■2000年 日本 99分
■2007.3.10 GyaO
■監督 鶴田法男
■出演
仲間由紀恵(山村貞子) 田辺誠一(遠山博)
田中好子(宮地彰子)
麻生久美子(立原悦子)
若松武史(重森勇作) 伴大介(伊熊平八郎)
雅子(山村志津子) 橋本真実(清美)
森下能幸(大久保)
木村つかさ(金井優美子)
出光秀一郎(氏家守) 大場真人(山村敬)
田中要次(男性教師)
古谷千波(少女時代の貞子)
嶋田豪(新聞社の同僚) 小柳友貴美(看護婦)
《story》
不思議な能力を持つ貞子は、幼少時代も化け物扱いされて育った。母の静子が死をきっかけに上京し劇団に入る。そこでも、貞子がいることで奇異な雰囲気が漂う。ある日、看板女優が舞台で不可思議な死を遂げる。代役として抜擢されたのが、研修生の貞子だった。貞子に対する団員たちの目は、ますます奇異なものとなり、貞子から離れていった。そんな中で貞子に優しく声をかけたのが音響を担当する遠野だった。そして舞台初日。貞子の舞台に、30年前の超能力後悔実験のテープが流れる。それは、その当時の関係者が次々に謎の死を遂げ、その真相を追いかけている記者の仕業だった。パニックに陥った貞子は会場で荒れた。その後、恐怖のため、団員たちが貞子を殺してしまう。しかし、貞子にはもうひとりの分身がいた。記者の宮地は、団員たちに貞子の死体を伊熊博士のもとに連れていくよう指示するのだった。
この恐怖は悲劇だ
ただの恐怖だったら、その元を断ち切ればいい。ただの化け物だったら、その化け物を追いつめ消し去ればいい。しかし、貞子はちがった。貞子の心の中には人間らしい優しさがあった。それなのに、貞子のまわりを包む凍り付くような冷気。それは貞子の責任ではないだけに、貞子だけを見つめるとあまりに可哀想な悲劇である。いじめそのもだ。貞子自身にも、呪われた悪が取り憑いていた。それは離しようがないものだけに、その悲しみは大きい。貞子のことをわかってあげたいけど、そうすれば恐怖に覆われ、命がなくなるかもしれない。貞子自身がそれがわかっていないように見えたが、それは一人の人間として必死で生きようとしていたからなのだろう。でも、もう一人の貞子はそれを許さなかった。バースデー・・・そんな二つの貞子はどうやって生まれてきたのか。これから貞子は何を呪うとしているのか。なんだか、まだまだただのわがままにしか見えない、軽い感じがするが。
『風の耳たぶ』 灰谷健次郎 角川文庫 【BOOK】
会話文が続く。何十ページか読み始めて、途中でやめようかと思ってしまった。でも、最後まで読んだ。その会話は、まずバイキングの焼肉店を非難するところから始まった。今はありきたりのレストラン。でも、子どもが好きなものを食べる、それを親が何も言わないところは確かに「食」を壊している。日本のすべてがおかしくなっている。それは今も同じだ。でも、二人がただ憂いているだけでなく、それに立ち向かうべく人間がいること、そしてその憂いに中にいる人間もただ流されているのではないことを見抜き、希望を抱いている。
あまりに理想を追い求めているように見えたが、そうじゃないのかもしれなと思った。ここに出てくる人物はだれもが立派ですばらしい人間だ。後ろを向いて歩いている私にとって、まともに目さえ見ることができない。でも、そうやって生きていくことが大事ななんだと思った。彼らだってさまざまな困難にぶつかってきた。でも、私のように打ちひしがれて下を向かなかった。立ち上がって前を向いて一生懸命に歩いた。それこそまさに追い求める理想であった。ただ、口先だけの建前に薄い衣をかぶせた理想とはおおきくちがっていた。
「熊谷守一」「無言館」「良寛」など、今の日本を考える上で大きな鍵となる。これから先、また出会えることを願っている。いや、出会いたいものだ。