ソムタム学級通信 ★さちえのタイ生活★

2010年6月より青年海外協力隊、養護隊員としてタイへ。バンコクより北へ450キロ東北部のコンケンで日々試行錯誤の記録。

擬音語 擬態語

2012年02月21日 23時51分23秒 | コンケン 第9特別教育センター
タイ語には 基本的に擬音語、擬態語がない。


擬音語というのは、たとえば
紙を破く音 「ビリビリ」
雷が鳴る音 「ゴロゴロ」
船をこぐ音 「ギイコ ギイコ」など。
その様子を表す音につながる言葉。


擬態語というのは、たとえば
眠っている様子 「すやすや」
揺れている様子 「ゆらゆら」
回している様子 「クルクル」
置くとき  「ポン」 など。
実際に音はしなくても、その様子を表す言葉。


ミュージックケアをやろうと準備していたとき、
寝る様子で「ぐうぐう すやすや」
手を回して 「クルクル クルクル」
そんな言葉を使いたいのに、それに対応するタイ語の言葉が見つからない。

日本で、タイ料理屋のオーナー夫婦に相談に行っこともあったが、
「クルクル」は「手をつかんでまわす まわす」
「すやすや」は「寝る」
というように、そのままを言葉で言い示し、それ以上のふくらみがなく、
擬音語も擬態語もないという。

あらためて、タイ語の語彙の少なさ、単純をモットーとするタイ人気質と、
日本語の表現のはかりしれない広さ豊かさを感じる。




そんなことがあってのちのこと。
午後の個別学習で、これまで担当したことのない初めて会う子を担当した。
ポケモンの絵を描き、見本のポケモンを見ながらふさわしい色紙を選んでちぎり、
はっていくという課題を用意する。
     

ポケモンは知らない子だったので、これはいまいち関心をもてない学習材になってしまったのだが
それはさておき、


私がまずちぎって見せる。
そのときに、
「ジーック」(ちぎる)
「ビッ!」(擬音語:紙を破る音)
を口に出し 

「ジーック ビッ! ビッ!」
と言っていると、この子が、笑う笑う。

それまで無表情だったのが、
「ジーック ビッ!」と
言えば言うほど笑う。
とうとう声に出してゲラゲラ笑う。
     


聞き慣れない言葉だからか、タイにはつかわない言葉が珍しくておもしろかったのか、
この音が気に入ったのか、
とにかく、この子は楽しんだし、楽しいという気持ちから
学習に取りかかる意欲も高まった。


色紙を渡すと、ちぎりながらにやにやする。
ほとんど発語のないこの子は、自分では言わない。
     


そばで私が 「ジーック ビッ!」と言うと ゲラゲラ笑う。
     



タイには擬音語がない、じゃあそれをどうしたらいいだろう、
なんて、以前は堅く考えすぎていた。
ない、でも、日本にはある。
ならば、使えばいい、タイになくても、聞かせればいい。
それをタイに合わせる必要はない。


以前、シンラパプロジェクトをやったとき    (→ 過去ブログ 2011.2.10「シンラパプロジェクt」
折り紙の手裏剣を合体させるのに、
「ウイーーーン ガチャン!」と言うと
保護者がどっとうけたときがあった。  
珍しいものはおもしろいのだ、きっと。


ふと見ると、手を休めじっとしている。
どうしたのだろうと見ていると指先をつまんでもじもじ。
タイの先生達は、こういう時、
「休まない、休まない、仕事するよ。はい頑張って。」
と促す。
待たないし、様子をじっくり見ないことが多い。


今この子は、指先に着いたのりが乾き、なんだか気持ち悪いのだろう。
自閉症の子は、身体感覚が過敏なところがある。
けれど、そうでなくてもどうだろう。
指に着いたのりが乾き、カピカピになってきたら、それをベリリと剥がしたくはならいだろうか。
私なら、手に幕のようについている乾いたのりを、皮をむくようにいっぺん剥がして、
きれいな指でまたのりを使いたい。
また、乾いて剥がすことの繰り返しになっても。
だって、むずむずして気持ち悪いもの。
剥がすと気持ちいいもの。
     

と思うけれど。

だから、待つ。
もじもじしてその先どうしたいか。
がまんできるのか、それとも剥がしたいのか。
どう感じているのかを見せてもらう。


指先から乾いたのりをはがし出した様子を見て、この子は
むずむずして、とても紙をちぎる気にも、のりを使ってちぎり紙を貼る気にもなれない
ということが分かる。
だから一緒にむく。


これにて、今日の午後の個別学習は終了。
予想しないことがいろいろ起こるから、予定通りに終わらないけれど、
続きはまた今度やればヨシ。
今日は、この子がむずむずしたら向きたい派ということが分かったし、
一緒にむかせてくれたし、
「ジーク ビッ」で大笑いして楽しんでくれたし、
それで◎ 上出来です。