そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
ネタばれあるかも、気をつけて

サマリア

2006年04月23日 | 人間/社会派ドラマ


2004年 韓国 97分
■原題「Samaritan Girl」
○ベルリン国際映画祭 / 第54回(2004年)銀熊賞(監督賞)
■2006.4.23 wowow
■監督 キム・ギドク
■出演 クァク・チミン(ヨジン) ソ・ミンジョン(チェヨン) イ・オル(ヨンギ) クォン・ヒョンミン  オ・ヨン  イム・ギュノ

《story》

「この痛みを抱いて生きる」

「新約聖書ヨハネ第四章に登場する、名もなきサマリア人の女性のこと。
罪の意識のために隠れるように生きてきたが、
イエスと出会い罪を意識することで
生まれ変わったように信心深く生きた人物。」

高校生のヨジンとチェヨンは、いつのころからか大親友となって、ともに行動していた。ヨジンが電話でのやりとりやお金の管理をして、チェヨンは援助交際をしていた。チェヨンは、二人で旅行に行くために、楽しみながら援助交際をしているみたいだった。しかし、ヨジンは罪のチェヨンに対し罪の意識がふくらんでいた。
そんなとき、チェヨンが男といたホテルに警官が捜査に入ってきた。チェヨンは窓から飛び降り、死んでしまう。ヨジンの親友に対する罪の意識はますます強くなる。そして、ヨジンはチェヨンと関係した男たちにお金を返し、自分もその男達と関係を持つといった行動に出る。
ヨジンのただ一人の肉親である父は、ヨジンの行動に不審を抱き、密かに彼女をつけるのだった。

◎悲しい物語である。確かにヨジンの行動は純粋なのかもしれない。それだけに、父親の気持ちは、いてもたってもいられない激しいものになっていく。しかし、なぜ娘の前に出て止められないのか。怒れないのか。ヨジンの気持ちがあまりに純粋で、親友に対する素直な気持ちから起こった行動だからか。真っ直ぐにしか見られない。危険な足下に気づいたとき、立っていられず、落ちてしまうかもしれない不安からか。結局、言葉を交わすことなく、物語は進んでいく。
韓国映画はそんな激しい言葉のやりとりなく、切なく行動で表現するところが好きだ。しかし、現実問題として、援助交際に対する罪の意識は、双方ともこれほどまでにあるものなのだろうか。

公式サイト「アマリア」


白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

2006年04月23日 | 人間/社会派ドラマ


2005年 ドイツ 121分
■原題「Sophie Scholl - Die letzten Tage」
○ベルリン国際映画祭 / 第55回(2005年)-銀熊賞(監督賞)、銀熊賞(女優賞)
2006.4.23 サロンシネマ1
■監督 マルク・ローテムント
■出演 ユリア・イェンチ(ゾフィー・ショル)  アレクサンダー・ヘルト(ロベルト・モーア尋問官)  ファビアン・ヒンリヒス(ハンス・ショル)  ヨハンナ・ガストドロフ(エルゼ・ゲーベル)  アンドレ・ヘンニック(ローラント・フライスラー裁判官)

《story》

「ヒトラー政権に立ち向かった
 21歳の女性ゾフィーの勇気に
 世界中の観客が
 すすり泣いた感動の実話」

1943年ミュンヘン、ヒトラーの政権下、言論への弾圧は厳しさを増していた。そんな中で、戦争の終結を叫ぶ地下組織が存在した。彼らは「白バラ」と呼ばれていた。ある日、秘密裏に大量の郵送のビラを作成した後、余ったビラを大学の校内で配る計画を立て、決行したのがショル兄妹だった。最後のビラを3階でばらまいたあと、警備員に呼び止められ、警察に連行される。取り調べを受け、しらを切っていたのだが、家宅捜査で見つかったメモなどが証拠となり、自白することとなる。ゾフィーは、信念を持って、自分の行動の正当性を語るのだった。そして、即裁判が開かれ、さらに即死刑判決が言い渡され、執行猶予もなく、処刑されるのだった。

◎たった5日間で調書、裁判、処刑と、人間の信念と良心にどれだけ恐れおののいたかを感じる。何が正しくて、何を元に人は生きるのか。思っていることが自由に言えなかったあの時代に、死を覚悟しながらも、勇気をもって、良心を貫き通した彼らに感動する。今、60年以上もたって、こうして彼らの行動が多くの人の心に焼き付く。そうなれば・・と思っていなかったと思うが、今もなお多くの人に感動と勇気と良心を与え続けていることにまちがいはない。あの裁判官は、今、言論を抹殺した悪人として、歴史に残されていく。しかし、その根本はヒトラーであり、またヒトラーを作った人々であり、多くの人がそうならざるを得なかった悲劇があったのも事実である。人間の集団に覆い被さる見えない縛りほど怖いものはない。みんながそう言うから正しいわけではない。
ゾフィーの両親が処刑の前に面会する。その両親の言葉の中に、「誇りに思う」という言葉があった。立派な両親だと思った。死んでいく子どもを非難しない。最後まで信念を持たせていく、両親の勇気と優しさに感動する。

公式サイト「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」