【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【25】じゃがいもの君

2009-12-03 | 4-0 KEITH




 KEITH【25】 


昼間履いていたものだが、あの扉を通ったら洗濯された状態...って俺も馴染んだものだ。

さっと取って直ぐに自分の部屋に戻るつもりだったが、樽棚の奥の方で光たちが集まって輝いているのが目に入った。

何で?...誰か...いるのか?

クルーが何か取りに来たのか―別に気にも止めず、そのまま扉に向かったが、遠くに見える光たちの動きはどこか違う。

気になる...何だ?...光たちが纏まっていない。

滅多にイッコでは光らないあいつらが個々ばらばらにまるで妖精が飛び交っているようにふわふわ大きく旋回、飛翔している。

これ以上、驚くことが...まだ残っているのか?

だとしても驚くこともしない...つもりだが、多少びびる。

異様は異様...いつもと違う。






近寄る気もなかったくせに―寄っていた。

誰がいるんだ?と思った瞬間に異様なものも視界に入った。

え?!...まさか.......?

信じたくはないが、一番奥一番下段の野菜樽の端から人の足...踝から先が見えた気がした。

気がした だけだ?―そう思いながら目を凝らした。

しかし...やはり人の足の先。

右足...樽の角からこっちに向いて突き出ている。

野菜の中に人が埋もれてる?!...生きているのか?

まさか材料にする死体とか?...んな訳はないよな?

...何だ!?誰だ!?

急く気持ちはあったが、一旦気持ちを静めて野菜樽に寄り、足の反対側の樽奥の方、顔であろう方を少し近寄って見遣った。

ゆっくり...気配を消して近寄った。

野菜樽はジャガイモの樽。

今またさあっと通った光がジャガイモに埋もれた中に光を差して―浴びて反射して、俺の目に映ったそれはまるで女性のような綺麗な顔と金色に光る絹糸のような長い髪。

それだけでも充分に驚いたのだが、その閉じられた目元から頬にかけて...濡れている?

泣いている...?

俺はまた少し寄って見詰めた。

言葉も失って見蕩れてしまうかのように。

しかし、俺の気配に気づいたのか、その瞳が開けられた。

アイスブルーの瞳がガラスのように光ってドキ...や、ぎくり。






「!? .......つ...あ...あ、すみません!」

驚いて思わず身を屈めた。

再びその人を見たとき、今までその人の周りに散って舞っていた光たちが寄り固まり、まるで後光のように彼を照らし出す。

彼の居た樽棚の空間だけでなく、俺の周りだけでなく、野菜倉庫の部屋中が日中のように突然ぱあっと明るくなった。

え...あ...寝ていたこのクルーが目を覚ましたから?






KEITHもくじ KEITH【26】につづく。





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