【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【69】アランとサファイア

2009-12-04 | 4-0 KEITH




 KEITH【69】 


「と言うよりフィナがユリウスの弱点だ?
 ここに、フィナがいてくれるのは心強い」

「いえ、私は大天使様のお言いつけどおりに」

そう言ったフィナの顔は照れているようにも見えた。

フィナは軽薄で甘く優しいユリウスよりその美しい天使の方に心行ってる...のか?

ユリウスはすっかり参ったように―笑っていた。

やがて、イオとジョージアがキッチンに入ってきた。

ユリウスとフィナと喋っていた...つまり、ベッドで寝ていなかった俺はまたジョージアに笑顔のないまま生真面目に労われた。

ユリウスが居たことでキツネの件に触れる必要なしと判断したのだろうか、それについては何も言わなかった。

ジョージアは俺に必要以外は喋らず、フィナとイオと3人で賑わってキッチンシゴトをはじめた。

また、料理人のふたりの中年男ロイクコウディンも入って来て―ユリウスは俺をキッチンから連れ出した。






「昼まで時間がある。ヘリに乗ろう」

キッチンの勝手口から朝日の眩しい空の下に出て鶏たちの横行を避けながら歩いて―ユリウスが言った。

「それが先か?他のシゴトは」

「出来ないことをマスターするのが先。農場を
 覚えるのはまだ後でいい。フレディがいるし」

「そう...それが順か。なあ、ユリウス、さっきの」

ユリウスは歩きながら鈍い顔をして振り向いた。

「何だよ、天使が誰かって?」

「あ...クルーか?それとも誰か、」

「俺の息子だ。...クルーだが」

「息子?!」

「テルモピュライの戦いの後に拾って育てた。だから息子」

「テルモピュライ?」

「紀元前480ペルシア戦争のひとつ。俺はスパルタのレオニダス王
 下に居た。スパルタ兵士は国の祭典のため300人しかなく、だが
 援軍合計5200。ペルシア軍は210万。当然のようにスパルタ兵は
 全員死亡。俺は残念ながら死ねない」

「 ...その戦火の中で?」

「俺が生き残ったらやばいだろ?他に生き残ったやつもいるんだが
 それはいいとして、俺は勿論不死部隊の妖術隊や決死隊に何度も
 殺された。戦死したことにして当てなく彷徨ってたらサファイア
 を拾った」

「 ...話が意味不明だが...サファイア?」

「お前なあ?未だに俺が不死だと信じてないだろ?」

「いや、信じるも何も...わかってるよ」

「この農場にアランをここに置くことにした。サファイアはそれが
 気に入らなくて怒った。サファイアはアランが俺の傍に居るのを
 嫌がる。でシゴトにも反抗するから干してやった...干物二度目」

「アラン?干す...?」

「アランはクルー。今は別件に行っているが後でお前の補佐に就く
 干すは勘当。いつまでもガタガタ文句垂れて攻めて来るから少し
 脅すつもりで俺の前に現れるなと言ったら、本当に船から出て」

「え...出て行った?降りたのか?!」

「さあ。連絡取ってない」

「いいのか?...やっぱり恨み?でも、フィナはそう無茶も」

「それ、サファイアが俺を懲らしめようと、フィナを選んでくれて
 助かった。あの子は裏表ないから。サファイアの誤算相成り。誰
 が何をしようと、天は俺の味方なのだ」

...はあ...そうなのか?本気か冗談か?

「あいつは農場主がアランだと思っている
 これで、アランには、あれは伝わらない」

「アランに伝わるのはやばいのか?」

「クルーは自己制御なんてしないからな
 包丁で刺されるなんて、御免だってっ」

「死なないのだからいいじゃないか」

「そういう問題じゃねえっ当たり前に痛いっ!」

「あ...ぷっ...そうだな、すまん。しかし、アランはそういう?」






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