【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【128】それぞれ一生懸命

2009-12-07 | 4-0 KEITH




 KEITH【128】 


次第はこうだ。

「今のダイアンの話は聞いたよ、判っていると思うが、ルナルーは
 ここの奥様ではなく人質。キースが気に入れば公私ともに奥様に
 格上げしてやってもいいと思っていたが、未だ双方そんな兆しも
 ない。アレキサンドルはそんなに甘くはない。君がここにいても
 父親を追い詰める。1年待って気が変わると期待したが父親から
 良い返事は貰えなかった。だから、潰す。それがしたくないから
 寛容に振舞ったつもりだが受け取って貰えなかったようだから」

「人質は判ってます、だから何度も実家に戻って説得しました」

「それより離婚した方が早くないか?君は大金を持って家に戻る
 その金で紹介した豊かな広い土地で今よりも大きな収入を得て」

「それはしません」

「どうして逃げない?一生懸命逃げたら欲しいものに届く」

「あの家から逃げてここにいるんです」

「あれ...それは知らなかった。では君を攻めるのはお門違いか」

「私に言われても...もうこれ以上は何も出来ません」

「だったら用済みだよ、こちらから離縁申請する」

「困ります!私は行くところがありません」

「今までと変わらずここにいることは構わない。給料も払う。だが
 ダイアンがいるんだ。母親は必要だからキースは直ぐ別の女性と
 結婚する。耐えられるならいつまでもいるといい」

「そんな、」

「それが嫌なら父親を説得してこい」

聞いて―俺はマフィアが怖いと思ってしまった。

「ていうかアランが怖い」

「言ってろ。目先の喜怒哀楽にかまけたら落しどころを間違う」

「それが本心で動いたなら...それがダイアンの一生懸命...だ」

「ダイアンは泣くかなあ」

「ダイアンこそ人それぞれの道 を知っているのか」

「脱走するしない、話し合っただろうな、奴隷同士で」

「 ...畏れ入る」






ダイアンと一緒にバスタブに浸かっているとき、ダイアンが突然、どうしてママと別れたの?と訊いてきた。

「あ、私を産んだママ」

「それは...捨てられました」

「ママに追い出されたの?」

「そう」

「遊んでばかりいておうちのこと手伝わなかったの?でもママも
 パパを追い出さなかったらこんな素敵な暮らし出来たのにね?」

「それはどうかな。ママとダイアンを失ったから
 ここまで頑張れてあのままママといたらずっと」

「あ―ずっと遊んでたのね。ママは優しいもんね
 だから沢山の男の人...あ、それは言わないわ?」

「何だ、何か言いかけたっ」

「やだっ。幸せだから、壊れたらやだから言わないっ」

「ダイアン... 」

「 ...ママに会いたい?」

「ダイアンは?...会いたい?」

「えっ...知ってるのよ?アビーが言ったの、ママは病気だから入院
 していて頭がおかしくなっちゃったから会いに行っても私が誰か
 わからないから、会いに行ったら余計辛いからやめなさいって」

それは事実だった。

ダイアンを手放すとき既に妄想に怯えるほどの末期中毒だった。

だからあの死体…アビーも脱走娘ダイアンを持て余していた。

「じゃあ手紙を書こうか?病院まで行ってママの部屋に投げ込んで
 っていうのはどう?天使が配達してくれた?と思ってダイアンが
 誰かわからなくても元気になるかもしれない」

「え―!書くっ行くっ!!」

「よしじゃあ、今から行こう。着替たら直ぐお手紙書いて」

「え、今から?夜なのに?」

「脱走って夜じゃないとダメだろ?」

「だっ...何で?!」






KEITHもくじ KEITH【129】につづく。





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