【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

EMA【274】自然溶解

2009-09-13 | 3-2 EMA



 EMA【274】 


始終にこにこのルーラの横にいて、そんな幸せのお裾分けを頂いたようにエマも心浮いて―楽しい1日だった。

ルーラと出掛けた休憩は勿論、帰るときひとりで社内を歩いていても会社全体お祝いの日のような楽しく幸せな空気。

そして家に帰って夕食の仕上げをしていると定刻帰宅のように8時にイーギンが帰って来た。

エマが迎えてダイニングに入って直ぐイーギンはテーブルに置いてあった小箱4つを目にして、あ。と言った。

スーに貰った包装のサイズ違いチョコレートとわかる小箱ふたつと『リーベ・フロッス』のリボンの掛けられた小箱がふたつ。

エマは慌てて、チョコふたつを取って自室に持って行こうとして、誰から?とイーギンに訊かれた。

エマは、置いて来ます待って下さい。と言って消えて行った。

直ぐ戻ってくるのにヘンな疑惑を持ってしまう―が、直ぐ、ルーラとジュンです。と言いながらエマが現れた。

「え...と正しくはルーラがお詫びにってあのチョコを下さって
 『リーベ・フロッス』の細長い箱はレオルドのお礼だそうで
 ジュンが資料室に来てお世話になったとチョコとこれを」

ふうん...。と顔色変えず不満そうな声色で言いながらイーギンは、開けてないの?と言った。

エマが、あ、今開けます。と言って開けるとレオルドからは上品なデザインのびっくりするほど高価なダイヤのネックレス、ジュンからは可愛いテディベアデザインのダイヤのスカーフピン。

あのチョコは流行ってるんですか?と訊いたエマにイーギンは更に不機嫌になったのか、知らない。と無色トーンで応えた。

エマは、イーギン。と言ってくすっと笑った。

「レオルドもジュンも奮発か...高いな...だから気に食わない。何で
 たかがお礼にここまでする。譲ってレオルドは地位的に感謝の意
 で解るとして...ジュンのこれは過ぎる気がする」

可愛らしいテディベアを手にとって眺めるイーギンが何だか可笑しくて可愛くて―エマは嬉しくなった。

「いや、俺はエマに何も贈ってないからな...腹立つのか」

「イーギンは私が装飾しないことをご存知です」

「しなくても今から必要だろ。バイトだってスーツだ
 俺が買って上げるからこんなものは仕舞ってしまえ」

そこまで言ったイーギンにエマは堪え切れず声にして笑った。

「そう言われるならそうしますけどそのために命宿った存在は
 人に良くも悪くも否定の存在ではありません...ご存知かと、」

「う...俺の心が広くなってからね」

「うふふ。はい。」






イーギンはいつものように自室に入って着替てクリア機を浴びてから髪をさらさらにして出て来た。

「そうだ、今日は1日中」

「そのお話の前にセラムに会いました」

「! ...え?!そうだ...カメラを持ってたひとりが彼だった
 何か言われたか?会ったって...俺が社長だってバレてた?」

「ふふ。イーギンも正体隠してらっしゃる。同罪ですね」

「あっう...や、それで?」

エマからセラムの会話と番号を聴いて―イーギンは考え込んだ。

「そう会うこともないでしょうから...考え込む...ですか?」

「勝手に俺を社員と思ったのはセラム。俺が調子に乗って弄ったら
 引き下がれなくなってしまったと言うだけで...あれこれ考えるん
 じゃなくて自然に任せた方がいいかな...。」

「そうですね。今までもいつも自然に流れて来ました。これからも
 したいことはしてそれが違う方角へ進むなら誰かが止めてくれる
 と安心しています」

「エマ...うん...何も無理強いはしない」






翌日翌週翌々週、毎日のようにランチや休憩だけでは収まりきれず勤務中もルーラにお祝いに訪れる社員がいて―暫く資料室はお祝いの温かい雰囲気が続いた。

最近は、ルーラに依る若い社員だけでなく若い頃にルーラに世話になって今は顔も合わせることもなくなっていたルーラと同期、中年中堅社員や上層部までが、紳士的に、そして、ルーラには頭が上がらない女王様 のように傅いてお祝いを持って祝福に来る。

副社長夫人の結婚、だから結婚式をしないと宣言されればこれだけお祝いをされて当然、足りないくらいなのかもしれない。

しかしそれ以前にルーラの結婚相手が誰だったとしても、まだ仕事も覚束無ず『リーベ・フロッス』に入って出世臨むエリートの少し間の抜けた若い社員の世話を献身的にしてきたルーラの温かく強い人柄だからこんなステキな個人的な祝福が沢山続く。

思いながらルーラの横に常にいたエマは座位低くしたり離れたりして自分を目立たないようにして微笑ましく見ていた。






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