【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

FIND【27】サジ出来ない

2009-10-03 | 3-3 FIND




 FIND【27】 


女がカーヤを連れてギーガのいる部屋に戻った。
しかし部屋の中は全く静かで兵隊ひとりいない。

大理石の白い床は黒々とした血飛沫と血溜り。
一辺3センチほどのサイコロ状の肉片と骨片。

内臓片が部屋中、飛び散っていた―ここにいた兵の人数分。

「!!――なっ!なんじゃこりゃあぁああ―っ!」

カーヤは見たこともない惨劇の様に目を疑って叫んだ。
女も惨殺驚愕のあまりの酷さに言葉失って立ち竦んだ。

「 ・・・あ、男っ!ユリウスは?!」

女が我に返り、赤黒く染まった床の生臭い血糊に滑らないよう
気をつけながら、ハイヒールでかつかつと入る―人影を探した。

「ここだよ。」

痛みに襲われ続けて意識定かでないまま一瞬に相手の肉刻むトーフを使ったギーガがやっと立ち上がって隅の闇からゆっくり現れた。

「こっ、来ないで!」

女はギーガを目にするなり怯んだ。

「あはっは...さっきまでの勢いはどうした?」

ギーガは来るなと言われたので素直に立ち止まった。

「こ これは、あなたが?」

「どうやって?って聞きたい?あははは。は...は」

「 ...く...狂ってる...。」

「俺は言った。カーヤとお前は殺さない」

「 ...え ええ」

「今すぐここを出ろ。建物ごと5分後に爆発するよう
 肉片に仕込んだ。どの肉片か...俺もわかんないしい」

ギーガは言って笑ったが、そこにあったテーブルの縁に手を付いて体を支えていた手が血糊で滑ってふらついた。

その隙を縫って女はギーガに近づいた。

ギーガの腹をナイフで刺し、心臓に向かって上方に切り上げた。

「あ......ぅぐっ」

「あなた死んだ方がいいっ!!」

ゆっくりとその場に倒れこんで蹲るギーガに浴びせて一瞥
して―女は呆然としているカーヤを引っ張って走り去った。

く...畜生うう、バカ女!...イワスっ!

それは声にならない―ギーガは床に倒れた。

サジせず爆発の中に居ようと思っていたが、内臓までばらばらになったらなんか嫌だ。と思い直した。

ギーガは最後の力を振り絞ってサジした。






ギーガは船に戻るつもりだった。

なのにサジした先はカーヤの屋敷から外に出ただけだった。

「え―っ?!」

ギーガも驚いたが、船で見ていたクルー皆も驚いた。

「船長!何やってんだっ!今行く!」

クルーにギーガは咄嗟、来るなッ!と言った。

何故?!と言う問もなく答えは瞬時に明らかになった。
人が来た―人の乗った車がギーガの間近まで来ていた。

車は血塗れのギーガの真横に止まって直ぐ―運転していた男が出てきてギーガに寄り、大丈夫ですか?!と言った。

大量に血の流れて肉片剥げ落ちたギーガを背負おうとする。

ギーガは目を疑った―やや暗くなり掛けた黄昏の中に見えたその彼はサギロン街拡大工事現場で見た男。

「何だ?船長はあの男と知り合い?」

ブリッジでラピスがサファイアに訊いた。

その場に居たクルー全員がサファイアを見た。

サファイアは注目浴びて―面倒臭いから後で言う。と言った。

その男が誰であろうと居合わせた人の善意を断る時間はない―
ギーガは担がれるままその男ラドミールの車に乗って叫んだ。

「急げっ!この家は爆発する!!」

ラドミールは突然叫んだギーガに驚いてスピード出して走らせた。しかし、ハンドルを握る手はこの状況に怯み滑る。

助手席から手を伸ばしてギーガが力でハンドルを抑えた。

「ぶらすな―ッ!前を見ろっ!」

しかし、血糊のついた手はラドミールの手から滑り落ちる。

1分経たないうちに走らせる車の背後で大爆発が起こった。

車は後ろから大きな爆風を受けてアクセルなしにスピード煽られ揺れて―吹っ飛んだ。






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