【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

 かんろあめひびきわたるうたげ 自作涅槃長編活劇[100禁]

KEITH【36】アレキサンドル

2009-12-03 | 4-0 KEITH




 KEITH【36】 


「5時間の時差か、SPの時計を変えなきゃ」

「その必要はない。9時になってる」

「え」

自分のSPを見るとユリウスの言うとおりだった。

「時計も勝手に時差に対応するのか」

「はは、違う。船の中と地球のディノウヴォウとロマは同時刻
 お前は4時前に起きたが、あの部屋で5時間経ってから出た」

「はあ?!俺たちは...俺は着替えて直ぐに出た」

「そうだな、お前にはその記憶しかないだろう」

「俺はあの後、気を失ったとでも言うのか?」

「考えるな、そういうこともある
 船の中は不思議なことだらけだ」

「 ...そうだが」

エレベータの扉が開くと通路ではなく、いきなり赤絨毯のフロアが広がった。

はるか向こうの正面は朝の空の見えるガラス壁。

左右に4つ、放射状に赤い通路が続いている。

ここはVIPフロアか。

ユリウスは右に歩いて、俺はそれに続いた。






アレキサンドルの部屋に入ると部下と思える黒服が10人ほどいて、アレキサンドルは元より部下たちも一斉にユリウスに向いて途端、緊迫したように礼をした。

ユリウスを見れば高飛車風もなく、俺の知ってる限りの軟弱な態度をして笑っていた。

ユリウスと会ってボス威風が損なわれるなんてない紳士的な涼やかさと貫禄の両方を併せ持ったアレキサンドルは見事な朝食のテーブルへ、俺とユリウスを誘った。

シンプルだが、家具のひとつひとつが高価な誂えに絨毯の毛足は短くて歩き易い、贅沢で広い部屋。

座れと言われて席につくと黒服たちが給仕をしてくる。

食事の数は3...約束だったのか。

俺はアレキサンドルの顔だけは知っていた。

資料として知っていた人物が目の前...実際に動いている。

まさかこの男と会うなど夢にも思っていなかったが、そこに感情が起こるもなく...単にことの推移に従った。

食事をしながらユリウスとアレキサンドルは俺には全く意味のわからない話をしていたが、突然アレキサンドルが俺に振った。

「キースの腕は確かはどう証明?」

俺は覗き込まれるように見詰められてゆっくり顔を上げた。

「どう、と言われても何をすれば?」

「そうか。ユリウスの秘蔵っ子なら...いい
 農場は完全に任せるよ。好きにしていい」

「好きに?」

「俺たちが羊を引き取りに行く、御代を払う。それ以外はやり手の
 農場主らしく振舞えと言っている。まだ若いから外に覚られない
 よう舐められないようにといいたいだけだが...それが肝心だ」

「あっはは!アレキサンドル、キースはそれではわからない」

ユリウスが挟んできた。

そして、俺に言う。

「キース、そうだなあ、アレキサンドルの話は、自分がそうだから
 それがいいと言っているだけ。何も無理して威圧曝すことなんか
 ない。しかし、小物ほどよく吼えて人を舐めるから、そいつらを
 放っておけば農場の評判が落ちる と言うより 小物たちの嫉妬
 買って役場にチクられて暴かれるそれに気をつけろと言っている
 それも害虫駆除のひとつだ」

「ユリウス、その前に、俺は今までひとりで動いて人を纏める
 人の上に立つなど、なく...そんなことを言われても、難しい」

「おい、坊主、そんなことは必要ない」

「え」






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