【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【48】黄金畑『Golden wheat』

2009-12-04 | 4-0 KEITH




 KEITH【48】 


俺は洗面を済ませて2階の寝室に入り、用意されていた、結構な数ある衣類の中から適当な衣服を取り出して着替た。

そして、山羊の小屋に向かった。

今生まれたばかりの仔山羊の...なんと可愛いことか。

小屋に入って直ぐお産に立ち会ったスタッフのカトと他のふたりと既に来ていたメイドふたりに軽く挨拶して―無意識に仔山羊に目を奪われて魅入ってしまった。

立ち尽くして仔山羊を見詰める俺にメイドのイオがお茶を差し出して声を掛けて来た。

仔山羊をどうするのか?と過ったが、経営者である俺が、メイドに訊いてはヤバイと気づいて、ただ ありがとう。だけ言った。

このままスタッフの中に入って彼らを労い、農場内部の様子も訊きたいと思ったが、ジョージアではないメイドがふたりいる。

メイドの前で慣れない俺が下手を口走るかもしれない、それを懼れてやめておいた。

俺はスタッフに労う言葉を掛けて山羊小屋から出た。

外は夜が明けてグレー・ピンクの空が広がっていた。

都心とは言えディノウヴォウにもあった朝の空の色。

違うのは...ビルも家もない地平線と山脈のライン。

「旦那様!」

あ...俺?...か。

声を掛けられて振り向くと、さっさ山羊小屋にいたカト。

まだ若い...20前後、小麦色の綺麗な肌をした肉体労働を要する農場に似合う精悍と活気あるブロンドの髪に翡翠瞳の青年。

「こんな朝からどちらへ?」

「え...仔山羊を見に来ただけで...散歩がてら見回ろうかと」

「歩いてですか?」

「俺はまだ馬には乗れない」

「お付き合いします」

「そうか、ありがたい。では、銃を持ってくる」






早速あのエレベータを使って5階に上がり、ライフルを持ってカトの待つ庭に出た。

俺の農場となったここの名は『Golden wheat』

麦は作っていないと言うのに?

それをカトに訊くと昔は麦をしていたと言う。

麦よりもとうもろこしが儲かるようになって鞍替え。

Golden cornでは?と訊くと麦は麦ではなく実りの象徴。

その頃は紫ではなく黄金色だったのか、この辺り一面。

農場の羊の柵を脇に歩きながらカトが陽気に話しかけてくる。






「 ・・・旦那様はおいくつですか?」

「え...たぶん...31」

「あはは、たぶんって?」

「いろいろ記憶が飛んでる、覚えている限りじゃ31」

「身分証に生年月日があるのに?」

「『クワロフス』はカトも知っているだろう?
 俺の身分証は5枚あった。どれも一致しない」

「そうなんですか。あの、訊いてよかったですか?」

「構わないよ、これから長い仲だ」






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