【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【68】見ての通り

2010-05-04 | 4-1 ALLION




 ALLION【68】 


サファイアの脳にイーギンの、どうした?という声が響いた。

イーギンは社員食堂で図面開いて現場社員たちとランチ会議中。

『あああ?楽しそうな外野の音、あにしてんだよ?』

「仕事だよっ、何用?」

『気になんないのかよ?どうして仕事手に付く?』

「いらいらしても仕方ないだろが。することしてからだ」

『工場で社長がいなきゃできない仕事なんてない』

「どうかしたのかよ?」

『どうもしない。今直ぐ戻って来い。話しろ
 けじめつけてからシゴトしやがれっ!タコ』

「おい........今リツコと話したところで」

『後でも夜中でも明日でも明後日でも1年後でも同じだ!』

「 ...わかった」

イーギンはSPを切ったフリして、呼ばれた。と周りに居た社員に言って昼食も仕事も途中に家に戻った。






「それでっ!?!」

エヴァは身を乗り出してイーギンに詰めた。

向かいに座っていたイーギンは、はは。と空苦笑してソファの背に凭れて埋もれた。

「見ての通り」

「何よそれっ、だって!そんなことまであったのに!」

「だから、俺にはそういうのわかんないよ」

「わかんないで済ませる問題じゃないでしょ?!」

「 ...ふう...ん。俺にそう言う?」

「く...今はリツコの話してるのっ!それからどう話したの?」

「どうって...俺が家に戻ったらリツコが寄って来て謝った」

「んで?」

「俺は...そのときはリツコは出て行くもんと思っていたからハンパ
 聞き。しかし丹念に...て言うのか何度も謝るからいくら1歳とは
 言えソウシの前で空気悪いと思ってサファイアとソウシを家から
 出して、改めてリツコに向き合った。が、サファイアの受け売り
 か取り敢えずそれくらいは思いついたのか、在り来りの、辞書に
 書いてあるような綺麗な言葉が並んだ」

「あ―自分でモノ考えない人はよくやるわね。適切綺麗挨拶」

「はは、そうだな?本人の言葉がない...反省しているとかソウシに
 俺に、悪かったとか好きだとか、そういう気持ちが、そこにない
 綺麗なポエムっぽい何か...感情波が少しある棒読み?全く響いて
 こない。言葉も姿勢も。乱れても思いの一生懸命は表に出るもの
 フツウはな。必死ならそれは相手に響く。だから意味不明」

「 ...うん」

「俺はこういう話うぜえと思ってるだろ!て怒鳴りたかった
 煮えるの越して諦めたよ。好きにしたらいいよって思った」

「そうなるの判る...けど、それで?」

「無理だ?幾ら話し合うって言ったって話にならん。何ひとつ彼女
 には届かない。リツコが求めているものは何か....違うことだろう
 未だによくわからん...擁護だな、身元保証人..みたいな...俺をそう
 思っているだけで...たぶん」

「擁護...?」

「平穏に暮らすためには誰を味方にすればいいかはわかっている」

「あ...え?」

「俺と居たら何不自由なく暮らせるだろ?子供いては家事も手抜き
 しようにも出来ないし?サファイアが手伝うようになってラクに
 なって更に困ることがなくなった」

「でも...気を使って暮らすより出た方がマシとか
 思わないのかしら?だってさっきの...リツコは、」

「そんな感じだった?」

「えっわかんないけど」

「リツコが考えているのは、安全生活の方
 じゃないのか?ここにも俺にも、慣れて」

「慣れ...?」

「刑務所でも何でも保護された状態に慣れてしまえばそこから
 出る方が怖い。旦那嫌いだけど離婚しない女性の大半の理由」

「経済力?」

「だけじゃなくて、嫌でも誰かに擁護されている状態の生活はラク
 言われたことさえやっていれば好きに出来る。不満あっても一生
 安心安泰。そういうことを正直に口にする人もあるが、リツコは
 何もかも全くナールらしい無意識、だからそういうことだろ?」

「ああ― 」






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