【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

ALLION【85】うそっこ展開

2010-05-05 | 4-1 ALLION




 ALLION【85】 


「彼らからイーギンって聴こえたから僕から声を掛けた」

「え」

「彼らは誰?イーギンが会社の同僚って言うのも嘘だよね?」

カレフも興味満面にエヴァに見入っていた。

何でちらっと一言っただけのイーギンの名...覚えてんの。

「君はそんな格好をしているけどどこかの令嬢だ?ヴァイオリンも
 カレフ曰くすばらしいわけだし、才能あって尚その年でそこまで
 になるには相当大金を掛けているはず」

「 ...むぅ」

「失踪したご令嬢を捕まえに来た兵隊派遣?」

「そんなドラマみたいな!笑うわ?私はご覧の通りっ」

「じゃあ、彼らは誰?」

「まあだそんなことを!あのね、じゃあ言うわ?借金は事実!
 母が難病でお金が必要だったの。もう死んでしまったけど」

ふたりの紳士は途端、言葉と顔色を失った。

しかし、苦し紛れに出た嘘に、自分でもイケた!と思った。

少しだけ気の毒な気はしたが。

しかし、怯んでいられない。続けなければ!

「どうしてもヴァイオリンのせいでそう思いたいのでしょう
 けど借金返済は本当。だから食事行く時間あったらバイト」

「ライラ、そういう事情を背負っていたのか?だったらコンサート
 やオケ・デビューすればいい!大額でもそんな額なんて直ぐだ」

カレフがこれ幸いのように歓喜の声で言った。

しまった!と思ったが、エヴァは怯まない。

「先生、言ってるでしょう?私は人前では全然弾けなくなるの!」

「わかったよ、だったら、俺が出そう」

はあっ...?!

言ったアリオンにエヴァは激昂した。

「ばかじゃないのっ!?そういうの馬鹿って言うのよ?これが詐欺
 だったらどう?!やめてよ、そんなことされたら一生アリオンに
 頭上げられないわ。そういうのいやなのっ!」

「あ...や、済まない...そんなつもりじゃ...しかし、」

「お願い。カレフ、アリオン、私の話はいいの。ヴァイオリン
 だけにして?ヴァイオリンは大切にしたいからそうしたいの」

自分たちにはわからない悲しみを背負っているであろうエヴァに、それ以上を何も返せなかった。

ナール社会では、人には触られたくない部分もある とするだけで何とでも逃げることが出来る。

本当に、これ以上、関わられるのは困る。

エヴァは、意地でもヴァイオリン以外ではこのふたりを自分に立ち入らせる気はない。

いっそ縁を切って船に戻ってしまえば、頭抱えることはないのに―思いつかない。

それにしても...借金で私を追ってる なんて...。

あいつら...私を追う正当によくそんな嘘考えついたわね。

そう言えば、あのとき、イーギンはアリオンの正体を知っていると言ってそれを餌に私を釣ろうとした。

アリオンが著名人物だから、私がそういう人間は避けていたのを知っているから、気を付けて?と言ってくれようとしたのかしら。

それとも...ギーガとヴァイオリン、アリオンとヴァイオリン、と私の接点に勝手に含み笑いでもしてた...?

いえ、イーギンにとって音楽とかお菓子とかそんなものはどうでもいいからヴァイオリンなんか気にもしてない。

頭の中を色々もやもやの毒煙が立ち込めるが、あのとき、イーギンに聴いておけばよかった、餌に釣られとけばよかった、ギーガに会ったんだし...。と複雑心境となってふたりのヴァイオリニストを前にエヴァは後悔していた。

しかし、後悔してもはじまらない。

自分の生活に入って来れないようシャッターは下ろしたわ。

だから、このまま前進すればいいのよ。

安心に辿り着いてエヴァは意気揚々ヴァイオリンの話に移った。

エヴァを傷つけてしまったかもしれないと気遣うふたりは温和しくエヴァのペースで進む話に付き合った。

エヴァにヴァイオリンを披露してくれと言えないまま。

やがて、カレフが、あ、そろそろ時間。とアリオンに言った。

「あ...そうよ?アリオンは予定あるのよね」

エヴァはアリオンに付き合う気なんか毛頭なく―露骨歓喜。

「急遽予定だ。ディノウヴォウに居るなら是非と言われて
 VIPが集まる。もう始まっているけどね、僕は後番だし」

「そう、いってらっしゃい。頑張って」






ALLIONもくじ ALLION【86】につづく。





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