小枝のように見える虫は「ミメシス」で、羽に鳥の目玉のような紋様をつけた蝶々は「ミミクリー」・・・で合ってるかな?
すぐには覚えられそうにありませんね。「ミミクリ三年、柿八年」なんちゃって。
どっちにしても「似せている」点では共通のようです。「擬」にはそういう意味があると思って良さそうです。

「疑」・・・これは文字通り「疑わしい」ですね。嘘っぽい、怪しい、そんな感じがしてきます。
つまり、見た目の「擬」な様子から、見る側が「疑」ってしまう、という因果関係がありそう。だから「擬陽性」と「疑陽性」とは、「対象物」と「観察者」との視点の違いと捉えていいのかも知れません。

パソコンで検索をかけるときに、「ぎようせい」と全部大文字にして打ち込んだら、検索結果の中に「行政」も含まれてきました。昨今の年金問題や薬害C型肝炎などを見ていると、行政の対応もかなり「擬陽性」に思われてきて、検索のジョークかと驚いてしまったのですが、まさかGoogleがそこまで笑いをとるはずがありませんよね~。

これは「行政」も「擬陽性」も、旧仮名字体だと「ぎやうせい」となるためのようです。なるほど、これが一番合点がいきました。
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2 コメント

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参考になりました (編集者)
2008-09-03 13:35:34
偽陽性、擬陽性。これは医療の専門家でも意識して使い分けている人は少ないようですね。先生の記事、大変参考になりました。
#編集者さん (さいとう小児科)
2008-09-03 14:38:30
どちらの編集者さんか存じませんが、コメントありがとうございます。
ずいぶん前に書いた記事だったので、私のほうも思い出すために再読しました。

ま~、ほとんどネット検索の受け売りで書いた内容ですから、私の手柄はなんにもナシです。自分の知識の整理のために、ここに書き残しておこう、というのが本来の主旨です。

また覗きにいらしてください。コメントもよろしく。(^^)

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