ALLION【133】
好きと言ったことも結婚すると言ったこともアリオンの柔さに絆されて、いえ、イーギンの結婚に苛立ったせいよ、誤って速めた気がするけど、そうなってしまったもの絶対値...わかってる。
私100年処女だった気が...って、どうよこれ?
別にいいんだけど、その後...どう出るのかしら...変わんないか。
娑婆を凌ぐために、嫌われるためにはどうすればいいか なら沢山考えて来たから幾らでも思いつくのに、相手の気持ちを考えたら、どうすればいかなんて全く判んない。
...どうすればいいの?
抱きたいなら迷ってないで抱けばいい...いらつくわあ。
襲ってやろうかしら...それって嫌われる?
あ...違う、そんなことしてもあの人、ゆるい...笑うだけ。
嫌われたいわけじゃないでしょ?
やだあ...そういうことしか頭に浮かばないって。
仕方ないじゃない。私130のばばあだし。
ここまで着てそんなもの花添えてらんないわ?
面倒臭い...ああ...だからっそんな算段思うからばばあなのよ?
でもねえ、興味ないんだもん...そういうのは。私枯れてる。
いやだあ、可愛くない...い。
やめよ、無駄な抵抗、今更自分を嘆いたって始まらないわ。
沸々湧き出る終わらない自問自答を止めて脱衣所に出てきたとき、ヴァイオリンの音が聴こえた。
え...?
エヴァは髪と体の湯をさっと拭き上げると、バスローブを羽織って―ベッドのある部屋の扉をこっそり開けた。
綺麗な音色がエヴァをふわりと取り巻いた。
間近に見たビジョンは、美麗に流れる旋律の中にひとり入っているアリオン―扉を背にしてヴァイオリンを弾いていた。
アリオンの後姿を素直に美しいと感じた。
タキシードではない、さっき着ていたジャケットも脱いでシャツ姿に―見蕩れた。
...もう彼自体が綺麗。空気が綺麗。
すっかり旋律に包まれていたのに―アリオンが振り向いた。
!
そして、ヴァイオリンを止めた。
「え、オワリ?」
「はは、あんまり長いから、」
「いやだあ。残念」
「シャワーに行って来るよ」
アリオンはヴァイオリンをエヴァに渡して部屋から出て行った。
うっとりしていたのにあっさりと消え去ってしまった。
...。
エヴァはヴァイオリンを丁寧に拭き上げてケースに仕舞った。
ふふ...こういうの、嬉しいかも。
家でヴァイオリンを弾いてくれたら私が無条件で釣れるかも?
教えてあげないけど。
それで紳士的でいて?私は今夜は可愛らしく寝るわ。悪いけど。
結婚したんだからそう焦らなくてもいいでしょ?
そう思うのはエヴァの都合。
エヴァは夢心地になって―気を失うかのように直ぐに熟睡した。
そりゃあ、当然、期待したよ?
アリオンはエヴァの寝顔を見ながら笑って言った。
エヴァが寝てしまうとさっきまで賑やかだった部屋の中が突然静かになって寂しい。そして、無防備に寝ている可愛らしい寝顔が肌に感じる空気を温かく感じさせた。
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