EMA【300】
出会った当時、クラウディアは丸腰ですっぴん。
何ひとつ人に見せる武器を持たない女性だった。
人と人の間にコレが出来ます武器なんか...絵なんかいらない。
イーギンとクラウディアは一緒に居て...クラウディアはイーギンじゃなくて絵のことばかり考えて悩んでた。
どう悩んだって才能ないんだから本当のこと言われて自覚して気持ちいい自分を開いていくのと才能ないって誰も教えてくれないままそれこそ絵も芸術もわからない人たちに無責任に褒められること真に受けて才能あるって騙されて才能のない自覚なく人生全部、才能ない絵で煩悶するより、煩悶の選択で起こる不安や苛立や嗚咽ある自分に酔うより、何も持ってないことに自信を持つクラウディア...イーギンは自分を見て欲しかった。
「 ...ラウル」
「何故それがわからなかった。こんな生活...イーギンと居ればこう
して生活のためにしたくもない仕事で働くことなく自由に好きな
だけ、1日中1年中、絵が描けたはずだ」
「 ...え」
「画家?どうしてそんな世間の刷り込みでしかないそんなカタチに
拘る?イーギンは確かに君より『リーベ・フロッス』を選んだが
結果を出した。しかし君はどうだ?これが証拠だ」
「 ...。」
「何?プライド?こんな生活がカッコイイか?男の世話に
なったら嫌か?そうは言っても、実際は貧困困苦してる」
「 ...どうしろって言うのよ」
「こんな、自分でも不本意であろうわからない世界に身を置いてる
から教えてやっただけだ。否定しているわけじゃない」
「 ...。」
「ただ俺がイーギンが何を言おうと君の今までの生き方が自分自身
で間違いなかったと思うなら全うすればいい。しかし想い描いた
ものと違うと感じるなら軌道修正ありだろってこと」
「 ...。」
「今までそのやり方で納得いってない
それなら、今後も決して成功はない」
「 ...。」
「あの頃、俺たちはバイトだったがイーギンの底知れない大金持つ
羽振好さは知っていたはずだ。イーギンはクラウディアに何でも
差し出してたよな?金で関係を繋いでいたわけではない」
「 ...うん」
「結局、明日も知れないアートだ何だやりたがる連中は貧苦暮らし
をカッコイイとして腹の底じゃ虚栄名声脚光豪華豪奢の巨万の富
を願っている。認められたい見られたい承認欲求それが成らない
と嘆き酔い痴る。世間をわかった風に睥睨欺瞞に陥り自分酔い」
「 ...。」
「そんな作品、欺瞞陶酔同士の売買、おかしくない?困窮しないで
血も汗も一滴も滲ませない涼しい作品を作ってよくないか?貧苦
煩悶なかったら作品にならないのか。腹の底からそんなもの好き
と思ってるとは思えない。俺はクラウディアを知ってるからな」
「 ...。」
「クラウディアは独り立ちで画家目指した、だからイーギンの援助
拒んだんだろ?なのにどうしてノラに引っ付いている?絵の才能
はないと言って更に言うが、クラウディアはノラのような自分売
の商才もない。営業力も交渉力も。お金を稼ぐ才もない。何故?
未だ己を観て詰めてないからだ」
「 ...え」
「これじゃあイーギンと別れた意味ねえだろ。あれから8年経って
今こんなんだから思う言う。自分から捨ておいてイーギンを引き
摺ってる。何も変わってないのが証拠。イーギンのいた世界から
離れて8年も経つなら新しい君に変わってるはず。アーティスト
だと自称するなら俺が何言ってるのか判るよな?」
「 ...。」
「秀でた洞察者のことをアーティストと言う。無意識にたあだ快楽
だけしてノーマルに生きている大衆が怖がって踏み入れることの
出来ない地に何を衒うでもなく簡単に入って行くことの出来る者
をアーティストと言う。今のクラウディアはどうだ?省みろ」
「 ...。」
「社長夫人になるなんて嫌だ!と啖呵切ったなら全うしろ
それアタマにキタんだよ俺は。クラウディアの話聴いて」
「 ...。」
「 ...そんなこと話すつもりで会いに来たんじゃないが」
「 ...。」
「イーギンと会え。笑って」
「 ...。」
「ヨリを戻せじゃない。イーギンは今更困る。だから和解」
「 ...ラウル」
「『リーベ・フロッス』からノラに依頼起こったらでいい。或いは
ノラから離れるんなら、そのまま消えろ。二度とイーギンの前に
現れるな。イーギンには甘えない と言ってイーギンを詰った分
直ぐに消えて自分の実行に向かえ」
「ラウル... 」
「や、本当は...和解してから消える?」
クラウディアはくすと笑った。
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