EMA【419】
「聴いてただろ?今夜はユリウスの屋敷に泊まる。明朝戻る
エマに連絡するが、何か聴かれたらきちんと証人になれっ」
「ぷ...はい。わかりました」
「 ...まだ終わらない?」
イーギンは一度伸びをして気分爽快にカメリアに抱きついた。
「 ...わかったよ、イーギンはしなやかだ」
カメリアが独り言のように小さく言った。
受容と明け渡し相手を信じて何も隠さない敬愛。
「自分の意見をもったところで船長の心眼に敵わない。どこまで
行っても青二才だ。翻弄され振り回されても船長にしがみつけ
その根性があるからクルーだ」
「 ...うん」
イーギンはサジして船長室の扉前―ラギして、開けろ。と言った。
返事はないまま扉は開いてローブ一枚羽織ったギーガが現れた。
「こればっかりは面倒臭い。勝手に入って欲しい
何で 俺様がわざわざ下級兵隊の出迎えなんだ」
「煩いな。船長しか開けられない。文句は船に」
イーギンはギーガを放置してずかずかと室内に入る。
ギーガは小言は聞こえませんの顔をしてベッドに座り、遣り掛けていた爪の手入れを始めた。
「 ...また爪か、ヒマだな」
「ヒマだよ。」
イーギンはギーガに笑い―ギーガのクローゼットに入った。
「ブリッジは誰が居る?」
「さあ、誰に用?」
「そろそろデイヴィッドが準備始めてるのかと思って」
「あいつはまだ星間工事中」
「星間工事...あ、そうだ、サファイア、どうするんだ?」
「お前に任せる」
「え?!」
「ハハ。びびったか」
「カメリア+サファイアなんて地獄だ」
イーギンもローブ纏う クルーの服 でクローゼットから出て
きてベッドのギーガに向かい合う角度のソファに腰を下ろした。
「あああ、やっと終わったぁあ」
言ってイーギンはソファに横になる体勢で深く沈んだ。
そして、爪を弄っているギーガを見詰めた。
ギーガはイーギンの視線知らず、何だ?と言う。
「俺がずっと質問したがっている内容は」
「言わない。」
咄嗟イーギンは、帰るっ!と言って立ち上がった。
「傷口に塩塗る。そして、牛皮でフタをして」
「 ...本気か?」
「爆死より痛い」
「爆死は痛くない、じゃなくて、だからそれ本気か?」
蒼白に変化しそうなイーギンを見ながらギーガはくくと笑う。
「そういうことは俺には出来ない。それが遣れるのは女」
「 ...だ。...びびった」
「痛いというより発狂するよな」
「想像させるな...遣られたことあんのか」
「 ...ああ、死んだ、精神が」
ギーガはにやりと笑った。
「お前のはもっと痛い。尤も見えないから
痛さは理解しかねるから、出来るのだが」
「 ...そういうことか」
「お前が肉体の痛みに強いからだ。痛いとは口だけで目は痛がって
いない。それでは自分の苦しみは人に伝わらない。今回は他人に
見せるためのものだ」
「人にって船長だろうが...塩は勘弁。そんなに俺が可愛いか」
「ああ、嬲る支配の範疇も超えて。そんなことどうでもいい」
「なるほど無味無臭ね。本気で失恋してそこに戻ってきたか」
「 ...まあいい。暫くは傍に置く」
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