現生と化石大型哺乳類、美術、英語 etcについて気ままに書/描き連ねているサイト(アナログの絵&リサーチブログ)
the Saber Panther



●およそ500万年から300万年前の間は気温の変動も少なく、全体的に温暖で湿潤な気候が続いていた。ヨーロッパの平均気温は今日より摂氏5度ほど高く、年間の降雨量も400~700mm多かった。
こうした高温多湿な気候条件の下、西ヨーロッパには今日の中国東部などにみられるような、スギ科などの暖温帯の樹木が繁茂していた。 鮮新世(Pliocene)初期には常緑の亜熱帯性の森林が南極の一部でもみられたほどで、極地の氷冠が顕著に減退していたことを物語っている。

鮮新世前期の動物相には中新世(Miocene)の終り頃からの種が引き続きみられ、ゴンフォテリウム科のアナンクス属とマムート科のマストドン属の長鼻類が、依然としてユーラシア最大の陸棲動物として君臨していた。


アナンクス
 Anancus avernensis
ゴンフォテリウム科には上顎と下顎に合計4本の象牙を持つ種類もいたが、このアナンクスは2本の恐ろしく長大な牙(4m)を生やしていた。
肩高は2.5m、真正のゾウ科に比べると相対的に脚が短く、また歯は軟らかい植物を食べるのに適していた。

Geologic Resources:  American Mastodon
マストドン 
Mammut borsoni
北アメリカ産のものが有名だが、ヨーロッパには肩高3.5m、象牙は5mにも及ぶ種類もあった。マストドンは頭骨が大きく四脚は短めでどっしりとしていて、長鼻目の中で最も頑強な骨格をしていた。(画像はアメリカマストドンの全身骨格)

ヨーロッパで最後となるキリン科やニルガイ(ウシ科)の仲間も存続し、現代のイノシシと豚の直系の祖先であるSus arrernensisなども現れていたが、ヘクサプロトドン(カバ)や、パラキャメルス(ラクダ)のようにメシニアン危機のころアフリカからヨーロッパへと渡ってきた種類のほとんどは、姿を消していた。

パラキャメルス 
Paracamelus

中新世から鮮新世の前期にかけて、奇蹄類の多様性は著しく縮小しており、特にサイは角のないアセラテリウム族とテレオセラテリウム族はすべて絶滅し、クロサイとシロサイの分布もアフリカ大陸に限定されるかたちになっていた。
ヨーロッパのサイ亜科の中で唯一生き残ったのは、巨大なステファノリヌス属のサイで、多くは歯冠の低い(Brachydont)ブラウザーとして適応していた。

Stephanorhinus hemitoechus

サイと同様に、ウマ科のヒッパリオン属(指が一本のみのウマ属(Equus)とは異なり、各足の指は三本)の種類にも減少がみられた。

鮮新世の前期には、マカイロドゥス、パラマカイロドゥス、メタイルルスといったマカイロドゥス亜科(サーベルネコ)もヨーロッパファウナから姿を消しており、唯一メタイルルス族の大型種であるディノフェリスが存続していた。


ディノフェリス Dinofelis

その代り、短めで頑丈な犬歯をもつ現代のネコ科につながるグループが数を増やしており、最初のオオヤマネコであるイシオーレリンクスLynx issiodornensis)が現れていた。

ハイエナ科にも現代のブチハイエナやシマハイエナの祖先と考えられる、骨を噛み砕くのに適した歯型を持つタイプが勢力を得ていた(Pachycrocuta pyrenaicaなど)が、依然として「走行型」のハイエナであるカスモポルテテス(ハンティング・ハイエナ)も繁栄していた。


カスモポルテテス Chasmaportetes lunensis
カスモポルテテスの臼歯と小臼歯はネコ科のように先が細くとんがっていて、肉を切り裂くのに適しており、現代のハイエナのものとは大きく異なる。四脚は細長く、チーターと同様に高速で獲物を追いかけることができた(興味深いことに、カスモポルテテスは鮮新世の大部分を、最初のチーターであるAcinonyx pardinensisと共存していた)。
カスモポルテテスの生息範囲はハイエナの仲間で最も広く、ベーリング地峡を渡って北米に進出した、唯一のハイエナとしても知られている。

