【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

ZEN【239】先約と優先

2009-11-11 | 3-4 ZEN




 ZEN【239】


「それはそれでいい。だが、少し己の中を覗いてみれば、どうだ?
 何が見える?優先には利得が絡み、先約は利得の何もないものだ
 それは解るか?あ、ルナとアンバーで考えるから混乱か、しかし
 ルナが利得でアンバーに利得絡まないは合ってると思うが?」

「 ...そう。そうです...確かに。楽しい を利得と考えれば」

「そう。先約はただの先約だ、暇だったからいいよ。の約束。優先
 は己の意識が傾いて、行きたい!のあるもの。娑婆人は利得ある
 人を大切にして、利得のない人を蔑ろにする」

「 ...利得...はい」

「ルナとアンバーで例えるからコンガラがるか?
 ではないな。自分なりに例題を捜しているのか」

「 ...例えば...講義中にアンバーから着信あったのに出なくて講義
 の後にルナから着信があって出ようとしたら寸でで切れた。掛け
 直すのは、ルナが先で、アンバーはルナが終わった後。の解釈で
 いいのかな。俺に利のあるルナには丁寧に時間を取って掛け直し
 アンバーとは長く接触しても利がないとして5分しかない隙間で
 やっつけてしまう...や、そんな気はない。けどそういうことに」

「そういうことになるな。楽しいと思うこと自体
 己の利得。ではルナの方に先に見舞いに行くか」

「う―ん...今気づいた、そうじゃない。優先は先約のことだ。そこ
 に利得を介在させて考えては、それでは5毒追うと同じ、だから
 妻であるアンバーのところに先に行く」

「仮に、己の感情がルナに恋愛であったとしても?」

「恋愛?...関係ない。両方ともに気持ちやっつけはしない」

「そうか。ではアンバーのところに行け。交通事故だそうだ」

「なっ?! ―お父さまっ何をそんな悠長に、」

「だって契約結婚」

「でも妻だ、気にするし心配する!干渉しない仲であっても!」

イーギンはカカと笑った。

「そうかそうだな。行ってこい。帰りはいつになるとも分らん
 それでいい の心持で行け。きっちりお前の気持ち受取った」

「信じらんないっそんな緊急を!」

菊之丞はイーギンに苦笑して―パーティー会場から消えた。






ホテルの部屋で着替えて、サジでこんな遠出は
初めてなのでテラを呼び伴って諾威国に飛んだ。

イーギンは菊之丞の咄嗟のその反応が嬉しかった。

菊之丞は直ぐにアンバーの入院する病院に行こうとしたが、事故後直ぐに現れるなんておかしいだろ?お前はディノウヴォウに居た。とテラに言われて―アンバーの勤める造船会社『FALCON』社長のクルー・トパーズの自宅に1日待機。

本気で心配して焦ってカナンのログを観て―安堵した。

容体は命には関わらないし後遺症の心配もない。信号無視の車に
激突されたが、幸いにも、右足骨折で済んだ。との医者の話から。

しかし―トパーズの社長邸宅のゲストルームで考え込んだ。

しかし、考えても知恵足りずに気付いて埒明かない
を覚って―ベッドの中で菊之丞はテラに話し掛ける。

「俺...18のままだ?このまま就職って18のまま?クリスティーナの
 ように?ソレが条件だと言われたからそら分かってるけど18だ?
 お父さまやカメリアみたいに誤魔化せる?無理だ?サイボーグ化
 してる人が多いとは言え」

「カメリア22。なのに40代と言い張ってる。それでいいんだよ
 そのサイボーグ化してる人が多いお蔭で皆 納得してくれる」

「アンバーにもか?アンバーには無理だ。しかも親は医者」

「ならイーギンのように事実を言えばいい」

「はあ?!」

「なんだかんだ言ってお前はアンバーを気にしてる。気持ちが
 入ったら契約違反だが、それでもいいやってほどに。だろ?」

「それは俺の気持ちの操作、誘導だ。先約蔑ろは俺は嫌だから」

「観たよその話。お前は一瞬の躊躇もなくサジ。カナンで観て骨折
 と解ってホッとしてもここに来ることを変えなかった。内心正直
 は行動にまんま出る。俺にいわせりゃ会うことすらしなくていい
 契約結婚、事故で慌てはしてもただの骨折、まあいいかとなる」

「え...そうなの?」

「そうなの?じゃないっ。お前はどうなんだ だ。お前だから
 骨折でもここまで来たんだ。それがお前の正直な気持ち。だ」

「今はその話じゃない。俺の外見の話だ」

「逃げたな?まあいい。それは考え中ということにする」

「話し戻せよ、18のままで30です40です堂々言えるものか?」

「そんな話は一番若いままのカメリアに訊け。経験ない俺が知るか
 てかお前自身まだ22年しか生きてないんだ。未だ分らんでいい」

「 ...喫緊の問題」

「明日アンバーに会うとなってその問題に今気付いたのか。ははっ
 18と22では変わらん。幼いと思われても遣り過ごせ。なあ、若く
 見られるは、脳が今未だ幼稚 と言うこと。それに気付け」

「あ.......そういうことか」

「実年齢と外見の開きはそこで補う。だから
 クルーたちは娑婆で若い幼いと思われない」

「 ...テラ...うん。解った」






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