【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

PAI【319】いつ連れ戻す?

2009-05-15 | 2-2 PAI




 PAI【319】 


次にギーガは閔家を無視して、菟村長の娘を、側室ではなく王妃に迎えたい。返事は急がない。と沃寓に使者を送った。

急がない との追文は閔家と揉めて解決時間掛かるだろうの猶予。

これに巴朝廷の反撃は強かったが、代々楚の王室から王妃を娶っていたのがしきたりなら王室ではなく一介の豪族基家から来た久夢もしきたりに反していたではないか、それを薦めたのは其方たちだ。と言って一旦黙らせた。

「しかし、陛下、菟の長の娘では、楚ではなく、」

「楚が怒ったら武力でカタ付ける。今後無血冊封関係要求など
 こちらに利のない要求は聴かん。楚が怒ることはないだろう」

「そんな、楚は、」

「戦か?こんな小国得て楚に何の利ある、心配いらん。仮に何十万
 の軍隊でも戎討伐と同じように将軍首を取る。楚は賢く行動する
 こちらから何も言わなくとも。巴は楚にそんな義理はない」

「しかし、菟を得て何が利でしょう」

「楚の平野見渡せる山頂に要塞築く。流通路開き街を作る。楚より
 遥かに利あると思うが?他国から責められるかもの道をわざわざ
 作らなくともと思うか?責めて来たらカシラ首取る。俺が3戎の
 討伐で何をしたか知らないのか?俺には容易だ」

ギーガに畏れなしたか安心得たか―朝廷は反論しなくなった。

ここで呆気に取られていたのは嘉松蔭。

討伐時と人が変わったようなギーガに感情なくただ驚いたが―
いや、違うか、円祥は実は巴王だったのだ。王ではこれ当然。

その嘉松蔭の肩に今、ずしりと重みが掛かった。

王の威厳もへったくれも無いギーガが嘉松蔭の肩を抱いて来た。

驚いて嘉松蔭が、陛下、と言い、傅こうとしたのを止めてギーガは
話を聞け。と小声で言った。

『久夢はまだ都を出てない。目立たないよう少数護衛で実家に
 向かわせた。長旅だが、精鋭100連れて久夢を護衛してくれ』

『え』

『何もかも久夢と子を守るためだ。どうやら巴は、つか、俺は楚の
 基家と閔家の豪族派閥争いのひとつコマの踊子。そんなつまらん
 戯言に付き合いたくないから金輪際の縁を切るのだ』

『では、王妃は閔家に狙われて?』

『この世は責めるは簡単だが、守るは難しいな』

ギーガは嘉松蔭に王命機動隊の札を渡した。






帰郷道中、予期した通り、廃妃では不安が残ると思った閔家が私兵を送り、久夢の輿を襲ったが、嘉松蔭ら精鋭隊が退けた。

久夢は実家に戻り、ギーガに言われたとおりに奥間に篭る。

一度の流産で廃妃などけしからん、閔が動いたと聞いた と荒ぶる父親に、確かに閔家の陰謀ですが、巴にも閔家にも何もしないでください。基家と私を守るために、巴王がしてくださったことです。お父様が動いては水の泡。動いては捨てられます。と縋った。

突然の別れのその日まで、毎日会って楽しく談笑していた記憶しかない王 を久夢は心から信じていた。






巴王の沃寓への直接要請に、またしても出し抜かれたと思って閔は沃寓を問い詰めに行った。

既に沃寓と彼の質素な家は巴の精鋭兵に固く守られていたが、それでも閔は沃寓に会った。

巴王を後ろ盾に持った沃寓は閔を前に蹶然として立った。

「貴方から拐かされたことはなかったことにします。楚と無関係が
 条件なのだ。私や娘、家族、村の1人でも危害加えるなら、また
 村に侵攻あるなら個人であっても国であっても巴王が一族殲滅...
 巴王の力はご存じのはず」

反論ひとつ出来ず煮え湯を飲まされたまま閔は引き下がった。

そして、沃寓をどうしてくれようの思案中、閔は楚王毒殺の容疑に掛けられて処刑された。

それは、基家が楚の王室に代わって巴と縁組を上手くやってくれたものを閔が壊したとして怒った楚王の謀殺。

ギーガがそのことを知ったときには沃寓の娘は王宮入していた。

だったら最初から楚王に閔の企てを通報すればよかったのか?

ログでは閔と楚王は仲が良かったため、楚王がそう出るとは予測も出来なかった。

だいたい、楚に絡んでいれば久夢の安全守れる確証もなく枕を高くして寝られない。

しかし、では、久夢と子をいつ連れ戻す?






PAIもくじ PAI【320】 につづく。




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