FIND【218】
オースウ・ミゲル寺院
ロキンとスガヤ、ラドミールは日頃は一緒にいない。
ラドミールはジルフォ隊の服に着替ずデアンの隠れ家に1日中いるアランに付いて政治や環境の講義のような話を聞いたり、院長レギオンに付いて講談や御勤め補佐にいたので、僧の手伝いに入ってもロキンとスガヤに会うことは稀だった。
今ふたりは院長に呼び出されて―院長室でラドミールと再会した。
院長室のソファにいたラドミールは整髪した黒髪に精悍な面差しの立派な紳士―僧姿しか知らなかったロキンとスガヤは少し笑った。
クミエル領主という偉いお方はわかっているが、仲間と思っていたので思わずウけた。悪ぃ。
ふたりの俯いて笑を堪える態度からそう言っているのがわかる。
もうひとり、女か人形かと思えるほど造形や肌が綺麗で体格大きなラドミールと同じくスーツを纏って短い黒髪の若い紳士。
彼は今まで観たこともない 凛々しい という言葉の似合う怜悧な雰囲気―ウイングチェアに座っていた。
ロキンとスガヤはその紳士から真っ直ぐ見据えられているような鋭い視線に気づいて姿勢正した―好きな女性に見詰められていいとこ見せよう!と虚勢するような感覚が走った。
レギオンがロキンとスガヤに仕事の話を始める。
「どうしてあなた方かはラドミールも何も言わないので私には
わかりません。ラドミール推薦。ラドミールに感謝しなさい」
え?感謝?推薦?...何の?
露骨に顔に現してロキンとスガヤはラドミールを見た。
ラドミールはくっと笑いそうになって黙る。
今から城から近衛ふたりと『リーベ・フロッス』の社長がいらっしゃいます。こちらはアラン。ここに見える方々と接見します。
あなた方は扉前に立ってこの部屋に誰も通さないよう。用事あってこの部屋に近付き、ノックしようとする人があったら剣呑な空気を出さないように用を聞くなどして上手に断って下さい。
ジルフォ隊に頼もうと思いましたが、隊員が陣取るなら通りすがりで目にするだろう僧や尼に何か秘事かと思われるでしょうから誰に頼むか迷っていたところ、ラドミールがあなた方を。
えええ...突然重鎮身分!王の側近!『リーベ・フロッス』社長!
そんな世界のトップがここに?!警護ナシで俺たちが見張りっ?!
でっでっでっ何でラドミールはそんな大役を俺たちに?!
ふたりは只管驚愕したままひとつも言葉を返せない。
「今日のこの接見は城も『リーベ・フロッス』もお忍びです。一般
の参拝客のような服装で来られます。ですから警護もありません
部屋の周りはあなた方しかいません。重々言いますが、警護して
いる露骨な態度はなりません」
「それは...どのように...第一警護というものの経験が、」
ロキンが質問した。
「ロキンは武芸者ですよね?どうすればよいのか考えて下さい
考えてくれるだろうということであなた方を指名されました」
え...あ...なんだそれっ...豊穣祭のあれかよう...。
ロキンとスガヤは顔を見合わせて同時、わかりました!と言った。
イーギンは院長室に近い裏門から入って―寺院関係者の駐車場に車を停めて、え?と訊いたエマに、ここに停めろってさ。と応えた。
「院長とお知り合いなのは昔から?だから災害のとき社内で
救済志願者を募る...システムは既に出来てて即座に作れて」
「あ、それは違う。そのシステムは柊寺に行ってから」
「え... 」
「そういうこと慧能と沢山喋った。教えて貰ったんだ。企業に何が
出来るか。まさかこんなに早く動くと思ってなかった。俺がだよ
救済の話だけを流しておいてどこで何の会議したか知らなかった
ほら俺そんなの煮詰める前に入院。話流したのはジュン。それも
クラブの帰りにちらっと喋っただけ...ジュンの功労だったね」
「そう...なんですか」
「オースウ・ミゲル寺院は別口だ。レギオン院長は
ユリウスと友だち。そう言うと何かわかるよね?」
「え...じゃ」
「いやレギオンは院長してるだけでシゴトは関係ない。だから今日
は『リーベ・フロッス』の仕事で呼ばれ...呼ばれるときはそれ」
「では、私は尼僧さんのお手伝いに行ってます」
「待ってよう。長く掛かるかもしれないからそれはいい。俺の妻だ
俺もエマもバラバラでレギオンに会ってる。俺に紹介させて?」
「え、ふふ。はい」
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