EMA【289】
果たして作品の出来栄えは高評価出来るとしてもこの地を這うような場末の臭いさえする擦れた彼女の風貌から『リーベ・フロッス』に適う品性高い作品を上げられるのか。
カットワークは鮮烈を魅せるか?エッジの0.001まで拘れるか?
『リーベ・フロッス』第一は品と艶と雅と甘美、そして官能美。
性に関わらず誰もが夢みる世界の現実証明。
決して生活臭、血や汗、苦渋内包した感覚や感情に起因して
生まれる作品であってはならない。そんなものには縁はない。
況してやこちらから作品を是非にと願った取引でない。
ゲランは?...ゲランこそ幼少から『リーベ・フロッス』一族に育ち指針を知って何故?
ゲランが間違うはずはないが...彼女の第一印象を凌ぐほどその作品は彼女のイメージとは裏腹に閃光たる何かを明確に?
ノラは自分の力量に自信ある威勢宜しく、願ってもない『リーベ・フロッス』の仕事を喉から手が出んとするほど欲しがって...地位か箔かわからないが、得るため意欲的。
これはフェアな商談、貴方は私の芸術の腕を借りたいでしょ?私も『リーベ・フロッス』の仕事をした威厳と信用と地位と栄誉が欲しい、商談成立ね?を魅惑的な誘い方で話してくる。
しかし、自分が受け入れられると決まってる の自信は見えるが、空回りしているようにも見える。それは、自分と社長の肩書にノラ自身が圧されて肩書上下判定?意気揚々として自身劣等感の中?
この女は...俺を人や徳や肩書ではなくその辺の男を誘う扱いで接している...そうしようと頑張っている。
人と人の感情で接点を見い出そうとしてるようだが...。
俺は作品以外は用はない...しかし、彼女の持参した立体作品や空間作品のラフや写真を見せて貰っても...納得の行かない。
「そうですね...これでは理解に遠いので実物
或いは、動画ログでも拝見させて頂きたい」
ゲランを立てる意味でも判断材料が揃わない意味でも―丁寧に。
「なら、社長、私のアトリエにいらっしゃいます?」
更に足を運べと?...や、相手が違えば、そう思わないか。
「では、今からどうですか?」
「申し訳ございません」
イーギンの後ろに控えていたジュンが辛辣な表情で挿んだ。
「社長はこれより予定が入っております」
「そう...では、いついらっしゃいます?」
「近いうちに連絡致します」
ジュンが言った。
「あら、ふふ。有能な秘書ですね?」
ノーラは得意げに笑った。
「では、今日は失礼しますね。お会いできてよかったわ」
ノーラはイーギンと握手を交わして、ありがとうございました。とジュンとリウイにも言うと颯爽と応接室から出て行った。
妙な色香と澱んだ空気、馴染切れない違和感緊張感が止んだ。
イーギンはソファの背に凭れた。
ジュンがイーギンに、あの女性どうなんですか。と言った。
イーギンは身体を起こしてジュンに向いて―笑った。
「ああ、ジュン、ありがとう。助かった...しかし...疲れた」
横からリウイが、お察しします。と言ってくすくす笑う。
「動画ログがあるでしょうから何もわざわざご足労なくとも」
「ゲランの立場がな。結論は出す、そこまで意欲は見せないと
ベタでアナログ...ゲラン立てる誠意。彼女に惚れたわけじゃ
ない。穴なく取り組まないと女みたいに隙突ついて叩かれる」
「そうですが、余りいいイメージではありませんし。汚れた
服装で来るとか初対面であの口調、神経疑い畏れ入ります」
「あれは彼女たちのステータスだよ。単なる自己主張か」
「ステータス?」
「自信のある生き方している誇示。俺には空洞にしか見えんが
まあ否定するものではないが、『リーベ・フロッス』カラー
ではないから正直どうか遠慮願いたい界隈生体...ってとこか」
「そこです、」
「だから、だ。作品でそれ判明されるだろ。実際目にしなければ
何も言えない。断るにも相手納得させないと...ああいう人種は
カラー違うと言っても通じない。否定するは容易いが向こうは
自分に対する偏見としか取らない」
「偏見?」
「あの身形が物語る、元々気持ち卑屈なんだよ。こちらは差別
視ないのに自分の方から差別されるんじゃないかと構えてる」
「 ...確かに。そうですね」
「だからと言って作品がそうだとは限らない」
「え...そうなんですか?」
「 ...わからんが。だから実際見て見ないと」
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