KEITH【87】
「ベルトは?」
「白タイはベルト禁止」
「うるさいのだな、腹の出た貴族が決めたのか?」
「あはは、知らねえ。しかしモーニングもタキシードもってか一番
古い当時馬に乗るために尻尾を割った貴族服の燕尾服は黒色 は
マリーアントワネットが決定。一説だが。彼女が華やかなドレス
を着て周りを黒で引き締め、お陰で自分目立つため。彼女に気に
入られたいヤツらは挙って黒。以来、女性引き立て役の男は黒色
男ってそういう身分。尤も男は服より実力だからどうでもよい」
「当時そこにいたみたいだ」
「いたよ」
「 ...ああ、そうだったな」
ユリウスは最後に俺の白蝶タイを留めた。
燕尾服だというのにユリウスにヘリ・メットを渡された。
飛びモノの全てが禁止なので、この星全土に離着陸用飛行場の整備施設もなければ管制塔もない。
管制塔と交信勉強不要で基本飛びモノ同士、陸と空の通信ナシ。
空の安全、命の保障はされず、ヘリに乗るなら人の命は自己技術と責任、起こった事故に関しては民間の保険会社に一切任され、当然ヘリ免許なんてものもない。
ヘリ関わる民間の事故が起こった際には地上の交通事故の示談処理を得意とする民間の保険会社だけでは到底埓明かないためマフィアが関わってくれるようヘリ事故にはそのはじめから『クワロフス』がちゃっかり関わっていた。
当然この星でヘリに乗れても、ヘリ免許が存在する地球ではヘリは乗れない。
ザーイン星の一般人が操縦ベテランだから地球でヘリ免許を簡単に取れるかと言うと、操縦技術はあっても飛行原理や航空力学などの知識、管制塔との交信知識無知なので絶対と言うほど合格しない。
皆、揚力という言葉さえ知らないままヘリ操縦のプロだ。
ザーイン星でのヘリの存在は、その辺に馬がいたから馬に乗った、馬ならどの馬でも乗りこなせる、というようなもの。
だから、俺も恐らくヘリ免許なんか無理。
...ったく整髪したというのにヘルメットかよ?!
燕尾服で軍用機仕様ヘリに乗るのか?
取り敢えず、質問してみたが、ヘリ搭乗と共にさっきまで柔い笑顔だったユリウスは一変して鬼になっていた。
ばらばらという騒音と共になんとか上昇出来た。
高度を取ると共にホテルの方角に旋回。
って!
どっちの方角だ?!
俺にユリウスは右か左しか言わないし、グラスメーターの見方や、目安も未だに教えない。
ひとりで乗れるようになれ。ってわけじゃないんだな?と言えば、俺が何を言っているのか掴み取れ。と返す。
何もかも―西か東かを訊いて右か左かで返事がある。
言われたことと自分が知りたいことが違う。
基準するものが違うのだが、それがどう一致したのか一致させるか自分で発見しろということかっ!
そんな言い合いをしながら俺が自分でやっと掴めたものは、地上に対して何度の斜め角度に傾いているか?の水準計だけだった。
そんなものも知らずによく飛べたものだ!
ユリウスの言うように飛んでいたら、ナビゲーションがいつの間にか海上を示している。
「海上!?何だっ、海に出たら海賊や警察警備船に
バズーカ砲で殺られるって言ったじゃないかっ!」
「あははっ、気づいたか、海上通ったら早いのだ」
「気づいたかじゃねえっ」
「救助ヘリランプ点滅しているから大丈夫、海賊でも撃ってこない
救助ヘリを一度撃った船は以後、海賊、警察無関係に 遭難でも
怪我人救助要請でも無視されて民間も『クワロフス』も誰からも
助けてもらえなくなる。海賊でも守る掟だ」
「 ...そのランプ」
「点けてるよ」
「 ...いいのか?」
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