【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【83】夜会のお誘い

2009-12-05 | 4-0 KEITH




 KEITH【83】 


屋敷近くに戻ってきた頃、時計を見れば夕刻を示していた。

馬に乗っていれば風を浴びて気持ち良かったが、馬から降りたら汗びっしょりになっていて気持ち良くない。

自分より馬が先。

馬房の馬用屋外シャワー室で馬を洗って汗を流し、蹄鉄の中に詰まった土を掻出して鬣も体毛全てをブラシ。

「キース」

タロウの手入れを終えたのか、ユリウスが寄って来た。

「バタークラウンは蹴癖はないが、お前が自分の主とわかっても
 そいつは乗り手が素人のうちは後ろを許さない。気をつけろ?」

「 ...蹄を触る前に言ってくれないか?!」

「忘れていた。しかし、尻を触らせてくれるよう毎日に尻に
 近づけ。どれくらいお前に懐いたかそいつが教えてくれる」

「尻か...バックは闇雲に怖いんだったな、動物は」

「俺も怖い。尻は男の尊厳。最後の砦」

「 ...そうなのか?...そういうこと...か」

「何だよ、お前も怖がったくせに」

俺はユリウスの顔が見れなくて馬の葦毛に向いた。

「 ...言うなよ、俺が悪かった」

...ったく突然一体何の話をしやがる。

ただでさえたまに見せつけられるユリウスの色香に俺は自分で自分を疑うし、自分が何を感じたのか自分が誰なのかそんな何もかもが突然消えて混乱しそうになる...って言うのに。

他はいい、だが、その、ふと感じれば妖艶とも見える色気、それはユリウスの無意識だろうが―俺を振り回すなっ。

あ...そうか、もう随分やってない、そのせいだ。

腹が減りすぎて石までパンに見える...それだな。

「 ・・・何だよ、怒んなよ」

「いやあ?怒ってないが、なあ、ユリウス」

俺は馬を触る手を休めてユリウスに向き直った。

「え...何だ?」

「ミ・ロアでも女の元に連れてってくれるとか。俺は?」

「何だ?ルナルーに惚れたか?それでそんな突然、」

「ルナルーは関係ない、俺はどれだけ拘束されて日干しだ?
 刑務所監禁なら諦めも付くが、こんな状態はな?ハンパだ」

「そうか、丁度良かった」

「丁度いい?」

「今夜リズに行く、お前の気が乗らなきゃ具合悪いと思ってた」

「今夜?ヘリは?」

「当然ヘリ。お前の操縦で」

「ちょっ、待てよ、」

「部屋で説明する、着替なきゃなんないし、先にそれ終れ」

ああ、わかってる...抵抗なんか出来やしない。

俺はバタークラウンのブラシに戻って訊いた。

「 ...しながら聞く、どういうことだ?」

「昨日、アレキサンドルが言ったろ?このシゴトの幹部 に当たる
 『クワロフス』メンバーにお前を紹介。羊を引き取りに来るシマ
 の連中、山管理してるシマ、羊を仕入れるシマ、芥子加工のシマ
 仕込むシマ...など等。アレキサンドルの腹心幹部10人から直下で
 お前に繋がるのが30ほど」

「 ...それ」

「アレキサンドルの趣向で月一の夜会。黒タイ・タキシードでなく
 白タイ・燕尾服。招待客はロマ市の事業家や政治家、地球で言う
 ところの高納税者サ・ナール、一般にVIPってところか?中には
 アレキサンドルは『クワロフス』と知らず、レジャー系実業家と
 思ってるのもいるから『クワロフス』の名は禁句」

「 ...大袈裟な、」

「彼はそういうことが大好きだ。特に華美宝飾貴族風情好き。何が
 嬉しいのかいい趣味だ。あ、それにお前は今夜の 主役のひとり
 だから、目立ち給え」

「えっ?!...主役が自分で慣れないヘリ操縦
 挙句、ふらついて会場に出て行くのかよ?」

「はは、俺がいるじゃないか、何でも慣れ だ。毎月恒例で派手な
 パーティーをしないと彼らは親睦が保てないらしい。の序だから
 そう気を張らなくてもいい」

「それで、気が乗るっていうのはその世界お決まり
 の賄賂...で、女ってことか?それでハニトラとか」






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