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VAWW-NETジャパンの抗議声明

2006年07月07日 | Weblog
埼玉県知事 上田清司様

 歴史の事実を歪曲する上田県知事発言に、強く抗議します!!


 去る6月27日、上田清司県知事は埼玉県議会で、「古今東西、慰安婦はいても従軍慰安婦はいない。民間の業者が連れて行ったりするのであって、軍そのものが連れて行ったりするわけは絶対ない「自虐的な感情を抱かせることなく、真実、日本の正確な立場を学べるようにするのが大事」と発言し、埼玉平和資料館に展示されている年表の記述について、「こうした間違った記述は修正しなければならない」として展示の見直しを要請しました。

 私たちは上田知事の事実認識のなさに呆れると共に、歴史事実を歪曲する発言を県議会という公的な場で行い、被害者を冒涜し、「慰安婦」問題を封印する発言を行ったことに対して、強く抗議します。


 貴方は「(慰安婦は)民間業者が連れて行ったもの」「日本軍が(「慰安婦」を)連れていったりするわけは絶対にない」と言いますが、何を根拠に「絶対ない」というのでしょうか。「慰安婦」が入れられていた慰安所は民間業者の慰安所ではなく、日本軍が設置した慰安所です。
 日本軍が慰安所を開設したのは、1932年の上海事変時です。このことは自ら慰安所の設置に当たった岡村寧次上海派遣軍参謀副長の回想録(「岡村寧次大将資料集」上巻・戦場回想編)にも明確に記されています。
 1937年に日中全面戦争が始まると、日本軍は慰安所設置を拡大していきました。当時、上海派遣軍の参謀長であった飯沼守の日記には、「慰安施設の件方面軍より書類来たり 実施を取り計らう」とありますが、他にも日本軍の指揮・命令・関与を示す資料は多数発見されています。慰安所の設置と「慰安婦」徴集の指示は派遣軍や参謀部などが行い、陸軍で言えば陸軍中央が慰安所制度の統制に関わっていたことはすでに明らかにされているのです。
 貴方の発言は、過去十数年の調査・研究の成果を全く見ていない不認識極まりないものです。


 日本軍の関与と責任についてですが、93年、日本政府は被害者や元日本兵、関係者の証言や軍関係資料などの調査に基づき、河野洋平内閣官房長官談話を発表しました。その内容は、「慰安所は日本軍の要請で設営されたもの」、「慰安所の設置、管理及び『慰安婦』の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」、「(朝鮮人女性について言えば)募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」、「慰安婦」の移送については「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」など、日本軍の主体的関与と強制はすでに日本政府が認めているものです。

 その後、談話や被害者の証言を否定する人々が出てきましたが、それに対して河野氏は、「被害者の証言は、体験した人でなければ語り得ないもの」「被害者でなけば到底、説明することができないような証言があることは重く見る必要がある」「本人個人の自由意志でどこにでも行ける、つまり、もういやになったから辞めますということができたかというとそれはどうもできないという状況まではっきりした」と語っています。(なお河野談話は、現在もなお日本政府の公式見解です。そのことは、小泉首相も参議院予算委員会ではっきり認めています)

 河野談話には「我々はこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。我々は、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と記されていますが、貴方の発言は、歴史の真実を回避しろと言っているに等しいものです。悪いことをしても、自国にとって不都合なことは教える必要はない というのが、貴方の歴史認識への姿勢です。
 貴方は子どもたちに、身内が罪を犯しても、それを認めることは身内にとって自虐的なことだから認める必要は無いと教えるのでしょうか。貴方のそのような姿勢がアジアの人々の不信を増大し、信頼ある関係の構築を閉ざし、ひいては同じ過ちを繰り返していくのです。


 貴方は、埼玉平和資料館の年表の記述について見直しを要請されましたが、91年に「従軍慰安婦問題など日本の戦争責任論議多発」という記述のどこが「真実ではない」のですか? 日本社会を揺るがすほどの大きな出来事を忘れているというのなら、当時の新聞記事を確認してください。「真実」を主張するのなら、事実に添った発言を するべ きです。


 歴史の事実を捻じ曲げ、「慰安婦」被害者を冒涜する貴方の発言は、半世紀以上も苦しんできた被害者の傷に更に刃を向ける二重の加害です。公権力の立場をもって被害者を冒涜し、加害を封印しようというその発言を、私たちは断じて許すことはできません。

 私たちは戦争も女性に対する暴力もない平和な世界、人々の人権が尊重される社会の実現を心から願っています。そのためには、未来を築く世代に過去の過ちを隠すことなく伝え、歴史を教訓としていくことが大切だと考えます。埼玉平和資料館で、「慰安婦」問題をきちんと伝えていく努力がなされることを心から願うと共に、即刻、上田知事が発言を撤回するよう強く求めます。


 2006年7月3日            

                「戦争と女性へ の暴 力」日本ネットワーク
                ( VAWW-NETジャパン)