【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【27】耐え難い認知の放棄

2009-12-03 | 4-0 KEITH




 KEITH【27】 


俺は屈んで床に落ちたジャガイモを拾って野菜樽の中に入れた。

「毎晩、ここに?それとも何かあって、」

「バレたからもう来ない」

「え」

「お前が気に掛けてくれたら俺が迷惑だ」

その言葉にはカチンと来た。

「何?!」

彼は俺に向いて睥睨するような視線でくすくすと笑った。

「なあ?お前たちは皆そうだ。俺が泣いていたとかひとりでいた
 とか何かあったかとか、そんなことを仕入れたところでそんな
 ひとつひとつ何をどうしてくれるというのだ?そんなことより
 自分に出来るシゴトをしていればいい」

クルーでここまで高飛車なヤツ...なんて初めて見た。

「 ...そうか。悪かった」

「え、怒ったのか?」

また、それだ...そう言えば済むのか?

よくよく思うが、こいつら人の会話にはっ...人の気持ちを逆なでしない配慮ある流暢な返し方ってもんがあるだろうがっ!

それとも、こいつらのコレはいつもわざとか?!

「クルーだからと言って野菜樽の中で寝ていいわけはない」

「わかったよ、そう怒るな」

俺はもうそいつの顔を見る気になれなかった。

逆に、入れ込み過ぎたか?...この一瞬で?

そんなはずはない...中でも特にイケスカナイだけだ。

俺は彼にそう言われながらも彼を見ず、じゃあな。と言ってさっさと部屋に戻った。






彼がどんな顔をしていたかなんて、どうでもいい。

どうでもいい...仲間がよく使う言葉だ。

ここにいると何もかもがこんな風にどうでもよくなる。

耐え難い認知の放棄...。

今、俺が思ったそれは自分がこれ以上傷つかないために自分自身に思い込ませる自己保身のための言葉と意識か?

...いや、違う、いや、そうか...どうしてそう思うのだ。

それにしても...こんなに怒る感情は久しぶりだ。

昔はこんな激昂する余裕さえなかったような気がする。

昔の方がずっと何事をもどうでもいいとしていたのか。

今の方が些細なことへの気持ちも大切にしている気がする。

何も標的もない空白の脳と心が...きちんと自分を呼び起こす。






翌日、俺は夕べの出来事などミスをして怒られた程度に脳内処理してシゴトに就いた。

楽しい話なら仲間に話したかもしれないが、別れ際の失態と気拙さからそれを掘り起こして思い出し、わざわざ話題にするなんて気になれなかった。

ゲームの翌日はいつもそうするようにゲームでの出来事をイライジャと話して聞かせ、そして、仲間の話を聞いて過ごした。

笑って過ごす仲間との食事と寡黙に過ごす単純作業に集中する時間の均衡は、今思えば、計算されているかのように1日気分がいい。

あっという間に充実の1日が終わり、直ぐに熟睡に入れる。






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