時雨スタジオより

9年の休止期間を経て、
なんとなく再開してみました。

「鬼」──中編

2020-06-19 14:27:39 | アデクション
娘から、「お酒を飲んだときのお母さんは鬼のようで怖い」と言われた女性の物語 団地住まい 「彼は、東京まで迎えに来てくれました。それで、結婚を決めました。最初は夫と二人で団地に住みました。夫もお酒が好きなので楽しく飲みました」  楽しさゆえか、酒の魔力か、女性の飲み方は激しくなっていった。 「お酒を飲んで、私がはしゃいだりすると、夫が怒って暴力を振るうようになりました」  しかし、暴力から逃げずに . . . 本文を読む
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「鬼」──前編

2020-06-11 15:05:11 | アデクション
石見神楽の「紅葉狩」では、美女が鬼女に変身する。 貯金箱 「家中が寝静まった夜、私は子どもの部屋に忍び込みます。小遣いを貯めている貯金箱に手を伸ばし、音を立てないように小銭を抜き取ります。それから、そ〜っと家を出て、自販機に向かいます」  女性がアルコールをやめられなかった頃、そんなことが何度もあった。 「子どもから、お母さん、貯金箱のお金が足りないんだけど知らない? と言われても、もちろん知ら . . . 本文を読む
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30年でたった一度の花見。(後編)

2020-05-28 11:52:57 | アデクション
夫から本気で逃げだしアルコール専門病院に飛び込んだ妻をケースワーカーが迎えた。 ケースワーカーの言葉 「よく相談にいらっしゃってくれました」とケースワーカーは言ってくれました。そして、次の言葉に涙があふれてきました。 「つらかったでしょう。今まで、本当に頑張って来られましたね」  ケースワーカーと出会ったことで、私の今があるのだと思います。ケースワーカーは、私に、いくつかのことを言ってくれたので . . . 本文を読む
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30年でたった一度の花見。(中編)

2020-05-24 00:38:16 | アデクション
 いま我慢すれば、私が我慢すれば、きっと何とかなるかもしれない……。  そう思い続ける妻であったが、事態の改善は望むべくもない。  舅を看取り、姑は老人ホームに入り、長男の嫁に対する針の筵(むしろ)のなじりは終息した。しかし、夫の酒乱はとどまることを知らず、針の山の暮らしが続いた。最悪の地獄といわれる阿鼻地獄にいるかのように、絶え間ない苦難が次から次へと訪れた。  そんな母親を見ながら育っていく子 . . . 本文を読む
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30年でたった一度の花見。(前編)

2020-05-21 00:14:59 | アデクション
 アルコール依存症の夫をもった女性が苦悶の日々を振り返る。結婚30年目にしてたった1回だけ、お酒のない花見を体験したその年の秋、夫の元を飛び出し自由に身になることができた。それにしても長い長い、途方もなく長い30年であった。 長男の嫁  私の実家では、頼母子講(たのもしこう)が時々ありました。近所の男の人たちが集まって飲み会を開くのです。女の人たちは一緒に料理を作ります。親たちは私が飲み会に近づ . . . 本文を読む
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