【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【116】ゼルダの息継ぎ

2010-05-06 | 4-1 ALLION




 ALLION【116】 


ゼルダが詰所奥から出てきたが、今度は壮年のナースに捕まった―のでイーギンは待った。

ゼルダやナースたちの様子が全て見える。

ナースがばたばたと忙しく動き回る中にひとり違和感のセルダ。

黒髪を短くして頗る爽やかな男、白衣を纏っていてもイーギンには医者には見えない、相変わらずの貴公子然たる好青年。

ゼルダは解放されたが、他の医者やナースに呼び止められるを掻い潜って詰所からやっと外に出て―寄って来た。

「指定時間過ぎた」

「すまん、待たせた。ついて来い」






ゼルダは詰所並びにある一室にイーギンを入れた。

白一色、本棚と机がひとつと応接ソファのある10畳ほどの部屋。

「俺の部屋。基本は外科医勤務だからな」

ゼルダは珈琲をふたつのカップに淹れてひとつをイーギンに渡し、ソファに促した。

「入院病棟に医者の部屋?」

「緊急なかったら入院患者の緊急用常備医者」

「休みゼロの酷使医者?学生みたいな」

「だよ、だから抜けられない。夕べもこの部屋に居た」

「なら、ロマに家は」

「ねえよ、ほぼここに寝る。でも直ぐに呼ばれる」

「いつ寝んだ」

「仮眠だ、ずっと」

「俺たちはキリン並でいいが、他の医者は?」

「基本交代、救急外科医続かない、しかも、なあ?ロマなんて緊急
 患者の80%はマフィア絡みだ?『クワロフス』絡みのホ・ナール
 殺傷事件起これば救急大忙殺。3日に1度。それなくても1時間
 にひとり運ばれてこない方が珍しい」

「大袈裟な」

「本当だ、死体込みだが」

「お前も大変だ。今は?」

「今はオフ、てか休日。だが丸1日なんて休ませて貰えないから
 病院内待機オフにしてる。外の空気吸いに行っても直ぐ呼出し」

「そういう患者ばかり受け持ってるのか」

「違う、マフィアに関わる患者だからだ。絶対殺すなと脅し入って
 裏金が入る。瀕死助けたら闇に葬れ命令。それ総括してナースに
 指示してんの俺だから。病院内での組抗争もあれば、監視もだ」

「お前ひとりで?マフィア関わるんだったら、シータとか」

「医者クルーは2人入ってる、しかし采配指揮は俺。そういう
 ので、美味しいと思わせる情報垂れる院長との掛け合いも俺」

「本当に今は船長のメイン・パシリなんだなあ」

「左近か右近とか言ってくれないかな?まあ意味ないが。はは
 缶詰だから会えて嬉しい。やっとフツウに話が出来る空気だ」

「そういうことか...いつから?ここに、」

「1年ほど」

「1年...ロマにいてアレキサンドルの夜会に顔を
 出さなかったのは、こう言うことか...船長は?」

「最近は喪...来ない。用の殆どは船長室に呼び出しだ。俺をここに
 置去りしておきながら、そう、その夜会にも来いとか言いやがる
 行けるわけねえだろっつ。お前もエヴァで梃子摺ってるようだ」

「 ...お前並みにな、どこまで知ってる?」

「パイから送られてくる分は。で、コレ書いたよ。あの喪の
 期間に帰郷してマリアで事故死...序にライラ情報は全削除」

ゼルダは机に回って一枚の紙を取り出して―イーギンに渡した。

「ありがとう。これ、マリアの医者の診断書?」

「俺の住所、マリアのままだ。都合よかった」

「まあ、そこまでは追求しないだろ。解体会社だし」

「そうだな。で、イーギンに見せたいものがあるんたが」

ゼルダは時計を見て9時30分が過ぎたのを確認して―笑った。

「何だよそれ...時間関係あんの?」

「来い」






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