【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【67】魍魎の入る箱

2010-05-04 | 4-1 ALLION




 ALLION【67】 


サファイアは歩きながらリツコに言う。

「あんた、自分が何したかわかってんの?」

「え」

「それいいの?そういう態度?」

イーギンは...許すんだろうなあ...。

「サファイア...ごめんなさい、ソウシを」

「そういうことじゃない。それ大事だけど。俺が訊きたい
 のは、これからどうしたらいいか、それ...どうすんの?」

「え... 」

「社長にどうすればいいか判ってんの?出て行かないんだろ?出て
 行くの?今までのように出来ると思ってんの?あんたはどれだけ
 社長を傷つけたんだよ?わかってる?」

「あ... 」

「何だよ、反応鈍いなあ、」

「謝る。言われたとおりにする。私、社長しか頼れない」

「社長のこと、好きじゃないの?」

「え?好きよ?」

「わかんねえよ、それ」

「 ...一緒に居たい」

「なら二度と裏切らないよな?社長にだけじゃない
 何も知らないソウシが一番被害者。わかってる?」

「うん...ごめんなさい」

「 ...。」

わからん。俺にはリツコの、いや、女の本心なんか。

自分の身を守る女たちの嘘や芝居は腐るほど知ってる。

そのときは本心でも次の瞬間には変転するんだ。

イーギンはそれもわかって許すんだろうけど...。

俺は女には付き合いきれない。






暫くはリツコに会いたくないと思っていたイーギンはその日は家の自分の部屋に直接サジして着替えて―工場に出た。

今日は反省しろ。と言い渡されたリツコはサファイアとソウシと家の中にいた。

サファイアはリツコにそれ以上の話はしなかったが、きっと言わなければそんなこともしないだろうな。と思って、社長が戻ってくるまで起きていて謝れ。心の底から。と午後を過ぎた頃に言った。

リツコは案の定、このまま何事もなかったように謝りもせず、意思を示す話もしないまま普段生活を続ければいいと思っていたのか、一瞬驚いた表情を漏らしてから―頷いた。

面倒臭いと思ったのかよ?きちんと謝ってないじゃないか?ここに居たいのにそれいいの?!夜の何時に戻るともわからないイーギンだから、眠いのに起きてなきゃならないの?とでも言いたそうだ。

出て行きたくない、反省している...口だけか。

ああ、今まではそうやって生きてこれたんだろうな。

本気で思っているならイーギンの気持ちを取り戻したくて、家にいろって言われても居ても立ってもいられず形振り構わず仕事中だろうが何時だろうがイーギンの居場所捜してすっ飛んで行って、またそこで怒られたって、しっかり謝って今後を請い願うだろっ!

それが本当だろうがっ!...しないのか?...何でへーきなんだ。
何故そんな風にだらしなく済ませる?...何もかもがそうかよ?

サファイアはリツコの一瞬見せた表情にぞっとした。

1年もイーギンの横に居て何処を見てたんだ?
あんたはイーギンもソウシも思っちゃいない。

目先快楽にしか動かない...なんて...。

何で黙ってイーギンが戻ってくるのを待ってられるんだ。

自分の身の安全しか考えてないからか。

サファイアはリツコの態度を見遣り考えているうちに、事態最悪に慄いて―イーギンにラギした。

魍魎の入る箱の蓋をそうっとずらして、入ってるんだか入ってないんだが確認しないうちに、そんなものはこの箱には入ってなかったことにしたくて慌てて蓋をバシっ!と閉めたように。

リツコの部屋から離れて、イーギン!と呼びながらそんなイメージが脳を掠ってしゅっと閃光を見るよう身に刺さる。

あ、それ、今のリツコの悲哀な行為と同じじゃないかっ?!

対峙しない挑まない迂回する遠巻きにしてしまう...。

そんなもの知りたくねえっ!事実にならなきゃそれでいいっ!

そうでなかったことになればいいんだ!






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