KEITH【14】
「新しい世界に入るときでも、初対面ってのは似たタチと知り合う
そんなもんだ。どうしてかってその世界に入り易いように。って
クルーの受売だが、ここに何年も居ていろいろと高見の見物して
いると、おおお、それって当たりだなあって感心。だから、今の
それは当たりだ」
「 ...。」
俺は無意識に視線が逸れて5人がフルコース料理をマナー正しく...そう、荒く、ではなく丁寧に食事をする絵図が視界に入って、それに気を取られて見詰めていた。
「ははっそんな難しい顔すんな?俺それ悪いことだとは言って
ねえし?不親切なタチは、イケナイなんて誰も言わねえし?」
...じゃあ、何が言いたいんだ?
だったら、わざわざ口にして言う必要もないんじゃないのか?
「 ...クルーは皆ああじゃないのか?」
俺は話の趣旨を変えた...いや、戻した。
「あ―クルーは中身はどいつも同じでタチ(性格)が違う」
また面倒臭いことを言う。
「 ...どういうことだ?」
「脳内は判を押したように全く同じで...例えば、お前が何かクルー
に質問したとしてどのクルーに訊いても全く同じ答が返って来る
が、その反応や言い方、雰囲気が違う。明るいヤツや冷たいヤツ
親切だったり不親切だったり」
それはヒアジが言って、次にディオンが加えた。
「シータはいつも冷静であんま笑わん、その上不親切だがカロンは
陽気で不親切。しかし、ラピスやルビーは親切でしつこいくらい
よく喋る、悩んでねえくせに悩み事を滔々と話し込んで挙句、俺
たちの部屋から二三日出て行かなかったとか、まあ、いろいろだ
そんなのも見分けつく」
「そのうち、顔と一緒にそのタチも覚えるって
あいつらどれもわかりやすい性格してるしな」
俺の横でイライジャが言った。
クルーの誰もが厨房当番に来るから黙っていても8000と顔を合わせて憶えていくと言うことか。
ただブリッジ常勤クルーは当番は滅多にしないほど多忙、若いイライジャとヒアジはその顔をまだ見たこともない。と言った。
船長はここに20年いるスーサさえ見たことがない。と言う。
「船長が『SPRING』に来ることはないし来ても『MIMOSA』食事
は船長室に運ばれていくし、船長やクルーの姿の映るカナン板は
『SPRING』に向いてるし。船長と会わなくていいってこと」
「カナン板...?」
イライジャの話の中に俺の初めて耳にする単語が出た。
「スーサだって未だにアレをよく知らないのに俺がちゃんと説明は
出来ないけど、カウンターの右にカナン板ってスクリーンがある
らしく、クルーはよくそのスクリーンを見ながら喋ってる。アレ
を使うためだけに『SPRING』に来る。憶測だが、あれでどこに
誰がいるのか判るんだと。あいつらそれぞれ発信機でもつけてん
のか知らんが」
「スクリーンに向かって喋ってる?」
「捜し当てたクルーの姿が画面に映る...たぶん。そんな会話してた
のを何度もこの耳で聞いてる。やっと捕まったとか何だその女は
とかなんとかそんな話。内容は難しいことごちゃごちゃ言ってる
からてんでわからないが」
「女?...もいるのか?」
「それは謎。この船に女はいないと聴いてたが、いると言う話
もある。女装のシュウじゃないらしいから、ホンモノの女か」
「女装?」
「いるんだよ、ひとり面白いのが。そのうち見れる」
また、オーバーヒートしそうだ...。
「あ...しかし、そのカナン板で女が見えたのだろう?」
「それは地上だ。あいつらは地上にいても捕まえられるんだ
だから発信機つけてるんだなと思うわけ。SP使わないしな」
「しかし、船長は女だという話もある」
ディオンが笑を殺すような顔して挟んで来た。
「ああそれ、俺も聴いた。ほんとか?」
「あいつらのことに突っ込むな」
ヒアジが乗り出したのをスーサが制した。
そして、スーサは俺の方を向いた。
「あいつらの話は後にして船の話が知りたいんだろ?」
そうだが、何もかもが情報薄で何でもいいのだが。
スーサは俺に少し笑いかけた―それをイライジャが引き取った。
この船…宇宙海賊船【真夜中の騎士】には、船を巻くように朝には昇り夜には沈む太陽があると言う。
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