【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

EMA【419】船の中 船長室

2009-09-19 | 3-2 EMA



 EMA【419】 


「聴いてただろ?今夜はユリウスの屋敷に泊まる。明朝戻る
 エマに連絡するが、何か聴かれたらきちんと証人になれっ」

「ぷ...はい。わかりました」

「 ...まだ終わらない?」

イーギンは一度伸びをして気分爽快にカメリアに抱きついた。

「 ...わかったよ、イーギンはしなやかだ」

カメリアが独り言のように小さく言った。

受容と明け渡し相手を信じて何も隠さない敬愛。

「自分の意見をもったところで船長の心眼に敵わない。どこまで
 行っても青二才だ。翻弄され振り回されても船長にしがみつけ
 その根性があるからクルーだ」

「 ...うん」






イーギンはサジして船長室の扉前―ラギして、開けろ。と言った。

返事はないまま扉は開いてローブ一枚羽織ったギーガが現れた。

「こればっかりは面倒臭い。勝手に入って欲しい
 何で 俺様がわざわざ下級兵隊の出迎えなんだ」

「煩いな。船長しか開けられない。文句は船に」

イーギンはギーガを放置してずかずかと室内に入る。

ギーガは小言は聞こえませんの顔をしてベッドに座り、遣り掛けていた爪の手入れを始めた。

「 ...また爪か、ヒマだな」

「ヒマだよ。」

イーギンはギーガに笑い―ギーガのクローゼットに入った。

「ブリッジは誰が居る?」

「さあ、誰に用?」

「そろそろデイヴィッドが準備始めてるのかと思って」

「あいつはまだ星間工事中」

「星間工事...あ、そうだ、サファイア、どうするんだ?」

「お前に任せる」

「え?!」

「ハハ。びびったか」

「カメリア+サファイアなんて地獄だ」

イーギンもローブ纏う クルーの服 でクローゼットから出て
きてベッドのギーガに向かい合う角度のソファに腰を下ろした。

「あああ、やっと終わったぁあ」

言ってイーギンはソファに横になる体勢で深く沈んだ。

そして、爪を弄っているギーガを見詰めた。

ギーガはイーギンの視線知らず、何だ?と言う。

「俺がずっと質問したがっている内容は」

「言わない。」

咄嗟イーギンは、帰るっ!と言って立ち上がった。

「傷口に塩塗る。そして、牛皮でフタをして」

「 ...本気か?」

「爆死より痛い」

「爆死は痛くない、じゃなくて、だからそれ本気か?」

蒼白に変化しそうなイーギンを見ながらギーガはくくと笑う。

「そういうことは俺には出来ない。それが遣れるのは女」

「 ...だ。...びびった」

「痛いというより発狂するよな」

「想像させるな...遣られたことあんのか」

「 ...ああ、死んだ、精神が」

ギーガはにやりと笑った。

「お前のはもっと痛い。尤も見えないから
 痛さは理解しかねるから、出来るのだが」

「 ...そういうことか」

「お前が肉体の痛みに強いからだ。痛いとは口だけで目は痛がって
 いない。それでは自分の苦しみは人に伝わらない。今回は他人に
 見せるためのものだ」

「人にって船長だろうが...塩は勘弁。そんなに俺が可愛いか」

「ああ、嬲る支配の範疇も超えて。そんなことどうでもいい」

「なるほど無味無臭ね。本気で失恋してそこに戻ってきたか」

「 ...まあいい。暫くは傍に置く」






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