【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【117】ロマ総合病院

2010-05-06 | 4-1 ALLION




 ALLION【117】 


イーギンは入院病棟の廊下をゼルダと並んで歩いた。

巨大病院のためか、外来棟でもないのに、朝の時間から見舞い人も廊下や詰所近くのロビーに多く目にすればそこに集い来る入院患者の往来も多い。

男女看護士、医師と擦れ違っては皆ゼルダに挨拶をして行く。

「お前は1年で偉い先生?若造医師なら扱使われるのがフツウ」

「外見若造だからそれはそうだ。熟練看護士には顎で使われる」

「でも、あいつらの態度は院長にでも出会ったかのようだが」

「マフィアの患者せい。あいつら暴挙したら俺が抑え込むから
 麻酔銃撃ったりパイプ椅子で殴ったり。檻付病室に閉じ込め」

「え゛ほんとか?」

「それで、致命傷なし訴訟にもならないから
 病院側では嬉しいけど不思議ってことだろ」

「お前、偉いなあ、いつからそんな働き者に?」

「オンナたちとだらだら寝ていたい...偉いよ俺。さて、ここだ」

ゼルダは一室の前で立ち止まり、近くを歩いていたナースを呼び止めて何かを話した後、イーギンに向いた。

「そこの長椅子に座って少しここで待ってろ」

ゼルダはその部屋から少し離れた壁に沿う長椅子を指して言うと、ナースと連れ立って入院室の中に入って行った。

何だ、付いて来いだの待ってろだの...。

イーギンは温和しく―言われた長椅子に座って待った。

手入れの行き届いた清潔な白壁に木色の腰壁、白い扉、擦りガラスの扉窓、横に長く続く木製の手摺り、やや桃色かかった艶ある床、そんな綺麗な空間に座ってみても人の往来は騒がしいほどに多い。

病院の廊下...ソウシが生まれて以来だな。

ふと顔を上げると廊下の遠くに外出用の綺麗な服を着て化粧をしてこっちに歩いてくるリツコがイーギンの目に入った。



何...?

リツコは真っ直ぐ前を向いていて―長椅子が沢山あって人が多く座っていたせいか誰が座っているかなど見ていない。

自分の前をリツコが通り過ぎる―イーギンが声を掛けた。

イーギンは穏やかだったが、リツコはその一瞬、凍り付いた。

え...これって...疚しいの...?

「あっ、タイミング悪いなあ、いや、いいのかな」

部屋から出てきたゼルダがイーギンとリツコに言った。

リツコはゼルダに、先生!?と言った。

ゼルダが見せたいものとは。

「ご主人には僕から説明中です。安心して中に。さあ」

ゼルダはイーギンの目前でリツコの肩を抱き寄せて言った。

リツコは気にしてイーギンを見たが、イーギンと目が合うと複雑な顔をして―ゼルダが出てきた部屋に入って行った。

そしてゼルダは苦笑しながらイーギンの横に座って来た。

「リツコが出て来るまで待とう。つか、説明する」

「ゼルダ、お前...。」

「お前が知らなかったことに俺がびっくりだ。夕べのお前のラギは
 リツコの件かと思った...俺がここにいると言ったのに反応なしだ
 リツコはここに通ってるのにお前は俺がここにいることを知らな
 かった。あの患者は俺が担当してるんだぞ」

「あの患者?...リツコのことはサファイアに任せていた
 中に誰が?どうして入院?リツコはいつからここに」

「ログは見た。惣菜や。今は浮気じゃない、事情が違う。リツコは
 お前に何も言っていない、サファイアにも何も言っていない。が
 俺には...まあ、担当医のせいか」

「リツコが心の内を話したのか?俺のことも?」

「お前だから相手のことは掌握済みだと思ってた。ところが
 リツコの話じゃ違うから俺ほんっっっとにお前にびっくり」

「そう言うのは...何を知ってる?いや その前に何で入院?」

「え、そっちから聞く?いいけど。2年ほど前から数回 自殺
 未遂で入院。癖だな、そのせいで心臓弱ってどの道、心不全」

「え...死ぬってことか?」

「そんな断言出来るか」

「しただろ。今」

「本人に生きる気がない。きついことを言うなら...親に甘えられな
 かった分人に甘えるから自分都合悪いことは世のせい人のせい」

「新欝か... 」

「ああ。母親もだが...まあ、リツコに だな」

「お前が知ってるリツコとそいつの関係は?それにご主人って」






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