クマ科をみると、大型でがっしりしたアグリオテリウムは中新世から存続しており、また、後のホラアナグマやヒグマ、ツキノワグマにつながるUrsus minimusが登場していた。Ursus minimusはアジアに起源をもち、常緑の広葉樹の森が拡大するのに合わせてヨーロッパに渡ってきたとみられる。

温かいこの時代のヨーロッパでは大型爬虫類も繁栄しており、ヨーロッパで最後のクロコダイルや、全長2mを超える巨大な陸ガメのCheirogaster perpinianaなどがフランス南部やスペインに生息していた。

●およそ320万年前に、北半球に鮮新世で最初の本格的な寒冷化の波が押し寄せる(グリーンランドで最初の氷床が発達する)。
大小を問わずに哺乳類の顔ぶれには大きな変化がみられ、例えばヨーロッパ最後のキリン科をはじめ中新世に起源をもつ種の多くがこの頃に絶滅している。
西ヨーロッパには寒冷地に適応したジャコウウシ科の仲間が再登場していたし、シカ科では更新世ファウナの代表格の一つでもある、メガロセロス属が初めて現われていた。

ブラウザーの中ではエトラスカサイが東ヨーロッパからスペイン南部にかけて分布していたが、このサイは他のステファノリヌス属の大型種とは異なり、比較的小柄で(体長2.5m 肩高1.5m)脚が細長く、軽快に疾走することができたただろう。


エトラスカサイ Stephanorhinus etruscus

植生と草食獣の構成に変化が生じた結果、肉食獣-特に大型のネコ科猛獣の顔ぶれには大きな転換がみられた。
最初のチーター(Acinonyx pardinensis : ジャイアントチーター)やピューマの初期の種がこの頃に登場しており、さらにマカイロドゥス亜科(サーベルネコ)も多様さを盛り返していた。 中新世のディノフェリスはすでに絶滅していたが、メガンテレオンとホモテリウムが生息域を拡大していた。両者はともに非常に繁栄したサーベルネコで、アフリカからユーラシア全域、さらにはベーリング地峡を渡って北米にも進出し(最近の発見によって、ホモテリウム属は南米のヴェネズエラまで分布していたことが判明した)、メガンテレオンは有名なスミロドンへと進化することになる。



ジャイアントチーター Acinonyx pardinensis
ジャイアントチーターは体重90kgにおよび、アフリカのチーターよりもずっと大型だった。これは当時のヨーロッパは寒冷化を迎えており、体が大きいほど有利であったためだろう。しかし体のプロポーションは現代のチーターと全く同じであり、ストライドが大きい分、さらにスピードが出せたという説もある(A.ターナー)。

 


メガンテレオン Megantereon cultridens
メガンテレオンは短めで筋肉質の四脚をもち、体型とサイズは現代のジャガーによく似ている。ジャガー同様に木登りも得意で、主に樹木の多い森林に生息していたはずだ。フラットで長大な犬歯と、下顎にはそれを保護する鞘状の突起がみられた(後のスミロドンにはこの突起がない)。
前脚は特に筋量豊かで強力であり、鉤爪はライオンのものと同等の大きさがあった。

"The overall impression gained from the skelton of Megantereon is one of great power, giving little chance of escape to any prey once captured."
アラン・ターナー 『Big cats and their fossil relatives』   P.111

"Here the great strength that we see in the machairodonts, particulary in the forequaters of  Megantereon..."
同 P. 124

加えて、長く頑丈な首、短い腰椎なども、前脚と上体の力で暴れ回る獲物の動きを制し、正確に剣牙を頸部に打ち込む「スラッシュ・バイト」という殺し方と関連している。

 


