【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【28】夜の訪問者

2009-12-03 | 4-0 KEITH




 KEITH【28】 


何もない日常が続いた。

本当にここでは...コレといった事件のひとつも起こらない。

決められた時間に言われたことをして寡黙に動く。

考えてみれば、昔と同じだ..シゴト内容が違うだけ。

居付くのか?と何度も言われたが、今でははじめて会ったクルーも訊いて来なくなった。

(それを訊いて来たのはあいつが最後だったような)

日曜日が来て―俺たち6人は、その日1日厨房1階下、野菜倉庫のリタールで在庫補充生産サポートをするよう言いつけられた。

お陰でリタールの操作が出来て実際に見ることになった。

枯れ木や廃家具や金属廃棄物から、直接ではないが、他の素粒子の引出しと結合して足し算引き算されて、新鮮な野菜や果物や粉やが出来るのは昔絵本で見た錬金術の技のようだと素直に感動した。

一度、羊の死体が左に入れられて右にズッキーニが大量に作られたのには、こればかりは、ウソに決まっている!?と疑った。

ズッキーニを見れば思い出しそうだ...。

仲間5人は、日曜日だからガキの反乱があると見当付くだろうが、厨房(うえ)で何が起こっているかは知らない。

いつものガキの反乱はクルーに不意打ちして射撃やナイフを飛ばす程度で被害者になるクルーは数は少ないが、今回は生物兵器...被害者の数が違う。

当番クルーも菌にいつか感染して、いや、どんな展開で狼男菌がそれを食べたクルーに発病し、ガキがどう動き、船長がどう処理するのか、それに一度死んだクルーがどういう風に生き返るのか、ホンモノの危機感がないためか、想像してみては見たい気もした。

しかし...現場に行けば、感染してしまう。

俺たちは不死身じゃない...。

その日は、ウエで何が起こっているかの話題も避けてイライジャも初めて扱ったというリタールの話題に沸いた。






また数日が過ぎ―無意識に捜していた。

レイやモーリス、当番クルーに呼ばれるたびカウンター近くに用のあるたび『SPRING』を覗いて、いるんじゃないか?と期待した。

或いは、今日は当番に来る?なども。

まだ1ヶ月程度ではクルーの全員と当番で会っていない。

あれは今まで当番に来てないクルー。

何故、気にする?...リベンジしたいのか謝りたいのか。

脳内整理したつもりのソレは結局、整理どころか課題として君臨―ふと、気を抜けば、真っ先にあの顔が思い出される。

何とも...脳内整理と気持ちの合致が上手く行かず、そんな鈍い不具合が俺を覆い、鈍さから脱したいと言う気持ちが走る。

しかし、ただ煽られるだけだった。

どうなれば、この鈍い感覚がすっきりする?

それが不明ではどうすればいいかさえわからない。

更に解決策も見えないという問題までもが足し算されて余計に鈍い感覚へと引き込まれて苛立ちを起こした。

それにしても...こんな程度のことを頭を盗られたように煩悶するとは―俺も悠長なものだ...こんなこと、笑止の域...。

俺は何もかもを掻き消すようにシャワーの熱い湯を浴びた。

シャワーの後に髪を拭きながら腰にだけタオルを巻いて部屋に出ると、微かに扉を叩く音が聞こえた。

俺の部屋に誰かが来るなんて...ありえない。

しかもこんな時間...誰?

俺は訝しく思いながら怖々と扉を開けた。



そこにはあの一際綺麗なクルーがいた。

前と同じ服だが、長かった髪を短く切ってそこに立っている。

この前見た印象とかなり違うのは...髪のせいか?

いや、これはあいつだ...が、何かが明らかに違う。

「入っても?」

彼は少し笑った表情で訊いた。

瞬間、何がアタマの中を走ったか定かではないが...戸惑った。

追い返す理由も見つからないまま彼を中に入れて扉を閉めた。






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