【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

FIND【83】ジルフォ隊の宿坊

2009-10-05 | 3-3 FIND




 FIND【83】 


階段を降りて地下に入ると寺院の外観とは真逆の空調から照明
壁質まで完全にシステム化された金属一面の明るく広いホール。

驚いている間も無く向こう壁のエレベータの扉に誘われた。

アランはそこでフードとマスクを取って顔を現した。

エレベータもハイテク世界で―画像で観たことしかないが、SFか宇宙ステーションを思わせる。

四方八方見回してラドミールが驚いていると、ジルフォ隊は王直下ですからラキス軍の設備です。とアランが言った。

「あ...では先ほどのホールに集まって?」

「はい。玄関は今にも朽ちそうな木製ですが
 今のホールが我々の秘密基地 となります」

ラドミールは、見事だ。と感心を寄せた。

「レスキューの際を思えば最新テクノロジー必須ですが、自然災害
 にどこまで効くか計り知れません。しかしここまで整備に越した
 ことはない。有志という人間の厳選も必要ですが」

「では城は勿論サウもここまで装備?」

「はい。サウは必ず軍人がレスキューとして待機しています
 ナールの消防も最新は取り入れてます。問題は人選と教育」

「そこなんです。クミエル領は自然災害はないと言えないのに僕は
 危機感がなかった。何かあれば隣領地や市に依頼のつもりそれで
 いいと思ってましたが、備えられることはした方がいい」

「ですが我々以外、ディノウヴォウ国民、当然外国の領主をここに
 入れることはありません。私が警護やレクチャー付くこともです
 院長の許可ですから相当な理由でしょう?」

「デイヴィッドやユリウスが関係している...でしょうか」

「ユリウス?...彼と会ったのですか?」

「はい。爆破の寸でで血塗れで路上にいた彼を拾って」

「血塗れで路上に?!」

酷く驚いて聞き返したアランにラドミールが驚いた。

「あ、しかし、もう治ってます」

「あ...それでわかりました。ユリウスの采配ですね」

「彼はマフィアと名乗りましたが、やはりラキス?」

「はは。それについてはユリウスは生返事でしたか」

「はい。別に問題視することではないような」

「ええ。マフィアもユリウスやデイヴィッドほどになると税金はサ
 ほど納めますし、市井では手足になってくれます。未だ他国では
 ナールの政治家と企業とマフィア癒着...ディノウヴォウはナール
 の政治家がありませんからそれはありません。協力の組織...未だ
 ユリウスの組織だけですが」






エレベータを降りるとホテルのような綺麗絨毯の敷かれた長い廊下
両脇に扉が5つ、それがデアンの個室で突き当りがアランの部屋。

ラドミールはその向かいの部屋に案内された。

「ホテルのスウィートとは行きませんが、安全安心は確保
 出来ます。皆寝るためにしか使いませんから狭い造りで」

言われて納得するほど大きな寝台がひとつあるだけで壁にシステム化されたデスクと椅子やテレビなどが機能的に並んでいる。

隠れ蓑たるや空調で快適温度と換気なされて―窓もない。

アランは、こちらでクミエルとテレビ会議出来ます。と言いながら壁に並ぶディスプレイをオンにして操作を始めた。

「今、セットします。向こうが朝になる時間にアクセスして下さい
 クリスティーナはクミエルに行くと言っていましたが、こちらで
 話し合いは出来ます」

「そ...ありがとうございます。こんなことまで。あの彼女は学生の
 ように見えましたが、既に『シシィ』の重役ですか?ご令嬢とは
 言え先程言われた...そんなことが出来るのかと」

「クリスティーナですか?『シシィ』幹部でも彼女に逆らった人を
 聴いたことありません。親の仕事に才を発揮する方です19ですが
 いえ、私もほんの数回お会いしただけで、初めて会う人にも誰に
 でもああいった感じです。色香めいたことは口にも態度にもされ
 ないので思わせ振りと勘違いする男性もなく、根の誠実な方です
 彼女を味方につけたら金融は千人力と思っていいそうです。いえ
 院長の話です。私はよく知りませんので」

「そうですか...何だかユリウスを切っ掛けに...いや、何だろう...
 素晴らしい方々紹介いただいて驚き続きで...恐縮窮みです今」

「そうですか?それは誰に恐縮感謝するでもなくラドミールの天恵
 こうなることになっていた と言う。それに実際に果敢に動くは
 ラドミールです。自分の意思と意識と行動に内省感謝するもの」

「ジルフォ...ありがとうございます」

アランはラドミールに振り返って、これで繋がります。と言って、使い方の説明をして部屋にある設備の説明もはじめた。

「食事とシャワーは共同ですから個室にありません。クローゼット
 はこちらの壁。寝着と下着と亜麻色の僧衣があります。明日から
 着て下さい。寺院にいる間は新僧で居た方が詮索されません」

「おお、そうですね。しかし、ジルフォはそのときは、」






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