現生と化石大型哺乳類、美術、英語 etcについて気ままに書/描き連ねているサイト(アナログの絵&リサーチブログ)
the Saber Panther



巨大ゾウ類の体重

ヒラコドン科の巨大な「サイ」、インドリコテリウム(パラケラテリウム)を別にすれ
ば、ゾウの仲間(長鼻目)というのは常に最大の陸生哺乳類の座に君臨してきた。
現生のアフリカゾウは歴代長鼻類の中でも大型の部類に入るのだが、古代にはこ
れをさらに凌駕する巨象たちが、地上を悠然と歩いていた。

長鼻類の体型は他にアナログが見出せない非常に特異なもので、その意味では何
れの種も似通っているといえるのだが、一般にアルカイックなゾウには四肢骨がどっ
しりとして重心が低く、頭骨の形がフラットで前後に長いという傾向がみられる(アメリ
カマストドンやアナンクスなどはその典型だろう)。
長鼻類の推定体重を割り出す方法は様々に考案されているようだが、クリスチャン
セン(University of Copenhagen, Department of Vertebrates, Zoological Museum)は種によって
明らかな体型の違いが存在するため、最も一般的とされる肩高(のみ)をもとにした
算定法は、信頼性に欠けると指摘している。
彼がベストのアプローチとして挙げているのは、四肢骨を形成している各長骨(上腕
骨、檮骨、尺骨、大腿骨、脛骨)の全長と骨幹のプロポーションをもとにそれぞれ推
定体重を出し、平均をとるというものである。

以下は世界各地の博物館や研究機関で展示、収蔵されている主な化石長鼻類の骨
格のデータを集め、上の方法で割り出された体重のごく一例である。

 

最もたくさんの骨格が見つかっており、知名度も高いウーリーマンモスMammuthus
primigenius/ユーラシア、北米)は、一部には非常に巨大な個体も知られているようだ
が、平均的には現生ゾウとほぼ同等のサイズだったとみられる。

3900~6900kg(ヘビオール・マンモスとして知られる個体)

南方マンモスMammuthus meridionalis/ヨーロッパ)とコロンビアマンモス
Mammuthus columbi/北米)は明らかにアフリカゾウよりも大きいのだが、体高の高
さからイメージされるほど著しい体重差があったわけではなさそうである。

Mammuthus meridionalis, M. columbi and M. imperator appear to have
been somewhat larger than extant elephants, 
although not as large as
their shoulder heights would suggest.

Per Christiansen 『Body size in proboscideans』
 Zoological Journal of the Linnean
society, 2004,140,523-549



Mammuthus meridionalis

南方マンモス               
7000~10000kg(巨大と形容される、パリにある個体) ・7000~9000kg

コロンビアマンモス
・10400kg ・10800kg ・10100kg

これはマンモスは背が高いが、現生のゾウ-特にインドゾウと比較して相対的に
骨格のつくりがスレンダーであり、頭胴長も短いということに原因があるようだ。

“This indicates that mammoths were taller, but propotionally less massive
than extant Elephas, more resembling extant Loxodonta in being more
long-limbed, and probably also with a propotionally shorter body
than
both species of extant elephants”
Per Christiansen 『Body size in proboscideans』

一方、アメリカマストドンMammut americanum/北米)の肩高はマンモスよりも大分
下回るのだが、推定体重は4000~8000kgと、アフリカゾウと同等か僅かに大きい
数字が示されている。

Mammut americanum

Mammut americanum appears to have been somewhat heavier than both
extant Elephas and Loxodonta, although no taller
and specimens appear
to have varied between 4000 and 8000 kg in body mass.”
Per Christiansen 『Body size in proboscideans』

インドゾウと同属に分類されているエレファスreckiErephas recki/アフリカ)とエレ
ファス
パレオロクソドンantiquusElephas or Palaeoloxodon antiquus/ヨーロッ
パ)は、どちらもアフリカゾウを大きく上回る、文字通りの巨象であったと断じて間違
いなさそうだ。

Elephas recki (Image by Mauricio Anton)

エレファスrecki
・10000~11000 ・10000~11900kg 

パレオロクソドンantiquus
・11500kg ・11900kg ・14500kg(大腿骨の全長が1600mm(Osborn, 1942)!という大型個体)

よりアルカイックなゾウ達に目を向けると、ステゴマストドンStegomastodon)とセル
ベロドン
Serbelodon)は大型でアフリカゾウに匹敵するサイズであったが、パレオマ
ストドン
Palaeomastodon)、アルケオベロドンArchaeobelodon)、キュヴィエロニウ
Cuvieronius)、アメベロドンAmebelodon)そしてゴンフォテリウム
Gomphotherium)などはいずれも現生ゾウより小ぶりである。

Gomphotherium (Image: wikimedia commons)

対照的に、デイノテリウムgiganteumDeinotherium giganteum/ヨーロッパ)の一個
体は体重15000kg前後と見積もられており、これは上腕骨長が1440mmという特大の
ステップマンモス
Mammuthus trogontherii /ユーラシア)と並び、クリスチャンセンが
報告している中でも最大級の大きさになる。

Deinotherium giganteum

ここで留意すべきは、発見された化石個体のサイズというのは、精々平均値
に近い類のものだろうということ
である。現生ゾウを見ても、例えば有名な“フェ二
コビ・エレファント”やクルーガー公園の“デューク”のように、記録的な個体というの
は平均を遥かに凌駕する大きさがある。クリスチャンセンによって史上最大の長鼻
類の候補に推されている
デイノテリウム
giganteumとステップマンモスの最大級の
雄であれば、恐らく体重20トン近くに達し、あるいはこれを超えていた可能性す
ら、十分にある
だろう。

particulary large bulls of the giant fossil species may have approached
20000kg in body mass, perhaps even exceeded this value. 
The largest
proboscidean appears to have been either Deinotherium giganteum or
Mammuthus trogontherii.”
Per Christiansen 『Body size in proboscideans』

" デューク "


 


松花江マンモスの不可解な?プロポーション

長鼻類研究の大家でもあったオズボーンは、先述の上腕骨144cmのステップマンモ
スの肩高を4.5mと見積もっているが(これは生前の、つまり毛皮や関節軟骨などの
厚みも考慮した上での数字
である。大型のゾウになると、骨格より15cmほど高くな
るといわれている)、これは意外な数字と言えるかもしれない。というのも、肩高が確
かに4.8m以上ある茨城自然博物館の松花江マンモスMammuthus sungari /アジア)
の上腕骨が(具体的な数字は載せられませんが)、これよりも「大分」短いのである。
さらにクリスチャンセンが詳細に並べた各大型ゾウのデータと比べて、松花江マンモ
スは目立って大腿骨が短いといえる。マンモスは体高に対して後脚の長さが短いと
いわれているが、松花江マンモスにおいてこの傾向が特に顕著なのだろうか(標本
を見る限りそのような印象はないのですが(笑))。

~Jagroar



Mammuthus sungari

 

参考: Per Christiansen 『Body size in proboscideans』 Zoological Journal of the Linnean
society, 2004,140,523-549



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