ホモテリウム 
Homotherium latidens
ホモテリウムはシミター系のサーベルネコで、ダガー状の犬歯にはギザギザがついていた。後脚の長さはライオンと同じくらいで、前脚はさらに長かったので、わずかにハイエナのような後ろ下がりの格好をしていた。
四脚のつくりは全体的に長くスレンダーで、鉤爪は比較的小さかったので、開けた土地で、ある程度長い距離を走ることに適応しており、狩りもグループで行っていた可能性が示唆されている。

"The front limb, in particular, was more elongated and the claws appear to have been relatively small,  the  body  plan of a cursorial  hunter and perhaps indicative of  group-hunting behavior."
アラン・ターナー 『Evolving Eden』 P.227



ホモテリウムの頭骨長はライオンと同じくらいだが、 頬骨弓の幅が狭く、鼻面はもっと長くて目は比較的小さかった。正面から見た顔立ちは、現代のヒョウ属とは少し異なった印象だったろう。

●320万年前の寒冷化の後、310万~300万年前にかけて再び平均気温の上昇が起こったが(現代の温室効果に似た現象だと考えられている)、その後は新生代全般を特徴づけてきた安定した温暖な気候は徐々に失われ、約260万年前に、地球は本格的な氷河時代を迎える。
これは鮮新世のこれまでの寒冷化とは異なり、およそ4万1千年の周期で氷期-間氷期が交互に訪れる氷河サイクルの始まりであった。
高、中緯度の大陸気候は様変わりし、ヨーロッパの北部と中部には森林の代わりに開けたツンドラの植生が拡大したが、鮮新世中期の哺乳類の顔ぶれには320万年前の時のような著しい転換はみられなかった(既に多くの種類が、プレーリーや草原のさらなる拡大にも十分に適応できていたからだと思われる)。
対照的に、クロコダイルなどの大型爬虫類は大打撃を被り、絶滅においやられた。

とはいえ、海面が下がってユーラシアとアフリカや北米とが地続きになったことで、真正のゾウ科であるマンモスが初めてヨーロッパに登場したり、古いウマ科のヒッパリオンが最初のウマ属に取って代わられるなど、重大な変化も起こっている。


南方マンモス Mammuthus meridionalis
最初のゾウ科は、アフリカで中新世後期のゴンフォテリウム科から分岐したとみられ、すべてのマンモスは高い歯冠をもつグレイザーであった。
最も初期のマンモスの一つである南方マンモスは肩高が4mに達する巨象で、その後のステップマンモスやコロンビア(インペリアル)マンモスの祖先である。南方マンモスとしばらく共生した後、ゴンフォテリウム科のアナンクスは完全に姿を消すことになる。

エクウスstenonis
ヨーロッパで最初のウマ属であるE. stenonisは、ヨーロッパ西部~東部にかけて分布していた。肩高1.3~1.5mで、がっしりとしていた。アフリカのシマウマはこの種と近縁だと考えられている。

鮮新世の終わり頃には、ハンティング・ハイエナの最後の生き残りであったカスモポルテテスlunensisはついに滅び、スレンダーなパキクロクタperrieriに代わって、史上最大のハイエナであるパキクロクタbrevirostris(ジャイアントハイエナ)が登場していた。 またキツネやタヌキに代わり、エトラスカオオカミCanis etruscus)がヨーロッパを代表するイヌ科として繁栄しており(このエトラスカオオカミの分布拡大をさして、「ウルフ・イヴェント」と呼ぶ)、現代のジャガーに近縁であるヒョウ属のヨーロッパジャガーPanthera gombaszoegensis)も現れていた。

Image: Mauricio Anton
ジャイアントハイエナ Pachycrocuta brevirostris
雌ライオン程もある大きさを除けば、大きな頭骨、短い背骨、長く筋肉質な首や後脚よりずっと長い前脚など、ブチハイエナによく似ている。こうした形態は、大きな死骸の一部を咥えて運ぶのに適している。


ヨーロッパジャガー Panthera  gombaszoegensis
ヨーロッパに現れた最初のヒョウ属の種である。

『Mammoths, Sabertooths and Hominids』他参照



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 漸新世・前期... 中新世・前期... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。