151万画素写真暦

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ドリームライナー搭乗記

2012年08月06日 | 航空
過去ブログ「ドリームライナーミュージアム」で採り上げた航空機に搭乗する機会があったので以下にルポしよう。


偶々 「HND」空港から「UBJ」空港まで往復する所用があり、確認すると路線に使用されている機材にドリームライナーが含まれているのが判った。
丁度搭載されているRR製ターボファン発動機のギアボックスで構成歯車に腐食、破損の可能性のある製造ロットが含まれている報道があった直後だったので
機体の組換えが行われるかも知れないと思いつつボーディングブリッジを渡ると予定通りのドリームライナーが駐機しておりレジは「JA812A」であった。
写真の如く早朝ながら見通しが利かず天気が悪い。




機体搭乗口の写真だが、何となく造りが金属製機体と比べて弱々しい印象を受けるが気のせいであろうか。
ハッチ床面は流石に痛む可能性が大きい為、金属製の補強部材が嵌め込まれているが表面を見ると何やら黒い線が入りしかも反射光線の具合から表面が凸状に
変形している様に見える部分があるが造り方が何か雑である印象が拭えなかった。 しかしこんな部分の写真を撮るのも変わった人と思われていただろう。




機内は多色発光ダイオードで綺麗に演出しているが、家で云えば玄関に相当する部分の造りを見た印象が頭に残っており複雑な気分であった。
座席に液晶ディスプレイが付いた仕様を期待していたが、国内線仕様の機材だったので画面メニュー確認などは出来なかった。
なお此れは「HND」空港離陸前のショットである。




「UBJ」空港到着後、展開した頭上の荷物入れの展開状況写真。




飛行中の右主翼部分。 窓面積が在来機に比べて広くなったので機内通路側席からでも窓の外の撮影が可能であった。
当初、右主翼付け根付近の後部胴体席を取っていたが国内線仕様への変更で座席間隔が狭まった為か翼後縁の交点当りの位置関係に移っていた。
主翼の補助翼がかなり手前側に配置されているのが印象的であった。
然し跳ね上がる主翼の具合は凄いもので、反対側である着座席左側の窓を見ると窓からは主翼しか見えなかった。




「UBJ」空港に到着した時点で窓側席が空いたので翼廻りの撮影を行う。 写真の色から判る様に窓材は完全に透明ではなった。
また複合材製主翼である為、歪みが少ない様で主翼上面に映りこんだ雲の反射が殆ど歪んでいない様だ。




液晶の遮光ブラインドを確認する為、地上駐機中の主翼をクローズアップ撮影するが二つ前の主翼写真と比べて如何に飛行中に撓み反り上がるかが判る。




前の写真と比べて液晶の遮光ブラインド濃度最大化しても逆光状態であると此処まで外景が透けて見える。
尚、遮光の色合いは黒でなく透明な青系統のフィルタを被せた見え方をしていた。 然し濃度調整ボタンはゴムを押す感じで操作感に乏しかった。

此処で「アレッ?」と思ったのは主翼中程から翼端に向かって表面に現れている一点鎖線状のパターン模様である。
フラップや補助翼面には現れず主翼長手方向の中央構造部分にのみ点々と主翼前縁~後縁方向に出現している。
尚、反射して映り込んだ雲の像が消えているので模様部分の表面状態は鏡面ではなく紙やすり等で擦った様な荒れた状態になっていることが判った。




遂に急かされる様に機内から退出したが、ボーディングブリッジから機首部分が見えたので出発時と同様に撮影した。
此処ではまだ後述する「アレッ?」の気付きに到っていなかった。




