【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【68】大天使様

2009-12-04 | 4-0 KEITH




 KEITH【68】 


「ナールのパターンはそれイッコ。だから俺はナールのお前に質問
 しなくとも解る。俺は英雄宗教の中に生きていないからな、当然
 5つも追っていない。お前は今まで、ずっとナール社会に生きて
 5つを追わない人間を見たことあるか?ないだろう?だから本当
 はお前は俺に質問が多いはずだ。尤も俺はお前と組んだ俺の責任
 でお前をココに降ろしたから、お前から質問なくても喋り捲って
 流し込む。お前がザルで受け取らなくても だ」

...そういうことか。

「受け取る。コミットする。しかし今まではそれ以上は聴くなと」

「流すのも時期がある。それに聴くなと言われていたのはここに
 来る前、皆に、だろ?シゴトを任せるからには必需だから流す」

ユリウスは俺に肯くように笑いかけた。

真面目に話していたかと見えていたのに、ユリウスは、今は包丁を仕舞ったフィナの肩を抱いた。

フィナはユリウスに慣れているのか無視して人参を洗い続けてる。

「なあ?こうやってフィナは俺を手に入れるのが目的だ
 だから、危険なことをして、俺の気を惹こうだなんて」

嬉しそうにフィナに身を寄せて言うユリウスをフィナはあからさまに無視して俺に向いた。

「旦那様?ユリウス様は誰にでもそう仰いますから、お陰で
 勘違いする被害者増える一方。旦那様がユリウス様を制し」

「勘違い?...あはは、じゃあ、フィナも?」

「私が?!まさか?こんな軽薄な方など!それにユリウス様
 にはそれは長いこと叶わぬ恋の想い人がいらっしゃいます」

「黙れっ、それは言わないとっ!」

...え?...叶わぬ?

ユリウスは慌ててフィナの口を塞いだが、今更遅い。

フィナは素早くユリウスの手を剥いだ。

「ええ!でも、旦那様にはお伝えしておかないと!」

「そう、フィナ、ユリウスは隠し事がいっぱい?」

頭を抱え込んで怯んだユリウスが可笑しくてユリウスに笑った。

ユリウスが俺に何かを言おうとしたが、フィナが遮った。

「ある日、大天使様が現れたんです!」

「え...天使...様?」

「そうなんです。びっくりでしょう?でも、本当に!」

ユリウスを見遣ったが、敢て俺を避けているのか、気拙そうな顔をしたまま天井を向いていた。

最早降参したようなユリウスが可愛く見えて可笑しい。

「ユリウス様と同じ綺麗な巻毛の金髪の濃い青の大きな瞳でとても
 美しい顔をした若い大天使様...ここに来たばかりで畑に出ていた
 私の目の前に、ふっと、突然現れて、」

「 ...本当に?」

誰のことなんだろう?

クルーの誰かなのか?

「ユリウス様が暴走しないよう、お前に鍵を授けようと仰って」

暴走...あはは、確かに、そうかも。

ユリウスもそれを知らなかったのか、俺と同じように驚いたような顔をしてフィナを凝視した。

「鍵って?」

「そのふたつのことです。さっきの血のことと叶わぬ恋のこと
 それをこの農場の主になった人に伝えよ。と、おっしゃって」

「そう...そうか。ありがとう。」

「これで大丈夫ですね?ユリウス様の被害者が増えませんよう!」

「ひどい話だなあ、」

ユリウスが情けない顔をして挿んで来た。

「ひどいのはユリウス様でしょう?」

「 ...だってフィナ、愛してるのに?」

「あはは!ユリウス、フィナにそんなこと言ったって。それで天使
 は誰?ユリウスの隠しておきたい弱点を知っているって...天使も
 被害者?恨まれているとか?それで想い人は誰なの?」

ユリウスはフィナをちらりと見遣り、更に気拙さ倍に口を噤んだ。

「旦那様、その方のお名前を口にしたらユリウス様は途端に
 萎んで寝込まれるそうです。うふふ、魔法の言葉ですね?」

あはは...若い子は怖いもの知らずで強いなあ。

それが本当だとしたらユリウスの心痛は計り知れない。

ユリウスのことが少し可哀想にも思えて来た。

これ以上は...本当に軽々しく訊けない気がした。






KEITHもくじ KEITH【69】につづく。





コメント   この記事についてブログを書く
« KEITH【67】俺に言わせれば5毒 | トップ | KEITH【69】アランとサファイア »

コメントを投稿