還暦おやじの洋楽日記

イエス東京公演(2019年2月24日)



2016年にイエスが来日したときは観に行かなかった。だってARWが来日することがわかっていたのでそちらを優先したのだ。クリス・スクワイアも亡くなってメンバー的には見劣りしてしまうのだから仕方がない。でも今回行ったのは、この面子でのイエスも見納めかも知れないな、ということを考えたから。イエスの来日公演はこれまでにも何回か行ったが、今世紀に入ってからは初めてとなるので、光陰矢の如しの20数年ぶり。
今回、東京公演は3日間行なわれるが、初日が「危機完全再現」、2日目が「ベスト・セレクション」、3日目が「サードアルバム完全再現」、という日替わりの内容。今回はトニー・ケイもスペシャルゲストで参加するそうなので、ハウとケイという取り合わせならば目指すのは3日目だよな。17時の開演時刻に合わせて会場の東京ドームシティに赴いた。

この会場は初めてで、チケットの席番号を見ると1階のけっこう前の方だったから一瞬喜んだものの、ステージとアリーナ席は1階の更に下に配置されており、実質は2階席であった。開演時刻をさほど遅れることがなく会場が暗くなり、お約束の「火の鳥」が流れる中、メンバーがステージに登場。ステージ向かって左から、スティーブ・ハウ(g)、ジェフ・ダウンズ(key)、ジョン・デイヴィソン(vo)、アラン・ホワイトの代役のジェイ・シェレン(ds)、ビリー・シャーウッド(b)という布陣。
オープニングナンバーがいきなり「Close To The Edge」だったので嬉しかったが、オリジナルに比べるとずいぶんスロー。ハウのギターももたついているしデイヴィソンのボーカルも高音が出ていなかったのでちょっと不安なスタートであった。その後は「Nine Voices」「Parallels」「Madrigal」といった渋い曲が披露される。「Fly From Here」を演ったのはダウンズへの表敬かな。このあたりからメンバーの調子が段々上がってきたようで、「Sweet Dreams」でのデイヴィソンの歌声はアンダーソンを彷彿とさせた。しかし、デイヴィソンの声質は歴代の後任ボーカリストの中ではいちばんアンダーソンに近いとは言え、それで評価されるのって当人にとっては辛い話だろうな。シャーウッドのベースもあからさまにスクワイアの奏法を踏襲していて、これもご苦労であるが、あのブイブイ言わせるベースがなければイエスサウンドとは言えないだろうから仕方あるまい。でもステージ衣装(何て呼ぶのか知らないけど、だっぽりした、膝下まである長い丈の上着)まで真似することはなかったろうに。ハウのギターもエレキでのアドリブっぽいフレーズはいただけないが、アコースティックに持ち代えるとちゃんと聴ける。殆どのMCは彼が行なっており、現在のイエスはハウがリードしていることがわかる。ダウンズは相変わらずキーボード群の山に囲まれ客席に背を向けての演奏スタイルであるが、裏方に徹して黙々とサウンド全体の屋台骨を担っている感じ。そしてシャーウッドのスクワイア風ベースが炸裂する「Heart Of The Sunrise」で第一部終了。ここまで約1時間で、そこから15分の休憩。
休憩時間にトイレに行ったら男子トイレが長蛇の列。そう言えば客層は圧倒的に男の割合が高く、年代も50~60代のおやじばっかり。演目が「サードアルバム完全再現」だから、それも無理ないか。おそらくこの日の観客が3日間の中でいちばん血中濃度が高いぞ。
第二部は、いよいよそのサードアルバム完全再現で、ここで万雷の拍手に迎えられてケイが登場。「Yours Is No Disgrace」が始まり、ケイはステージ真ん中に置かれたローランドのキーボードで殆ど片手のオルガンプレイ。ダウンズのキーボード群に比べると呆れるほどシンプル。「Clap」はハウの十八番だけあって演奏も堂に入っている。ひょっとして彼はこの曲をずっと弾いていたくてイエスの活動を続けているんじゃないかなあ。「Starship Trooper」では再びケイも参加するが、彼はここまでで引っ込んでアルバムの後半は残りのメンバーで演奏した。「A Venture」ではダウンズが珍しくジャズ風のピアノソロを披露。ハウのギターも流暢な「Perpetual Change」が終わると帽子を被ったホワイトも出てきて全員並びお辞儀をして退場。
アンコールは2曲だったが、ケイのオルガンのイントロから始まった1曲目の「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」は、まさかの渋すぎる選曲。定番の「Roundabout」ではホワイトも演奏に加わってクライマックスを盛り上げた。およそ2時間半のコンサートはこれにて終了。

この日の演奏曲目は以下の通り。
<第一部>
1. Close To The Edge
2. Nine Voices
3. Parallels
4. Madrigal
5. Fly From Here, Part 1: We Can Fly
6. Sweet Dreams
7. Heart Of The Sunrise
<第二部>
8. Yours Is No Disgrace
9. Clap
10. Starship Trooper
11. I've Seen All Good People
12. A Venture
13. Perpetual Change
<アンコール>
14. No Opportunity Necessary, No Experience Needed
15. Roundabout

こうして並べると「隠れた名曲選」といった趣きで、つくづく渋いなあ。ためしに2017年4月のARW東京公演のセットリストと比較してみると、重なっている曲は「Heart Of The Sunrise」「I've Seen All Good People」「Perpetual Change」「Roundabout」の4曲のみ。もうひとつのイエス=ARWに華のあるところを取られているので、本家だった筈なのにまるで「裏イエス」という印象。でも、これはこれで良かった。21世紀の今、これらの曲をライブで聴けるなんて思いもしなかったもの。

(かみ)
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