ターミナルビルへ移動後、機首から右エンジンにかけて撮影するが撮影中に何となく違和感を覚えるが此処でもまだ例の「アレッ?」の気付きには至っていなかった。




違和感を覚えつつ機首のクローズアップ写真を撮影しようとE-100RSのEVF越しにズーミングした所、例の「アレッ?」の気付きが意識に浮かび上がって来た。




画面一杯までズーミングさせ例の「アレッ?」と気付いた正体をクローズアップしたのがこの写真である。
何と機首部分の風防周辺に何やら模様が浮かび上がっているではないか!。 丸で「眼の隈」見たいな奴である。
模様の発生を良く見ると前写真の液晶遮光ブラインド越しに見えた右主翼面上のパターン模様と同じく反射光が鈍く表面が荒い状態になっている。
さてこの模様の正体は一体何であろうか?。 機首から遠のく程にぼんやりと消えて行く其の有様を見て、「ハタ」と思いついた。

此れは機体表面の局部についた露であると!。 良く見ると時間経過と共に其の模様が細く成ったり末端部が消えて変化しているのが判る。
三つ前の写真でボーディングブリッジの窓越しに撮影した写真機長席窓上部の模様と比較するとこの写真では其の模様の途中部分が既に消えてしまっている。

さて何故この様な現象が発生するのか考察して見ると、本機は一万二千メートルを越える飛行高度を少なくとも三十分間程度は飛行していた。(後述で確認)
この時の大気温度は零下五十度に及ぶ低温状態にある為、其の空気に曝される機体は急激に冷却されている状態に置かれることになる。
特に機首部分は外気を切り裂く先端部分であるため熱(零下五十度)の入り口となり顕著に機体構造の温度が低下する状態になる。

上空ですっかり冷却された機体が降下、着陸してくるが、この夏の湿度の高い環境下で、地上に於いては冷えた飲料が入ったペットボトル表面に露が付くのと同様
冷えたドリームライナー機体表面にも露が発生しているのだ。 また露の付く模様の意味だが恐らく機体外板下にある梁状の構造部材パタンになっていると思う。

つまり熱容量の小さい機体外板から進入した熱が、より熱容量の大きい(部材質量が大きい)構造部材に蓄熱されて機体内部が一種の保冷材状態になっているのだ。
一般的に構造を持つ物体に局部的に其の部材温度の違いが発生した場合、温度差による膨張度合いが異なるので応力が発生し構造を変形させる歪みが生じる。

まとめるとCFRP製のこの機種では飛行の度に熱応力を其の機体内部に発生させており、この応力が機体寿命に影響を及ぼさないかと懸念されるのである。
後程、オーソドックスな金属製機体の機首部分のクローズアップ写真を示すが、ほぼ同じ熱的条件下を飛行しているはずだがCFRP製機体に認められた
露付き現象が生じていないことに注意すべきである。




RR社製ターボファン発動機のクローズアップ写真。 写真左端には左主翼下面と胴体部分の接合部分が見えるが、其の部分にも表面に不規則な模様が見えている。




左主翼下面からの燃料給油の為、アクセスパネルを開こうとしている。




アクセスパネルを開いた状態写真。




復路で搭乗する機材が「UBJ」空港に到着した。 因みにレジは「JA8670」であった。
垂直尾翼の高さに注目して欲しいのだが過去ブログに記した様にドリームライナーは機体抵抗を低下させる為に明らかに尾翼類の大きさを小型化している様で、
この意味する所は機体の静安定を削って代わりに電算機による動的制御で補う考え方だ。
万事正常動作していれば何ら問題ないだろうが現実は甘くなく、クリティカルな状況で何が発生してもおかしくはないが人が即応して百点満点対処できるかが鍵だ。




比較の為の機首部分のクローズアップ写真。 機首部分に映る周りの反射景色に模様は生じていない。




金属製の機体である為、CFRPに比べて熱伝導に優れた特徴からドリームライナーの機首に見られた露付き模様など全く発生していないのが良く判る。
スポットイン直後の写真であるが熱的には既に均衡している為、不均一な状態にはなっていない様に見える。





最後にドリームライナーの売りである機内環境改善がどの程度の物なのか実際に計測した結果を以下に示そう。
尚、測定は飽くまでも個人的な行為であり、使用した測定機材校正が行われていないので参考値である事を予めお断りしておく。
測定対象としたパラメータは飛行中の機内高度、相対湿度、放射線量の三点である。

