【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【122】ほとんど脅迫

2010-05-07 | 4-1 ALLION




 ALLION【122】 


「何もかもよくして頂いて、どうしてお返しをすればいいのか判ら
 なくて、その半面、これからどうすればいいのか考えて...初めて
 そんなお話が出来たのは...病院にいた人で、好きとかではなく」

...わかってるよ。

「私、迷惑ばかりかけているのに、どうしてですか?
 信じられないんです、その...そう仰って頂ける事が」

「え...好きなのに?」

これではリツコは断りたいのだと思えてくる。

「 ...私、社長に気に入られたかったんです。けれどどうして
 いいかわからなくて...それにあの日から許されないと思って」

いつの間にかリツコが変わってる...?

しかし、それは数いた男たちのお蔭だろう...何よりもリツコを支えていたのだろう今日のあの男やセディックや...。

反面、リツコを放置していた咎は棚上げに彼らと沢山の楽しい時間と沢山の会話...。と思えば余計むかついた。

こうやって話を引っ張られれば大方の見当はつく。

「それで、俺じゃない誰かを捜していた?」

「社長...ごめんなさい。本当は好きです、でも」

「わかったよ、それはいい。でも、何?好きだけど結婚しない
 だから、他所の男のところに行きたいですと願っているの?」

「え、あ、どうして...?」

「え、どうして、どうして?だよ?どうして、の先は
 どうして、わかったのって続くのか?そうなる文章」

コドモのように少し切れ気味のイーギンにリツコは焦った。

しかし、逆にそのイーギンのことをふと可愛いと思えて―リツコの心に温かい余裕が出来た。

「 ...私でいいんですか?」

腹括って話半分に聞いていたイーギンは驚いて耳を疑った。

「社長に追い出されたくなかった。それしか頭になくて、」

「そんなことしないってずっと言ってた」

「でも、私を雇って下さった社長だから」

何だかまたぬか喜びした気がしてきた...。

「本当は、その、月2回会ってらっしゃる、」

「会ってない、そんなのいない、って言っても信じないだろうけど
 疑うなら、いや、リツコが正式に妻なら『クワロフス』の夜会に
 連れて行っている。もうひとつは来月からなくなったよ。この前
 連れて来た友達の女の子が家出していたから月1で呼ばれていた
 見付かったから無くなった。サファイアのウソだ。リツコが本心
 を言わないからあいつが...否それは弁明しない。正直わからない
 リツコはどうしたいんだ?俺とどうなりたい?嫌われたくないも
 出て行きたくないも判る。しかし俺がリツコのシゴトを引き受け
 たから...ただの恩のためとも受け取れる」

リツコは言われて初めて気づいた表情をした。

イーギンは素直に頭痛がする。

リツコが、それは両方ですけど。と静かに言った。

あ―確かに。

...え?!

イーギンは執着で恋思う女性だろうが慕う女性だろうが愛する女性だろうが、自分の色を変えてまでの態度で臨むはなかった。

それはギーガにもエヴァにも。

一度だけ、エマに自分を色好く見せたい欲が生れた。

それを今リツコを前にして―思い出していた。

こんなに焦らされてはとうにキれている自分が...キレていない。

省みてイーギンはリツコを得たいと欲する個人執着恋愛の熱は冷めて(多分、そんなことではリツコと付き合えない)戦場占領に近いものに熱していたような気がした。

一瞬でも諦めれば、領土を取らてしまう、そんな決死。

今その決死の戦火の中に勝利の旗を挙げ...てもいい?

イーギンはリツコの顔を見詰めて心で問う。

リツコの表情からは―またこれが何も読めない。

そんなことが頭を駆け抜けながらイーギンはくすと笑った。

それは気の張っていたリツコの気持ちを和らげた。

「リツコ、応えて?完済したら出て行くつもりだった?」

「いえ、ですから、私はずっとここに」

ですから?!―そんな言葉聴いていない...初めて聞いた。

イーギンの中で半旗進んだ。

「その後もいるつもりだった?俺の家に」

「はい...それは、お願いするつもりでした
 あの、会社を辞めるつもりもありません」

「なら、俺と結婚か?そうじゃないなら解雇しよう」

ほとんど脅迫。






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