タイではむちゃぶりはよくあることで、今日も突然
「なにかシンラパ(芸術)をやって」と言われる。
「準備してないのでできない。」と断ることもこれまで多かったのだが
それはタイではよくないこと。
タイ人はめったに「できない」と言わず、たとえできなくても「ダイ(できる)」と言う。
そして、とりあえずやってみる、口でごにょごにょ言うよりも行動する。
だから、失敗してもいいから「ダイ」と言って とにかくやってみせること、
失敗しても寛容な人たちだからこそ、「できない」と言わないことがタイ社会の中で大事な気がする。
ちょっと遅いけど、今更そう思うことがよくある。
失敗してもいいからやる。
準備はしていない、学習には教師の念入りな準備がとても大事、と思っているけど
そうばかり言ってそれを押し通す、かたくなな私でもきっといけないのだ。
「ダイ(できる)」と言って、すぐに考える。
何をやろうか。
昨日見たトゥッケー。 トゥッケーを作ろうか。 (→昨日ブログ 「ずっと会いたかった トゥッケー」)
いつも学習には、
教師の念入りな準備と、それを行う明確な目的が 最も大事と思っている。
が、今回はそんなことをすっとばしてやってみる。
そんな暇と余裕がない。
いきなりだけど、トゥッケーを作ろう。
【学習の流れ】
1 問いかけ。
「昨日クーサーイ(さちえ先生)はとても驚きました。何に驚いたでしょう。」
わいわい がやがや
「ネコ!」 「鳥!」 など手話で表現してくれる子どもたち。
違います。正解はこれです。
昨日撮ったトゥッケーの写真を見せ、動画を見せる。
写真や動画はみんなの食いつきがいい。
2 今からやることの説明
「今日はかわいいかわいい トゥッケーを作ります。」
なぜか タイ人にはトゥッケーはあまり好かれていないようで、
保護者みな、眉間にしわが寄っていた。
「クーサーイ。こわくないの?」 「クーサーイ、きれいって思うの?」という保護者たち。
あまりに私がトゥッケーがかわいいだの、きれいだのばかり言うので
子どもたちも ウンウンうなずき、場は “トゥッケーかわいい” の雰囲気に。
「かわいいけど、トゥッケーにさわってはいけません。噛まれます。」を付け加えておく。
3 作る。
① トゥッケーの写真をよく見て、視角でとらえ、その形を紙のうえに書き表す。
目でとらえたものを二次元に再現することができるかな。
細かくないおおざっぱな線でよい。
難しい子には、私が描いたものを紙の下に敷き、なぞって書き写させる。
② 線に沿って手でちぎる。 ハサミは使わないので、ちぎった部分に味が出る。
トゥッケーの指のところが難しいが、どんな形になってもそれこそ個性。
③ 「トゥッケーの水玉模様は何色?」 「オレンジ色!」
と確認してから、オレンジの紙をちぎり、のりで貼る。
④ 最後に目をつけて、台紙に貼ったらできあがり。
まあ、かわいいトゥッケー。
水玉模様にオレンジだけでなく黒を混ぜた子もいる。なんて見る目があることか。
写真を見てこれはオレンジ色だと思ったけど、そう思わない子もいる。
そこに黒を見る子もいる。
すばらしい。
教室の外には、トゥッケーがずらり。
かわいい かわいい 子どもたちのトゥッケー。
今まで急に言われたことはあまりやらなかった私が、
今回は学習の目的や準備を棚上げして、タイ人並みにその場しのぎでやってみた。
だけど、きっとやってよかった。
柔軟に譲り、だけど譲らないものをもつ、そのバランスって難しい。