測定に使用した機材の概要を以下に示す。
・気圧高度計:山岳登山用品店等で購入できる純機械的動作でアナログ的に測定しているもの。
・相対湿度計:一般家庭なら何処にでもあるアナログ式の湿度計。
・放射線量計:γ線が計測できる半導体センサーによる電子的動作で測定しているもので最近入手し易くなった国産のもの。

なお搭乗中に於いてはベルトサインが解除された場合のみ電子機器使用が認められている為、放射線量計のみ離陸、着陸期間は電源断としたので無計測である。


CFRP製のドリームライナーでは機内与圧々力を従来の金属製構造機体よりも高めて、更に錆びない材料である為 湿度も上げていると公表されていた。
さて下記の実際に計測したドリームライナー機内高度 湿度変化グラフを眺めて見ると予定飛行高度に到達してから気圧高度は千八百メートルに制御されており、
聞いていた高度値通りとなった。 また機内高度変化を眺めて見ると離陸後十五分強で予定飛行高度に達し、降下に於いては二十分程度で着陸高度に到達しており
非対称な高度変化であった。

また相対湿度は地上での値の半分以下に低下し二十パーセントを割り込んでいるので思った程、高められていないことが判った。
なお湿度変化の経時変化は遅れ要素の強い動きとなっており飛行高度に依存しないものとなっていた。
この動きから云えるのは国際線など飛行時間が長い程、機内の湿度が低下する状態になるだろう。




次にドリームライナー機内高度 放射線量変化グラフを確認してみると放射線量は飛行高度の関数になっているのが判る。
つまり高度上昇に比例して放射線量が増加する挙動を示しており、つまり大気がγ線の有効な遮蔽体になっていると云える。
上昇途中、降下途中に於ける放射線量曲線の傾きが異なっているが飛行上空の宇宙からから降り注ぐ放射線量の違いを示しているのかは判らない。




更に復路で搭乗した二シリーズ前の機材で測定した機内高度、湿度変化グラフである。
予定飛行高度は数百メートル高いだけだが、機内高度は明らかにドリームライナーに比べて低い気圧状態にあり気圧高度は二千二百メートル強迄上昇している。
上昇途中で気圧高度が一旦低下しているがこの理由に付いては特定出来ていない。 特記点は「HND」への降下に際して高度変化が一定差で記録された事である。
FMSなどの自動操縦による運航結果なのかも知れないが見事な程 綺麗に直線状態になっている。
相対湿度の変化もドリームライナーと同様に遅れ要素が目立つ変化を示している。




最後に機内高度 放射線量変化グラフを確認して見るとドリームライナー時記録と同様に放射線量は飛行高度の関数になっているのが判る。
但し経時変化の暴れ具合は此方の方が大きく、日没から夜間にかけての飛行であった為、電離層変化など飛行上空の宇宙からから降り注ぐ放射線量の
揺らぎがこの様な結果を持たらしたのかも知れない。




今回搭乗したCFRP製機種で写真の様に温度分布差が機体構造物に生じているなど搭乗して見るまで夢にも思っていなかったが個人的な感想を云えば気味が悪い。
繰り返し成層圏飛行を行っているので飛行回数ごとに機体に熱応力が印加されて行くからだ。 特にCFRPでは一体構造で造り上げてしまうので主要構造物の
劣化時修繕方法に工学的な蓄積(経験)が無いのも大きなマイナス点であると感じている。 矢張り最悪の事態を招かない限り技術は進歩しないと云うことか‥‥。

其れから 3.11の震災後、原発当事者側から航空機搭乗でも地上より多くの放射線量を被爆するので津々浦々の放射能汚染が問題にならないなどと引き合いに
出しているようだが誤魔化しの極みであろう。 何故なら我々は元々空中都市に常時住居を構えている訳でもない。

生き物として摂取する水、食物の汚染による体内被曝が避けられない恐るべき汚染状態にあり、嫌なら飛行高度を簡単に下げて済む航空機に乗っている訳でもなく
地面にへばりついて逃げようにも逃げられない状態である事を今一度認識すべきである。